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[寄稿]米国の「戦争経済」はいつまで持続可能か

登録:2023-11-11 06:38 修正:2023-11-11 07:37
ジョン・フェッファー|米外交政策フォーカス所長
先月22日、朝鮮半島南方の韓日の防空識別圏(ADIZ)が重なる区域で、韓米空軍が共同空中訓練を行っている=米空軍提供//ハンギョレ新聞社

 伝統的な基準からすると、米国経済はかなり良い状態にある。公式失業率は4%以下で、第3四半期の米国経済は年率基準で5%近く成長した。インフレは安定局面に入った。米国人は買い物をして、パーティーを開き、バカンスに出かけている。経済学者たちは昨年、景気低迷を予告したが、少なくとも今は現実化していない。それは部分的には米国もコロナ禍から抜け出しているためだ。

 米国の最大の問題は「大砲とバター」のバランス、つまり軍事費と国内経済の間の問題だ。ジョー・バイデン政権はこれを二者択一ではなく、両方ともやり遂げられる問題だとみている。問題は、軍事と非軍事分野の支出をいつまで増やすことができるかだ。

 米国は2021年にアフガニスタンから撤退して以来、主な紛争に直接介入していない。シリアに空爆を続け、イラクに一部の派遣部隊を残してはいる。また、ドイツ、日本、韓国を中心に米軍17万人が海外基地数百カ所に駐留しているが、紛争に地上軍を送り込む状況はもう終わった。にもかかわらず、逆説的にも米国の軍事費支出は最高水準に達した。2017~2023年の国防部の基本予算は50%以上増えた。2024年の軍事費支出は8860億ドルにのぼるだろう。ウクライナとイスラエルに対する軍事支援などに向けた支出を含めれば、1兆ドルまで増えるだろう。国全体の予算が米国の軍事費を上回る国は、世界で15カ国しかない。

 それと同時に、バイデン政権は国内経済のためにも多くの支出を推進している。2021年にはコロナ禍への対応に1兆9千億ドル規模の予算を組んだ。同年、インフラ予算1兆ドルも編成した。翌年には気候変動と関連して数千億ドルを支出する「インフレ抑制法」が制定され、半導体分野に500億ドルを投資することにした。もちろん、このような支出は税収拡大や他の手段で埋め合わせることができる。しかし、これは2022年から2023年まで財政赤字が事実上倍増する状況をもたらした。米国連邦政府の負債は33兆ドルで、中国、日本、ドイツ、インド、英国の総生産を合わせた水準だ。

 米国の国内総生産(GDP)に比べた債務比率は121%。「グローバルサウス」でこれぐらいの債務比率を持つ国は、債務危機に見舞われたものとみなされる。米国はドルが基軸通貨であるため、問題を免れている。連邦政府は税金を引き上げるか、債券をさらに発行する方法で、収入と支出のギャップを埋めることができる。

 しかし、ある時点では、軍事費支出中毒と米国人の経済的要求の間で選択を迫られるだろう。ウクライナへの支援額は500億ドルに近づいている。米国が韓国に、殺傷力のないもの以上の軍事支援をウクライナに行なうよう説得しているのもそのためだ。バイデン政権はウクライナ支援に610億ドルを割り当てたのをはじめ、さらに1050億ドルの安全保障関連予算を議会に要請した。

 ウクライナへの支援とこれをめぐる議会内の争いが注目を集めているが、全体軍事費支出の多くを占めているのは、ウクライナ戦争に関係のない艦艇、軍用機、宇宙兵器などだ。アジアでの軍事政策転換を進めている米国が本当に警戒するのは、台湾を吸収し、南シナ海の支配力を強化しようとする中国だ。中国は米国の軍事力に対抗できる水準に近づいている唯一の国だ。

 米国と中国は挑戦に直面している。これからも多くの軍事費を支出しつづけ、戦争だけでなく不渡り、政治的不安定、経済低迷という危険を冒すのか。米中が気候変動に効果的に対応するためには、他の国々が化石燃料から抜け出せるよう支援する財源も確保しなければならない。彼らは大砲とバターに多くのお金を使い続け、戦争と経済崩壊を防げるかもしれないが、地球にはそのような戦略に持ちこたえる余裕はない。

//ハンギョレ新聞社
ジョン・フェッファー|米外交政策フォーカス所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1114971.html韓国語原文入力:2023-11-06 02:42
訳H.J

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