イスラエルは今、ガザで大量虐殺(ジェノサイド)をおこなっている。第2次世界大戦でナチス・ドイツがユダヤ人を大量虐殺したやり方を今、イスラエルが真似ている。
大量虐殺とは、特定集団の人々を集団で虐殺し、その集団が政治的、社会的、文化的実体として再構成できないようにすることだ。ナチスはユダヤ人から家を奪い、集団であちこち移動させ、集団で収容し、そして虐殺した。今、イスラエルがガザでパレスチナ住民に同じことをおこなっている。住民から家を奪い、出て行けと言って集団であちこちに移動させ、南部と海岸に集団収容している。
そして救援物資の配給まで掌握し、飢えに疲れ果てて食料を受け取るために集まってきた住民たちを銃撃している。5月27日から食料配給所の周辺が連日銃撃され、現在、死者は1千人を超えている。ガザからパレスチナ住民を完全に放逐しようとしているのだ。ガザを破壊し、食料供給すら遮断し、ガザに住む所も食べ物もなくして、住民たちが立ち去らざるを得ないようにしようというのだ。ガザでは70%にあたる17万4千棟もの建物が破壊されている。
イスラエルはガザ戦争の初期に、ガザ北部の住民に対して南部への避難を勧告した。昨年5月、イスラエル国防軍(IDF)は南部ラファにいた100万人の難民に、何もないマワシの海辺に移動するよう命じた。そしてラファを破壊しはじめ、8月に完了した。ネタニヤフ極右政権は今年5月、ガザ全体を占領したうえで撤退しないという方針を公式化した「ギデオンの戦車」作戦を開始した。ガザ全域を占領したうえで軍事的緩衝地帯とし、住民は南部に強制移動させるというのだ。米国とイスラエルが後援してガザ人道財団が作られ、救援物資の配給を掌握した。食料を受け取りに来た住民を銃撃しはじめたのはこの時からだ。
イスラエルのカッツ国防相は今月7日、エジプトと接するガザ最南部にいわゆる「人道都市」を建設し、ガザ住民を全員(220万人)移住させると表明した。「ガザを立ち去って他国に自発的に移住するよう、住民に奨励しなければならない」というのだ。ガザ住民を放逐する構想だ。
イスラエルの当局者も、大量虐殺の意図をはっきりと表明してきた。戦争初期からガザ占領とパレスチナ住民の放逐を主張してきたスモトリッチ財務相は、「ガザを完全に破壊し、住民は絶望の中で海外に立ち去ることになるだろう」と公言している。ネタニヤフ首相は「アマレクびとがあなたにしたこと」という旧約聖書の一節を記憶せよと述べ、旧約聖書に記されているイスラエルの復しゅうによるアマレク絶滅を再現するという意志をあらわにしている。政府と軍事指導者たちも「人間野獣」たちと戦っているのだと述べて、「完全な絶滅」を求めている。議会のバトゥリ副議長は、イスラエルの任務は「ガザを地球上から消し去ること」だと述べている。
米ブラウン大学のジェノサイド・ホロコーストの研究者、オメル・バルトフ教授は今月15日、ニューヨーク・タイムズに「私は大量虐殺の学者として、それを見れば分かる」という文章を寄稿した。同氏は「私の避けられない結論は、イスラエルがパレスチナ住民に大量虐殺をおこなっているということ」だとし、「私だけでなく、大量虐殺分野や国際法の専門家の間でも、ガザでのイスラエルの行動は大量虐殺と定義されうると結論付ける人が増えている」と述べた。そして「イスラエルの場合、大量虐殺の意図が数多くの官吏や指導者たちによって公に表現されており、そのような意図は現場の軍事作戦のパターンとして導き出されもする。そのようなパターンはIDFがガザ地区を体系的に破壊した昨年5月からさらに明確になっている」と述べた。
バルトフ教授はユダヤ人であり、イスラエルで人生の半分を過ごし、IDFでの服務経験も持つ。同氏は、このような結論は「私ができる限り拒否してきた苦しい結論」だとして、悲しみをあらわにしている。そして、ガザで繰り広げられているイスラエルの大量虐殺行為についての発言を反ユダヤ主義だと批判する政治家、学者、専門家の見解は、「イスラエルの操縦士が発射した米国製の爆弾によってバラバラにされたパレスチナ人の子どもの写真を見せるのは反ユダヤ主義行為だ」と言っているのと同じだと批判した。
欧州にはナチス・ドイツがのさばる前からユダヤ人を集団収容するゲットーがあった。1943年、ポーランドのワルシャワのゲットーで、ナチスに抵抗する蜂起があった。ナチスの親衛隊長ハインリヒ・ヒムラーは「ユダヤ人がどれほど危険かを示している」として、この蜂起をユダヤ人絶滅の大義名分とした。世界最大の天井のない監獄と言われるガザは、パレスチナ住民のゲットーだ。このゲットーの住民の抵抗に、イスラエルは今や大量虐殺で報復している。そして国際社会は、それをイスラエルの自衛権だとして擁護している。
チョン・ウィギル|国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )