「検察による警察掌握」が懸念されるにもかかわらず警察の捜査の総指揮者に検察出身者を任命した政府が、「校内暴力」に対する国民的怒りにさらされたことで、わずか1日でこれを撤回するという初の事態が発生した。
任命翌日の25日に警察庁国家捜査本部長から退いたチョン・スンシン弁護士は、先月5日に志願者の結果が報道された時から話題を集めていた。チョン弁護士が3人の志願者の中で唯一の検察出身者だったからだ。残りの2人の志願者であるチャン・ギョンソク元ソウル庁捜査部長とチェ・インソク元江原華川(ファチョン)署長は、チョン弁護士に比べて「格」が落ちるという失望の声も警察内部からはあがった。任期2年の開放職(公募される職位)である国家捜査本部長は、10年以上の法曹人としての経歴などがあれば志願できる。
この時から、史上初めて検察出身者が警察の捜査の長になるのではないかという警察内部の不安が高まっていた。国家捜査本部長は、検察と警察の捜査権調整の結果として大きくなった警察の捜査権限を分散するために2021年に導入されたが、検察出身者が就任すれば事実上、捜査権調整が無力化されるということだ。ある総警(日本の警察の警視正に相当)級の警察官は26日、本紙に対し「検察出身者が国捜本部長としてやって来たら、意図的に警察の捜査を台無しにして捜査権調整以前に戻すべきだという世論を作るのではないかという『陰謀論』までささやかれるほどだった」と語った。
チョン弁護士が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と比較的近い関係だということも物議の種だった。検察はもちろん、政権からも独立した捜査ができるのかと指摘された。チョン弁護士は尹大統領が最高検察庁中央捜査部第2課長だった2011年に最高検察庁の副報道官として活動しており、尹大統領がソウル中央地検長だった2018年には人権監督官として共に勤務している。
このような警察内外からの懸念の声にもかかわらず、ユン・ヒグン警察庁長はチョン弁護士を国捜本部長に推薦し、尹大統領は24日に任命した。しかし任命翌日の25日、チョン弁護士の息子の校内暴力問題が激しい批判を浴び、結局尹大統領は任命を取り消した。
チョン弁護士の任命取り消しにより、後任の国捜本部長の人選には一層厳しい検証が不可避となった。25日午後、警察庁は「(任命からわずか1日でそれが取り消された)事例は初めてなので、関連法令を検討し、関係省庁の意見を聞かなければならない」とし「最大限迅速に(後任の推薦を)推進する」と表明した。警察は内部での法的検討の結果、後任の再公募と内部選抜の両方の可能性があるとみている。後任の人選が終わるまで、しばらく警察庁のキム・ビョンウ捜査企画調整官が国捜本部長職務代行を務める。