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[寄稿]ロシアの植民地主義、イスラエルの植民地主義

登録:2023-03-15 05:18 修正:2023-03-15 08:33
[世界の窓]スラヴォイ・ジジェク|リュブリャナ大学(スロベニア)、慶煕大学ES教授
7日(現地時間)イスラエル軍がヨルダン川西岸地区のパレスチナの都市ジェニン地域の難民キャンプを攻撃するなか、イスラエル軍のヘリコプターが照明弾を発射して通り過ぎている=ジェニン/新華・聯合ニュース

 ロシアのウクライナ侵攻1年を迎え、祝うべき唯一のことは、ウクライナがみせた抵抗だ。これは、同盟国だけでなくウクライナ人自身も驚いたことだった。ウクライナの勇敢な抵抗は、さらに別の肯定的な変化につながった。あるウクライナのジャーナリストはこのように評する。「ウクライナ人は戦争の状況でも自国の正義に対する熱望を失わずにいる。ウクライナ人の大半が命をかけてロシアの大量虐殺の脅威に対抗していることを考えると、ウクライナの正義に向かう熱望は以前よりさらに強まったといえる。ウクライナ人は、自分たちの国がどのような方向に進まなければならないのか、戦争が終わった後にはウクライナがどのような姿にならなければならないのか、これまで以上に深く悩んでいる」

 こうした雰囲気のなか、ウクライナでは腐敗清算の努力も行われている。この試みが、「戦争後に何をするのか」に関連する次のような急進的な質問につながってほしい。ウクライナは、ただ西欧の自由民主主義に追いつき、西欧の大企業の経済的植民化を受け入れればよいのか。ウクライナはポーランドがそうしたように、新保守主義的な反動に参加するのか。ウクライナは社会民主主義を蘇生させようと努力するのか。

 いま私たちが考えなければならないもう一つの側面は、ロシアのウクライナ侵攻に対する国際的な反応だ。真にロシアの植民地主義を批判するのであれば、私たちは、ウクライナ戦争を別の新植民地主義の事例と結びつけて考えなければならない。かつて、英国労働党のキム・ジョンソン議員が演説で、イスラエルとパレスチナ間の紛争とロシアのウクライナ侵攻を比較した。ジョンソン議員は、多くの人たちがロシアの「不法占領」とウクライナの「英雄的抵抗」は語りながらも、イスラエルとパレスチナの関係、イスラエルの不法な入植地の拡大、人種主義についてはそのようなかたちで言及しないだけでなく、抑圧に抵抗するパレスチナ人と連帯しようとすることもないと批判した。予想可能だったが、ジョンソン議員はこの発言の後、反ユダヤ主義者という非難に苦しめられなければならなかった。

 しかし、新たに発足したイスラエル政府が、ヨルダン川西岸地区の事実上の併合を推進している状況を考えれば、ジョンソン議員がイスラエルをロシアと比較したことは適切だった。イスラエル政府は昨年12月、「ユダヤ民族はイスラエルの土地のすべての場所に対して、排他的かつ論争の余地がない権利を持つ」と明言した(ユダヤの伝統では、イスラエルの土地は「ユダヤとサマリアの土地」、すなわち西岸地区を含む)。イスラエル政府は、西岸地区を管理する方法を「占領法」から「イスラエル国内法」に変更する予定だという点も示した。これは事実上の併合を意味する。

 ここでイスラエルは一つの問題に直面する。西岸地区がイスラエルの一部になるのであれば、西岸地区に住む200万人を優に越えるパレスチナ人も、イスラエルの選挙で投票権を行使できるようになる。イスラエル政府がそのようになるよう放置しておくはずがない。可能な限り多くのパレスチナ人をイスラエルの外に追放したり、一つの人種集団が別の人種集団を体系的に抑圧し支配する制度化された体制、いわゆるアパルトヘイト体制を構築することになるだろう。

 現在のイスラエルでは、司法府を政治権力に従属させようとする新たな右派政権の計画に反対する大規模な反政府デモが連日行われている。しかし、このデモに参加している十万人を超えるイスラエル市民は、パレスチナ人が体験することになる問題については無関心だ。右派政権による司法整備がなされる場合、最も大きな苦痛を受けることになる人々はパレスチナ人であるにもかかわらず。

 ならば、この状況において実践しなければならない真の政治的行為は何だろうか。それは、大規模な民主連合を形成し、そこにパレスチナ人を加えることだ。これはイスラエル政治の不文律を破ることになるため、危険を冒す試みになりうる。だが、このような急進的な変化を成し遂げることだけが、イスラエルがもう一つの人種主義的かつ宗教的な原理主義国家になることを防ぐことができる唯一の方法だ。

//ハンギョレ新聞社

スラヴォイ・ジジェク|リュブリャナ大学(スロベニア)、慶煕大学ES教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1083256.html韓国語原文入力:2023-03-13 02:35
訳M.S

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