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[コラム]「法の技術者」たちに掴まれた韓国

登録:2023-02-27 03:57 修正:2023-02-27 08:10
パク・ヨンヒョン|論説委員
イ・ドウン大統領室報道官が26日、ソウル龍山の大統領室庁舎で行われた懸案ブリーフィングで、国家捜査本部長の検証についての大統領室の立場を説明するに先立ってあいさつしている/聯合ニュース

 チョン・スンシン元検事の警察庁国家捜査本部長への任命が25日、息子の校内暴力問題で取り消された。被害を受けた生徒が自殺まで試みたというのだから、被害者に謝罪するとともに、処罰を甘んじて受けさせてこそ正常だ。しかし、チョン元検事の脳裏に真っ先に浮かんだのは「法」だったようだ。彼は転校処分を取り消してほしいとして再審査、行政訴訟、仮処分申請などの可能なあらゆる法的手段を動員した。訴訟は最高裁まで行った。その間に被害を受けた生徒が耐えなければならなかった2次的苦しみはいかばかりか。

 事件の舞台となった高校の関係者の証言があきれる。「対応を見て、『ああ、プロとはこういうものか』、一般人は思いつきもしないようなことを各段階で…」

 こういう話を聞くと、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の大統領選挙時の発言が連想される。「みなさんがもし起訴されて、法廷でかなり法律的に熟練した検事に当たって数年間裁判を受け、結局最高裁まで行って無罪を言い渡されたとしても、みなさんの人生は切断される。裁判官が最後に無罪を宣告したからといって、みなさんが自由になるわけではない。みなさんは法律を知らずに生きてきたのに、刑事法に非常に熟練した検事と法廷で向き合わなければならないということ自体がひとつの災いだ」

 考えれば考えるほどぞっとする話だ。たとえ無罪が予想される事件であっても、捜査・起訴・裁判などの法手続きによっていくらでも相手を苦しめることができるという意味だからだ。所期の目的の達成のために熟練した法技術を巧みに駆使できるという、検事としての「経験則」がかいま見える。転校処分をひっくり返すことが正義に反することであろうと、最後まで法的争いを続けたチョン元検事の「プロ」的な態度もまた、このような検察の属性が発現したものではないかと思う。

 実際に検察が法技術を駆使すれば、常識とは正反対の世界が現実として繰り広げられたのだから、このような態度は無謀だとばかりは言えない。

 キム・ハグィ元法務部次官の出国禁止をめぐる巨大なハプニングを考えてみよう。真夜中に外国に逃げようとした彼を緊急出国禁止にしたことは、国民の拍手喝采を浴びた。ところが検察によっていつのまにかこれが希代の権力乱用・人権侵害事件に化けた。些細な手続き的不備を針小棒大に吹聴して家宅捜索・召還調査を行い、キム元次官の断罪に努めた検事や法務部の幹部らを「罪人」に仕立て上げた。15日、彼らは全員が事実上の無罪判決を受けた。

 ユン・ミヒャン議員の事件はどうか。検察は準詐欺など8つもの容疑をかけて起訴したが、このうち7つには無罪判決が出た。唯一認められた業務上横領も、認められたのは検察の起訴金額の17%程度だった。検察はユン議員が「日本軍慰安婦」被害者の認知症を利用して事実上の詐欺を働いたとして恥知らずな犯人に仕立て上げたが、裁判所は認知症を認めなかった。検察の捜査当時、「日本軍慰安婦」被害者のために30年間働いてきたユン議員の人生は否定され、共に献身してきた慰安婦被害者憩いの場のソン・ヨンミ所長は家宅捜索を受けた後、自ら命を絶った。

 法の名によって、ある人は死よりも苦しめられる。検察が作り出した「有罪の仮想現実」は少なくとも捜査・起訴・裁判が進められる間、その対象を苦しめる。このようなことは意外と多い。2015年から2020年6月までに捜査・起訴の過程で拘束され、最終的には無罪で釈放された人が905人にもなるという事実は、その一断面だ。

 尹大統領は上で紹介した発言の最後にこう付け加えた。「検察の起訴というのは非常に恐ろしいものだ。だからむやみに起訴せず、起訴すべき事案を大目に見ないことは本当に重要だ」

 しかし、先の2つの事件はいずれも尹大統領が検察総長だった時代に起きたことだ。大統領となった後は検察を掌握し、政府のその他の要職にも法技術に長けた元検事が大勢布陣している。ソウル市公務員スパイでっち上げ事件で懲戒されたイ・シウォン元検事(大統領室公職綱紀秘書官)がそのひとりであり、チョン元検事の人事検証に失敗した責任者のひとりでもある。

 チョン元検事は辞退を表明する文章でも「捜査の最終目標は有罪判決」だと述べた。捜査機関が真実の発見ではなく有罪判決を目標とすれば、針小棒大、世論操作、果てはでっち上げすら行われる。そのような認識を持った人物が警察捜査の総指揮者に任命されないことになったことが、せめてもの救いというべきか。

 しかし、またどのポストにどのような法技術者が重用されるかは分からない。検察と警察がまたどのような法技術を発揮するかも分からない。国が法技術者によってがっちり掴まれているのだから、また誰かが息を殺して苦痛に耐えなければならないかも知れない。

//ハンギョレ新聞社

パク・ヨンヒョン|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1081236.html韓国語原文入力:2023-02-26 15:20
訳D.K

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