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ロシア・ウクライナ戦争「バチカン交渉」の切り札は通じるか【特派員コラム】

登録:2025-05-23 09:08 修正:2025-05-23 10:51
チャン・イェジ|ベルリン特派員
18日(現地時間)、バチカンのサンピエトロ広場で開かれた教皇レオ14世の即位ミサに出席したウクライナのゼレンスキー大統領(前列左)が、米国のルビオ国務長官(2列目左から2番目)とバンス副大統領(1列目右端)の方へと向かっている/AFP・聯合ニュース

 バチカンから離れたローマ市内のスペイン広場には、教皇庁駐在のスペイン大使館がある。大使館の建物は403年前の1622年からスペインと教皇庁とをつなぐ外交空間として使われており、現存する最も古い外交公館に数えられる。近代国家が成立するはるか前から外交の主体として活動してきた教皇庁の長い歴史を示すものでもある。バチカンは今年1月現在で184カ国と国交を結んでいる。これにはもちろん、ウクライナとロシアも含まれている。

 4月の教皇フランシスコの死去後、レオ14世が新しい教皇に選出され、バチカンがウクライナとロシアの仲裁の空間となりうるという期待が高まっている。特に先月26日の教皇フランシスコの葬儀ミサへの出席を機として、米国のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領がサンピエトロ大聖堂の礼拝堂で2人で面談する様子は、多くの人々の記憶に残った。国家的利害を超越した中立的空間であり宗教的権威を有するバチカンが、発揮しうる力を象徴的に示してくれたのだ。

 教皇レオ14世は選出後の11日、サンピエトロ広場で初めて執りおこなった祈りの集いでも、ウクライナの恒久平和を祈るメッセージを発した。それから5日後の16日には、レオ14世がバチカンをウクライナとロシアの平和会談の場所として提案したと欧州メディアが報道した。同日、ロシアとウクライナはトルコのイスタンブールで、開戦から3年あまりを経てようやく直接交渉をおこなったが、大きな成果なく90分あまりで終わった。両国は今後も交渉を続けることで原則的に合意したため、今後の対話の扉は開いていた。その後、ロシアのプーチン大統領と電話で話したトランプ大統領は、バチカンで交渉を行うことに肯定的な反応を示した。

 現在までのところ、レオ14世や教皇庁はこれについて公式の立場を示してはいないが、間接的にバチカンの意向は伝えられている。イタリアのメローニ首相は21日、レオ14世と電話で話したとして、「教皇はバチカンで次の会談を開催する準備ができていることを再確認した」と明らかにした。フィンランドのストゥブ大統領はさらに踏み込んで、ロシアとウクライナは来週にもバチカンで再び実務協議を行う可能性が高いと述べた。

 もちろん、合意点の見えない両国の平和交渉において、「バチカン役割論」がどれほど期待に答えられるかは未知数だ。2022年2月のロシアの全面侵攻でウクライナ戦争がはじまった直後から、前任の教皇フランシスコは即時休戦を求めつつ、両国の仲裁者になるよう努めてきた。両国の対話を導き出すことはできなかったが、捕虜交換やロシアに連れて行かれた数百人の児童の送還などの人道主義的事案では、限定的ではあるが成果をあげた。

 教皇フランシスコはこの過程でロシアの戦争犯罪を批判するとともに、プーチン大統領と距離を置きながらも、ロシアとウクライナのことを同じく「兄弟」と呼ぶなど、ロシアを加害者として確定する語彙は用いなかった。北大西洋条約機構(NATO)の拡大がロシアの侵攻を引き起こした可能性があると評しつつ、両国いずれとも対話を目指すアプローチを取ったため、ウクライナからは教皇に対する不満が漏れた。新たにバチカンの外交を指揮するレオ14世が、行き詰まった交渉政局でいかなる知恵を発揮するかも注目される。悠久の教皇庁の外交史において、レオ14世が平和のための新たな歴史を記せるよう願うばかりだ。

//ハンギョレ新聞社

チャン・イェジ|ベルリン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1198840.html韓国語原文入力:2025-05-22 15:54
訳D.K

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