大韓医師協会(医協)をはじめとする医師団体は、政府が提案した「医学部による自律増員」案を拒否した。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領がこだわっていた「2千人増員」から1千人台へと大幅に後退したにもかかわらず、医協や医学部教授はもちろん、専攻医までもが「原点からの再検討」ばかりを叫んでいる。医学部増員は政府の推進のあり方に異論があるだけで、その原則には国民の大多数が賛成している。それをなかったことにしようという医師たちの主張は、まるで国民に白旗を掲げて降伏しろと言っているように聞こえる。本当にそうなら傲慢で無責任だ。
政府は先日、医学部の増員規模をこれまで固執してきた2千人から最大で1千人減らしうる方策を提示した。2025学年度に限り、各大学が割り当てられた増員規模の50~100%の範囲内で新入生を自律的に募集するというものだ。そうなれば、医学部の増員規模は最大で1千人にまで減る。政府が最初から医療界との対話を通じて増員規模を決めていたらもっと良かっただろうが、今からでも態度を変えたのは望ましいことだ。しかし医協は、「根本的な解決策ではない」として政府案を拒否しており、大統領直属の医療改革特別委員会にも参加しないことを表明している。全国の医学部の学部長たちも「来年の医学部の入学定員を凍結したうえで、医療界と協議して医療人材の供給を決めよう」と提案している。医師団体は、まるで政府が窮地に追い込まれた隙をついてごり押しを続ければ、医学部増員を白紙撤回させうると考えているようだ。
政府が医学部の増員規模を半分にまで減らしたにもかかわらず、医師たちが拒否し続ければ、国民の忍耐は限界に達するだろう。今、医療現場は崩壊寸前と言っても過言ではない。専攻医のストライキ以降、緊急患者が病院に受け入れてもらえず、「救急室をたらい回し」されているうちに死亡する例が相次いでいる。今のような状況が続けば、患者の被害と懸念、医師に対する恨みは大きくならざるを得ない。政府が免許停止や刑事処罰などを用いた強硬対応へと基調を転じた時、医師の味方をしてくれる国民は多くないだろう。
医学部増員は国民のほとんどが賛成する国家的、時代的課題だ。政府と医師団体の「強対強」対峙(たいじ)に疲れた世論を、医学部増員に反対していると錯覚してはならない。医師団体は手遅れになる前に政府との対話に乗り出すべきだ。医学部増員の縮小方針を機に医療現場に復帰するとともに、政府が用意した対話の場で要求すべきことを堂々と要求すればよい。そうすれば、国民も医師の合理的な要求に耳を傾けるはずだ。