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[寄稿]イスラエル-パレスチナ戦争で利益を得る者が真の「戦犯」

登録:2023-10-24 08:51 修正:2023-10-24 09:37
ユン・ジヨン|分かち合い文化グローバル平和分かち合いチーム長
イスラエルによるガザ地区攻撃と米国の中東政策を批判する米国のムスリムたちが21日、ワシントンのナショナルモールで集会をおこなっている=ワシントン/EPA・聯合ニュース

 再び世界で「戦争ドミノ」がはじまりつつある。ロシア・ウクライナ戦争、アフリカ諸国のクーデター、中国の領土紛争、そして今や戦線は中東にまで拡大した。10月7日、パレスチナのガザ地区の統治勢力ハマスの攻撃を受けたイスラエルは、ガザ地区を無差別爆撃している。「天井のない監獄」であるガザ地区の水、電気、燃料まで完全に遮断した。済州島の3分の1の面積に230万人が閉じ込められて暮らすガザ地区の住民たちは、災厄から逃れる場所がどこにもない。双方の民間人死者数は4千人を超え、17日にはガザ地区の病院の爆撃で一挙に500人あまりが死亡した。しかし、米国はイスラエルには積極的な兵器支援を行う一方、ガザ地区に対する人道支援を求めた国連安保理決議案は否決した。この戦争はすでに「ハマスの破壊」ではなく「ガザ地区の破壊」に突入している。

 イスラエルが再び「複数の世代に影響を及ぼす報復」、「非常に長い戦争になる」と公言した理由は何か。「戦争は銃を手にしたビジネス」だからだ。ほとんどの戦争は利益を得ようとする人々によって繰り広げられてきた。今回のガザ地区の事態を「全面戦争」と「長期戦」へと導こうとしているイスラエルと米国にも、資源の独占と世界の覇権秩序の再編の意図が根底にあることに私は注目する。

 イスラエルとパレスチナのガザ地区がある東地中海沿岸には、莫大な埋蔵量の天然ガスがある。イスラエルの発電量の70%以上を同地域のガス田が担っている。問題は、イスラエルが資源を独占するためにパレスチナの主権を奪ってきたということだ。1998年に発見されたガザ地区沿岸のガス田「ガザマリン」には、パレスチナをエネルギー独立国にしても余るほどの埋蔵量がある。パレスチナ解放機構(PLO)の初代議長ヤセル・アラファトは、ガザマリンは「神からの贈り物」だとし、「パレスチナ独立国家建設の堅固な基盤」になるだろうと述べた。しかし、イスラエルは2000年からパレスチナのガス田への接近を禁止し、ガザ地区沿岸の封鎖区域を広げてきた。最近は米国の支援を受け、イスラエル・キプロス・ギリシャをつなぐ海上パイプラインを、2025年の完成を目指して建設している。このパイプラインは欧州連合(EU)の需要の10%ほどの天然ガスを送ることができる。そして欧州はウクライナ戦争以降、ロシア産の天然ガスへの依存を減らし、イスラエル産の天然ガスの輸入量を増やしている。

 米国にとってもイスラエルとガザ地区の沿岸は重要な地域だ。米国は今年9月の主要20カ国(G20)サミットで、インドと中東(UAE・サウジアラビア・イスラエル)、欧州をつなぐ鉄道・海運輸送路構築プロジェクトを発足させた。中国の一帯一路に対抗する「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」計画だ。この区間の中間にはイスラエル北部の港町ハイファがあるが、米国とイスラエルの立場からすると危険要素がある。ハイファの南にはガザ地区のハマスが、北にはレバノンのヒズボラがすぐそばに存在することだ。2020年にイスラエルは米国の仲裁で、これまで対立してきたアラブ諸国と「アブラハム合意」を結び、国交を樹立した。最近では「新たな中東を創造」しようと言ってサウジアラビアとの関係改善にも乗り出している。したがって、敵対的なイスラム抵抗勢力をできる限り弱体化させさえすれば、イスラエルと米国の天然ガス資源の独占および物流統制ははるかに容易になる。このような時にガザ地区を完全に破壊し、人が住めない場所にする戦争が展開されているのだ。

 領土紛争の観点からみても、イスラエルとパレスチナの紛争の根本原因を作った責任は英国とイスラエルにある。1917年、英国の外相がユダヤ人金融家ロスチャイルドに「ユダヤ民族の国の建設を支持する」という公開書簡を送った(バルフォア宣言)。イスラエルはその後、パレスチナの領土の78%を占領し、75万人を追い出すことで、1948年に建国された。それから実に75年間も占領を続けている。イスラエルは今も違法な入植地の建設によって占領地を拡大し、巨大な分離壁を作っている。無差別銃撃、民間人の拉致、住宅の破壊、追放が日常となったパレスチナ人が、抵抗しないということがありえるだろうか。繰り返される戦争は私たちを無力にさせるが、イスラエルとパレスチナの紛争の解決の第一歩は、イスラエルが違法な占領をやめることと、パレスチナ独立国家建設であることを、粘り強く言わなければならない理由はここにある。米国と中国、ロシアの覇権対決が全世界を戦争へと追いやり、北東アジアにも戦線が拡大する兆しが見える今、最も苦しんでいるパレスチナから平和を求める世界市民の抵抗が強まることを願う。

//ハンギョレ新聞社

ユン・ジヨン|分かち合い文化グローバル平和分かち合いチーム長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1113298.html韓国語原文入力:2023-10-23 18:55
訳D.K

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