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韓国は本当に「暮らしたい国」ですか?【コラム】

登録:2025-05-24 08:14 修正:2025-05-24 08:34
イム・ジェヒ|イシューチーム記者
民主労総、金属労組、移住労組などの組合員が4月27日午前、ソウル鍾路区の普信閣前で行われた集会「2025世界労働者の日・移住労働者メーデー」で、移住労働者に対する強制追放や危険な仕事の押し付けをなくすよう求めている=チョン・ヨンイル先任記者//ハンギョレ新聞社

 「韓国で家族と一緒に暮らしたいです」

 昨年11月に出会ったミャンマー人のルアンさん(仮名、40)の言葉は意外なものだった。過去にどれほど劣悪な労働環境で働いていたのかを聞くための取材の席だった。1、2カ月働くだけでも爪が抜け落ちるほどきつい革工場で6年以上、雇用許可制の非専門就業ビザ(E-9)で入国して、社長に悪態をつかれながら耐えた記憶を、1時間以上にわたって語ってもらった。そんな彼に今後の計画を尋ねた時、家族と一緒に描いた将来が韓国でのものだったということに多少驚いた。

 韓国に来て10年以上になるルアンさんは、2020年1月が忘れられないという。彼は革工場で2人の同僚の命を奪ったボイラー爆発の目撃者だ。工場の代表が買ったのは製作して24年たった中古の産業用ボイラーだった。ただでさえ危険なため法で定められた管理者を置かなければならないのに、近くの工場の職員の名を借りてきただけだった。炉筒のつなぎ目に亀裂が生じ、約1671倍に膨張したボイラーは、ついに爆発した。

 今月18日の中央選挙管理委員会主催のテレビ討論会を見ていたら、ルアンさんが思い浮かんだ。与党「国民の力」のキム・ムンス候補が「悪法」と批判した重大災害の処罰などに関する法律(重大災害処罰法)の論争でだ。重大災害処罰法は、ルアンさんが働いていた革工場でのボイラー爆発のような災害が繰り返されないよう、安全確保義務を疎かにした経営責任者などを1年以上の懲役または10億ウォン以下の罰金に処す法律だ。爆発が発生したのは重大災害処罰法の施行前だったため、ルアンさんの革工場の代表は一審で懲役10カ月、執行猶予2年を言い渡された。

 重大災害処罰法の施行後、労働災害に対する社会的認識は明確に変化した。移住労働者たちは社長が認めなければ職場を移れないため、ルアンさんとその同僚たちは爆発事故後も革工場に出勤していた。ところが重大災害処罰法が国会で可決された2021年に、職場の変更が認められる理由に「重大災害が発生した場合」が追加されたことで、死者が出た事業所は社長の許可がなくても辞められるようになった。キム・ムンス候補は討論会で「人が死んだ後に事業主を処罰したところで、災害が減るのか」と言った。しかし重大災害による死者数は2021年には683人だったが、昨年は589人と徐々に減る傾向にある。

 今回の大統領選挙では、移住労働者の賃金体系を揺るがす候補も登場した。改革新党のイ・ジュンソク候補だ。国外に移転した工場を国内に呼び戻す方策として、最大で10年間、移住労働者の最低賃金を低くできるようにすると述べたのだ。10大公約の2番目として掲げたものだ。どれほどの移住労働者がそのような会社にやって来るかは疑問だ。また、移住労働者がそのような雇用先を選択したとしても、生活を安定させるために国が保障する最低賃金を低くするというのは、移住労働者は安定した生活をしなくてもよい人々だというのか。最もぜい弱な環境に置かれている人々の暮らしを揺さぶる社会が、安定した社会と呼べるだろうか。

 ルアンさんが韓国に残ることを決める決定的な契機となったは、「良い社長」だった。革工場を辞めたルアンさんが出会った社長は、悪態をつかず、盆正月の贈り物も韓国の労働者と同じようにくれるという。ルアンさんに最初に「家族を韓国に呼んで暮らしてはどうか」と提案したのも社長だった。韓国を暮らしたい国にするのは誰なのだろうか。

//ハンギョレ新聞社

イム・ジェヒ|イシューチーム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1198951.html韓国語原文入力:2025-05-23 07:00
訳D.K

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