与党「国民の力」のナ・ギョンウォン前議員が25日、3月8日の全党大会で行われる党代表選への不出馬を宣言した。理由としてあげたのは「党の分裂と混乱に対する国民的憂慮」。しかし、突然の不出馬宣言の背景がそれほど高尚なものでないことは、多くの国民がすでに知っている。大統領室と党内の「尹核関(尹錫悦の核心関係者)」の大っぴらな集中攻撃に耐えられず、結局は白旗を掲げたものだからだ。
ナ前議員が少子高齢社会委員会の副委員長職を退く意思を明らかにした当初は、このような事態の展開を予想した人は多くはなかったはずだ。当選回数は4回を数え、各種世論調査でも1位だったナ前議員に「資格」があるのはもちろん、出馬意思も明確にうかがえた。しかし、大統領室と尹核関の度重なる圧迫が結果を変えた。尹核関の中心とされるチャン・ジェウォン議員は、「政治浪人に囲まれた徒労」、「通俗的な政治新派劇」と激しく攻撃し、党内の初当選議員までもが「集団リンチ」に加勢するという、見慣れない風景が演出された。大統領室は副委員長職の辞表を要求して提出させ、その後、解任の手続きを踏んだ。政府与党がまさに一体となって、必ずひざまずかせるという意志を公然とあらわにしたのだ。
このすべての事態の背後に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領がいることは、政治に関心の高い層でなくても分かる。表向きは党務に関心も、介入する意思もないと言ってはいるが、尹大統領はイ・ジュンソク前代表に「内部に銃を向ける党代表」との烙印を押して本音をあらわにした。大統領の前で従順で存在感のない党代表、「挙手機械与党」を望んでいるのだ。かつて「党員投票100%」、決選投票導入など、党大会規則まで変えてユ・スンミン前議員の当選の可能性を遮断したかと思えば、今度はナ前議員に不出馬を強制したわけだ。
しかし、果たして大統領の好みどおりの党代表が当選するのか、そうなることで来年4月の総選挙で勝利できるのかは分からない。ただ、今回の事態で明らかになったのは、尹大統領が「党政分離」原則を捨てて久しく、民主主義の主要要素である選挙への立候補の自由さえ自身が持つ権力で抑え込んだということだ。
ナ前議員の態度にも問題はある。政治の世界において誰かが保障してくれる地位というのは「お飾り」以外にはない。党代表選への出馬の意思が明確だったのなら、そもそも少子高齢社会委員会の副委員長職は固辞すべきだったという指摘も肝に銘じる必要がある。何よりも自ら、より大きな仕事を担う準備ができているのかを振り返ってみるべきだ。