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[寄稿]韓国軍によるベトナム民間人虐殺国家賠償訴訟、加害と向き合う方法

登録:2023-02-15 03:02 修正:2023-02-15 07:13
パン・ヘリン|元軍人権センター活動家、予備役大尉
フォンニィ・フォンニャット村の民間人虐殺の被害者であるグエン・ティ・タンさんが7日午後、韓国政府を相手取った国家賠償訴訟の一審で勝訴し、弁護団とオンラインでつないで明るく笑っている=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 「幾度も侵略されても、一度も他国を侵略したことのない国と民族」

 韓国を説明する時によくこのような言い方をする。ここで言う国と民族が具体的にどの時期の、どこまでを指すのか、その内容は歴史的事実なのかどうかは別として、この文は韓国と韓民族を「犠牲者」と位置づける上で良い大義名分を提供してきた。

 西江大学のイム・ジヒョン教授はその著書『犠牲者意識民族主義』(2021年)で、タイトルでもある「犠牲者意識民族主義」を次のように定義する。「後続世代が前の世代の体験した犠牲者としての経験と地位を世襲し、世襲された犠牲者意識によって現在の自分たちの民族主義に道徳的正当性と政治的アリバイを得る記憶の語り」。さらに次のように言う。「『世襲的犠牲者』という意識から抜け出し、自分も加害者となりうるという歴史的省察が21世紀の文化的記憶の語りの枠組みにならなければならない」

 韓国人は世襲的な犠牲者となる条件を備えている。日帝強占期を直接・間接的に経験した世代が解放とそれに続く朝鮮戦争を経験しており、朝鮮戦争を直接・間接的に経験した世代のかなりの数が依然として生存している。さらに日帝強占期は日帝による強制徴用と慰安婦の問題として、朝鮮戦争は分断と休戦というかたちで、解決されないまま今も続いている。現在進行形のこのような諸問題は、記憶と経験の伝達を通じて現在に生きる韓国人にも犠牲者の位置に立ちうる一つの集合的な口実を提供する。韓国は「純粋な被害者になること」を選択し、ある程度成功した。解放後、大韓民国の建国という優先課題の中で植民地支配の過ちはきちんと清算されず、朝鮮戦争後は反共の名のもとに戦争中に発生した民間人の被害と戦後処理は後回しになった。

 だから、ベトナム戦争での民間人虐殺事件の国家賠償訴訟の一審の結果は、韓国人にとっては非常に馴染みのないものだ。2月7日、韓国裁判所は韓国軍による「フォンニィ・フォンニャット事件」の生存者グエン・ティ・タンさんが起こした損害賠償請求訴訟で、ベトナム戦争での民間人虐殺に対する大韓民国の責任を初めて認めた。韓国政府もベトナム政府も無視してきたが、フォンニィ・フォンニャット村の生存者たちと韓国の市民社会が先頭に立って虐殺の真相を世に伝えてきた。加害の法的責任を問うために起こした訴訟だった。訴訟が起こされたのは2020年だが、以前の報道と市民法廷での証言や活動まで加えれば、問題提起から認められるまでに20年以上かかった闘いだった。

 訴訟が進められていた昨年夏、韓国放送(KBS)の番組「時事メンタリー追跡」の「顔たち、虐殺と記憶編」は、フォンニィ・フォンニャット村をはじめとするベトナム戦争での民間人虐殺問題を深層取材し、放映した。放送後の波紋は大きかった。KBS社屋前ではベトナム参戦軍人たちが連日デモを行い、パク・ミンシク国家報勲処長は個人のフェイスブックに「大韓民国の32万5千人の国民を虐殺者におとしめる現実」、「参戦勇士たちも戦争の英雄である前に被害者です!」と記した。村全体がゲリラ戦を展開中のベトコン(南ベトナム民族解放戦線)の軍事基地であったし、命令に従って作戦を遂行しただけなのに、なぜ韓国軍人に極悪非道な民間人虐殺者のレッテルを貼るのかというのだ。

 戦争の被害者も戦時暴力の加害者となりうる。私たちは全員に対して常に善人ではないし、同時に誰に対しても悪人というわけでもないからだ。世襲的被害者意識から抜け出し、状況と脈絡によっては加害者になりうると省察することは、加害と向き合い、次へと一歩を踏み出す可能性を提供する。加害者になるということは加害を認めることにとどまらず、事件後の被害者の人生を理解し、ひいてはそのような加害が繰り返されないようにするためのあらゆる努力に最善を尽くすことを宣言する過程の第一歩だからだ。

 今回の判決が私たちみなにとって加害と向き合う方法を学ぶ契機となればと思う。純粋な被害者ではなく完全な加害者になるとしても、その責任に向き合い、より良い未来を想像しうる潔い大韓民国となってくれることを願う。

//ハンギョレ新聞社

パン・ヘリン|元軍人権センター活動家、予備役大尉 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1079535.html韓国語原文入力:2023-02-13 18:28
訳D.K

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