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[寄稿]ウクライナ戦争の2つのシナリオ

登録:2023-03-06 06:13 修正:2023-03-06 08:52
ジョン・フェッファー|米外交政策フォーカス所長
先月26日(現地時間)、ウクライナ北部ハルキウ州のカミヤンカの村で住宅が砲撃で破壊された様子=カミヤンカ/AFP・聯合ニュース

 ウクライナ戦争が勃発してから1年が過ぎた。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にとっては記念すべきものがない。ウォロディミル・ゼレンスキー政権を追い出すことも、ウクライナ領土全体をロシアに併合することもできなかったからだ。

 この1年間でロシア軍は6万~7万人が戦死し、20万人近くが負傷した。戦車も半分近く失い、1カ月で150台が消えたが、唯一の戦車工場は20台を補充できるだけだ。徴兵をさらに集めようとする努力は、全国的な反発にあった。ロシア人は訓練もまともに受けていない徴兵を死線に追いやるウクライナ戦線を「ミンチ機」と呼ぶ。

 制裁にもかかわらず、ロシア経済は崩壊こそしなかったものの、よくない状況だ。国内総生産(GDP)は昨年2%下がった。数百社の外国企業が撤退し、運営を中断した。プーチン政権は化石燃料など原材料の輸出で経済を支え、それを戦争資金に充てているが、これは持続可能な戦略ではない。

 ロシア人50万~100万人がプーチンの政策に抗議するため、あるいは徴兵を免れるため、国を離れた。 エクソダス(国外脱出)はプーチンに反対する人々の数を減らしたが、ロシアで最も創造的な人たちが姿を消した。原材料中心の経済を多角化できず「頭脳流出」まで起きているのは、戦争遂行のために未来を抵当に入れているようなものだ。

 外交政策の側面からみれば、「ロシアの世界」を拡大するというプーチンの決心は、これを阻止する勢力の連帯を広げるだけだ。スウェーデンとフィンランドは北大西洋条約機構(NATO)の加盟を申請した。NATOの東進に対する怒りそのものには正当性があるが、プーチンは西側が同盟を拡大し、軍事費を増やし、ウクライナのようなNATO非加盟国との協力を広げることに一役買った。プーチンは欧州の極右政党の支持もほとんど失った。欧州以外の地域の同盟でさえ揺れ動いている。ロシアのウクライナ侵攻を糾弾する国連総会決議に反対したのは7カ国のみだ。

 これらすべての失敗にもかかわらず、プーチンは戦争に執着している。少なくともドンバス地方全体と、2014年に合併したクリミア半島とロシア本土を結ぶウクライナ南部地方は手に入れようとしている。プーチンは人口規模のおかげでロシアが消耗戦を勝ち抜けると信じている。最大100万人のロシア人が国を離れたが、ウクライナでは人口の20%ほどの800万人が外国に避難した。また、西欧でのウクライナに対する支持が減り、軍事援助も底をつくとみている。米国と欧州の世論調査では全面的な軍事援助に対する支持が弱まっている。このために兵器提供が直ちに影響を受けるわけではないが、今後そうなる可能性もある。

 そのため、ゼレンスキーはできるだけ多くの先端兵器を早く確保しようとしている。ぬかるみが消える春のある時点で開始を目指すウクライナの2回目の反撃に多くのことがかかっている。ウクライナ軍がドンバスとクリミア半島の間にくさびを打ち込むことができれば、クリミア半島を孤立させ占領軍を追い出すのに有利なムードが作られる可能性がある。

 このような場合、1995年にクロアチア軍がセルビア軍を占領地から追い出した事例になぞらえて「クロアチアシナリオ」と呼べるかもしれない。クロアチア軍の「嵐作戦」はユーゴスラビア内戦を終結させた平和協定につながり、セルビア人の支持を失ったスロボダン・ミロシェビッチは5年後の選挙で敗れた。

 もう一つのシナリオは韓国の事例に似たものだ。ウクライナ戦争も朝鮮戦争同様、初年度に占領地域の変動が大きかった。次の年からは、朝鮮戦争の2年間のように本来の境界線周辺で膠着に陥った状態で戦闘を続ける可能性がある。そうなれば、ウクライナとロシアはやむを得ず休戦に同意するだろう。

 どちらのシナリオに沿って進むかは予想が難しい。1年間の戦争が見せた最も重要な特徴があるとすれば、予測不可能性だ。ロシアは実際にウクライナに侵攻し、ウクライナはこれを撃退して多くの人々を驚かせた。もしかすると戦争2年目には、侵略者は処罰され、被害者は正当な地位を取り戻す最も驚くべきことが起こるかもしれない。そのような平和のためならば、確かに戦う価値がある。

//ハンギョレ新聞社
ジョン・フェッファー|米外交政策フォーカス所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1082222.html韓国語原文入力:2023-03-06 02:38
訳H.J

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