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[コラム]尹大統領による独善、独断、独走の政治

登録:2023-01-17 02:30 修正:2023-01-17 08:43
野党には従北主体思想派のレッテルを貼り、党内の反尹錫悦、非尹錫悦派の要人たちは殴り倒している。大韓民国を尹錫悦王国にしようとしているかのようだ。尹錫悦大統領の態度を3つの単語にまとめると、独善、独断、独走だ。尹錫悦大統領に投票した有権者に恥をかかせている。悲劇だ。 
 
ソン・ハニョン|政治部先任記者
2019年8月8日午後、国会で自由韓国党のナ・ギョンウォン院内代表(当時)が尹錫悦検察総長の表敬訪問を受けている=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 人間はそれほど賢い動物ではない。先人の過ちから教訓を得られない。反面教師はいない。いつも前轍(ぜんてつ)を踏む。だから歴史は堂々巡りだ。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領は2016年の4・13総選挙に無理に介入した。「朴槿恵派の鑑別士」が公認候補の推薦を牛耳った。与党は分裂した。国政壟断事態が公になった際には収拾する意志も能力も失っていた。弾劾は残された手順に過ぎなかった。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領と共に民主党は国政壟断事態の反射利益で政権を獲得した。だが、その考えは他の人々を包摂できなかった。そこにチョ・グク事態が勃発した。「自分に甘く他人に厳しい」「敵味方の線引き」などの集中攻撃を受けた。支持層が分裂した。5年で政権を明け渡した。

 文在寅大統領と民主党が犯した過ちの反射利益を得て尹錫悦大統領は当選した。尹錫悦大統領は大統領選挙の翌日、国民が自分を呼んだ理由、すなわち自分が大統領に当選した理由を次のように説明した。

 「この国の公正と常識を正せという改革の声であり、国民を敵味方に分けることなく統合の政治をせよという国民の切実な訴えです。新たな希望の国を作れという厳しい命令です。私はこのような国民の意思を決して忘れません」

 こんなことも言った。

 「国民のための政治、国民生活を再生し、国益を優先する政治は、大統領と与党の努力だけでは不可能です。議会とコミュニケーションをとり、野党との協治を行います。国政懸案をめぐって国民と率直にコミュニケーションをとります」

 言葉と行動は一致しなかった。尹錫悦大統領は公正と常識を正していない。国民を敵味方に分けている。統合の政治に背を向けている。議会とコミュニケーションをとっていない。野党との協治もしていない。国民とも率直にコミュニケーションをとっていない。

 尹錫悦大統領は11日、外交部と国防部から業務報告を受けた際に、「北朝鮮が自由と人権のない野蛮国家だということがあらわになれば、国際社会は南北どちらを支持するか。従北(北朝鮮に追従する)主体思想派たちが北朝鮮の人権の話が出れば徹底的に邪魔するのも、北朝鮮の人権がすなわち国家安保の問題だからだ」と述べた。

 昨年10月19日の党協委員長たちとの昼食会では、「従北主思派は反国家勢力であり反憲法勢力だ。彼らとの協治は不可能だ」と述べた。

 簡単に言えば、北朝鮮の人権に対して消極的な態度を取る輩は従北主思派であるため、彼らとの協治は不可能だというのだ。金大中(キム・デジュン)大統領の太陽政策、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の平和繁栄政策、文在寅大統領の朝鮮半島平和プロセスに対する発言だ。

 こうしてみると尹錫悦大統領が野党代表に会わない理由も明確になる。検察の捜査を受けているからでもなく、人間的に嫌いだからでもない。従北主思派の頭目だと考えているからだ。

 振り返ってみるとずいぶん前から兆しはあった。2021年12月29日にあった慶尚北道の選挙対策委の発足式で、過激な発言をしていたのだ。

 「左翼革命の理念、そして北朝鮮の主体思想理論などを学んで民主化運動の隊列に加わり、まるで民主化闘士であるかのように、これまで仲間内で助け合いながら生きてきた集団が、今の文在寅政権の成立後は国と国民を略奪している」

 あの時は、時期と場所を意識した誇張だと思った。今考えるとそうではなかった。あれこそまさに尹錫悦大統領の本音だった。大統領の頭の中がこうなっているからこそ、目ざとい検察、警察、国家情報院は「アカ狩り」に積極的なのだろう。

 野党に対してはそうだとしてもだ。与党が党内を統合しないのはなぜか。実に不思議だ。尹錫悦大統領はユ・スンミン前議員の京畿道知事選への出馬を阻止した。イ・ジュンソク前代表を追い出した。ユ・スンミン、ナ・ギョンウォン前議員が党大会に出馬して代表になる道を塞いでいる。

 尹錫悦大統領は2021年6月29日に大統領選への出馬を宣言した際に、「10のうち9つの考えが違っても、1つの考え、政権交代によって国を正常化し、国民が本当の主人である国を作らなければならないという考えを共にするすべての人が力を合わせなければならない」と気炎を吐いた。結局、真っ赤な嘘だった。

 野党には従北主思派のレッテルを貼り、党内の反尹錫悦、非尹錫悦派の要人たちは殴り倒している。大韓民国を尹錫悦王国にしようとしているかのようだ。

 尹錫悦大統領の態度を3つの単語にまとめると、独善、独断、独走だ。尹錫悦大統領に投票した有権者に恥をかかせている。悲劇だ。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1075891.html韓国語原文入力:2023-01-16 16:40
訳D.K

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