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[寄稿]尹錫悦がなぜ大統領になったのか、ようやく謎が解けた

登録:2023-01-05 04:18 修正:2023-01-05 08:51
[ハンギョレ21]キム・ソヒの政治の品格 
国政壟断をすべて大目に見た「赦免壟断」、気の向くままに「拡戦不死」発言
尹錫悦大統領が2022年12月28日、ソウルの青瓦台迎賓館で行われた政府業務報告で、タヌリ号が月軌道への進入に成功した映像を見て拍手している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 力ずくではめた部品や装置が、ぎしぎしと音を立てて無理に動くとでも言おうか。継ぎ目が潰れながらであろうと、どうにかかみ合って動けば幸いだが、急に止まったり壊れたりしたらどうするのか。

 このような不安が朴槿恵(パク・クネ)政権にもあった。国政壟断という背後の作動原理が明らかになったことで、その実体が分かった。キム・ムソン(当時セヌリ党代表最高委員)のような人物は、半分は他人の意思だったとはいえ身をもってブレーキをかけた。つまり、当時私たちは事の脈絡が分かったし、脈絡に抵抗する与党関係者もいたということだ。今は、大統領の「気分」のほかには、目の前で起こっている出来事の脈絡がさっぱり推し量れない。

かつての尹錫悦と現在の尹錫悦の「自我統合」だという皮肉もおとなしすぎる

 あれこれ投げてみて何か一つでも得られたら幸いな政治とでも言おうか。哲学と意志はおろか、これといった順序もない。単なる大統領の気の向くままの即興だ。だしぬけに労働・教育・年金改革を行うと「宣言」した。ではいつ、どのように? 誰も知らない。最初にターゲットになったのが、貴族労組のレッテルを貼ってひざまずかせた貨物連帯だった。それで味を占めたのか、労組の腐敗を取り上げて会計帳簿を公開せよと言った。続いて市民団体を問題にした。補助金の使い方が不透明だと汚名を着せた。唐突だ。「自分の側(だと考えられる者)」たちの気に入らない勢力をとりあえず一度つついてみようという具合にだ。そうすることで何とか支持率を上げてやろうという気構えなのか、これ以上落ちることもないから駄目で元々、というわけか。

 気の向くままに政治をすることまでは最高権力者の自由だとしよう。でも、とんちんかんな発言はやめてほしい。勤勉誠実に賄賂を受け取り、17年の刑期中で刑務所暮らしはわずか2年の元大統領を釈放しておいて、「国民統合」などという。コメント工作、権力型不正腐敗犯たちも大放出。自分が捕えて刑務所に送った者を釈放するなら、最小限の説明くらいはするべきなのではないか。過去の尹錫悦(ユン・ソクヨル)と現在の尹錫悦の「自我統合」だとか、党の主導権を握るための「党員統合」だという皮肉すらおとなしすぎるほどだ。

 権力を謳歌するためには責任を持たなければならない。責任を持たなければ権力に酔っているだけだ。今の尹錫悦大統領はどちらなのか。

「上座に座って遊んで食べて飲むために」

 誰として直言どころか報告もまともにできていないようだ。危機のたびに大統領の口から飛び出す「思い付き発言」をみれば確認できる。北朝鮮の無人機侵入翌日の最初の反応は、韓国軍に対する「激怒」だった。そして「前政権のせい」と「戦いが拡大する覚悟」という発言だ。それに続く国防部と大統領室の説明は理にかなっていなかった。大統領に耳障りのいいように話すばかりだった。

 大統領は韓国軍にドローン部隊があることも知らなかったくせに、前政権時代に訓練をしていないことがどうして分かったのか。国防部は北朝鮮発の無人機の航跡もまともに明らかにできていないくせに、大統領室のあるソウル龍山(ヨンサン)付近はあえて通っていないと述べた。そんななか大統領室は、韓国の無人機を北朝鮮に侵入させるような「報復の勇断」を下した方こそ大統領だと、みみっちく褒めたたえた。軍の統帥権者である大統領がそれをするのは当然ではないか。

 戦いの拡大を辞さないと言うほど比例性原則に厳しいお方が、その非常事態のさなかに晩さん行事はきちんと行った。不要不急な忘年会にイ・サンミン行政安全部長官まで呼んでおいてだ。ある友人は、彼がなぜ大統領になったのか、ようやく謎が解けたと言った。真実は意外に単純で「上座に座って遊んで食べて飲むため」だという簡潔な答えだった。朴槿恵政権時代に「汚いとかずるいとか思われても、朴槿恵より長生きすればそれで十分」という寛大さをみせた別の友人は、心臓が縮みあがったと言いながら「どうか戦争だけは起こしてくれるな」という新年の願いを、祈る少女の写真と共に送ってよこした。

キム・ソヒ|コラムニスト (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1074384.html韓国語原文入力:2023-01-04 15:06
訳D.K

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