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[コラム]「尹錫悦の核心関係者」追い出したポストを大統領夫人が埋めれば

登録:2022-09-08 04:12 修正:2022-09-08 09:15
権力に空白というものはない。誰かが追い出されれば誰かがそのポストを埋める。人事刷新の嵐の中でも無風地帯はキム女史だ。むしろ人事の空白に乗じてキム女史の影響力はさらに強まる可能性が高い。キム女史は尹核関のような「尹錫悦大統領誕生」の単なる立役者ではなく、大統領の「政治的パートナー」のように見える。 
 
パク・チャンス|大記者
北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の行われるスペインへと向かうため6月27日にソウル空港を出発した空軍1号機の機内で、資料を検討する尹錫悦大統領を、妻のキム・ゴンヒ女史が見ている=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 今、大統領室は「人事刷新」を名目にした暴風に見舞われている。尹核関(尹錫悦の核心関係者)、その中でも当選後に就任まで秘書室長を務めたチャン・ジェウォン議員が強引に据えた秘書官や行政官が相次いで追い出されており、モバイルフォレンジックを含む高強度の監察が広範に行われている。4人の秘書官を含む20人あまりが大統領室を去ったのに続き、今週はさらに20人あまりの行政官が辞職勧告を受けたという。国民の力非常対策委の再発足と連動した大統領室の改編は、与党の権力地形の変化にまでつながるだろうとの観測が出ている。しかし、いつもそうであるように、変化に富む権力の嵐の中でも変わらないものはある。キム・ゴンヒ女史は依然として「アンタッチャブル」だと与党の人士たちは言う。

 就任わずか100日にしてに尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の支持率が急激に沈んだのには、「尹核関リスク」と「キム・ゴンヒ・リスク」が大きく作用した。イ・ジュンソク代表を追い出そうとして内部権力闘争に火をつけ、家全体を焼いてしまいそうになったのが尹核関たちだ。政治経験が浅いため党運営をクォン・ソンドン院内代表をはじめとする尹核関に完全に任せていた尹錫悦大統領としては、非常に失望したことだろう。加えて、大統領室で相次いで発生した情報流出と判断ミスが、尹核関の推薦した者から始まったと考えるようになったのだから、尹大統領の選択は手厳しくならざるを得なかった。長い間信じてきた検察出身者を前面に押し立てて尹核関の推薦した「コネ公」(コネでなった公務員)を追い出すこと、これこそ今の人事刷新の本質だ。だとしても、それで大統領室の力量が高められるなら幸いだ。

 問題は、それではもう一つの雷管である「キム・ゴンヒ・リスク」は制御しえないということだ。むしろ人事の空白に乗じてキム女史の影響力はさらに強まる可能性が高い。政権初期には尹核関がポストをほぼ独占していたため、大統領室においてキム女史ラインと言えるのは1、2人の秘書官と行政官数人ほどに過ぎなかったという。今や尹核関側のコネ公を追い出したポストには、「常公」(常に公務員である官僚)と別系統のコネ公が座るだろう。彼らは、望むポストに長くいるためには誰の覚えがめでたくあることが重要なのかを明確に知っている。尹核関たちは大統領の信任を失ったが、大統領のキム女史に対する信頼は依然として強固なように見えるからだ。権力に空白というものはない。誰かが追い出されれば誰かがそのポストを埋める。人事刷新の嵐の中でも無風地帯はまさにキム女史だ。キム女史は尹核関のような「尹錫悦大統領誕生」の単なる立役者ではなく、大統領の「政治的パートナー」のように見える。

 キム女史には数多くの疑惑と批判が公に提起されている。手抜き論文をめぐる批判からはじまってドイツモーターズの株価操作への関与疑惑、大統領官邸の工事を私的に知人に任せた問題、高価な宝石類のアクセサリーを借りた経緯、大統領就任式に自らが関わった事件を担当する警察官を招待した理由など、数え切れないほどだ。尹大統領は候補時代、「大統領夫人はただの家族に過ぎない」と述べたが、まさにその家族に関することを率直に話せないのが今の与党の現実だ。

 1997年、4度目の大統領選に挑戦した金大中(キム・デジュン)候補は、テレビ討論を前にソウルのあるホテルで実戦を彷彿とさせるリハーサルを複数回行った。その際の最も痛い質問の一つが、全羅南道木浦(モッポ)で父親の七光りで国会議員バッジをつけた息子のキム・ホンイル議員の問題だった。複数の国会議員と核心参謀が「大統領選挙で勝利するためには息子を政界から引退させなければならない」と強く主張した。しかし金候補は「私のせいでひどい拷問を受けた息子に、再び犠牲になれとは言えない」と拒否し、実際の討論でもそのような趣旨の回答を行った。絶体絶命の選挙を目前にした大統領候補ですらその程度なのに、まして政権初期の現職大統領に配偶者の問題を虚心坦懐に話せる人がどれほどいるだろうか。

 今、大統領室でキム女史の問題を尹大統領夫妻に率直に話せる人間はいないように見える。たとえば広報首席室は、キム女史が高価なアクセサリーを知人から借りたこと以外は何の釈明もしていない。どのような関係の知人なのか、借りたのは一度だけなのか、あるいは一定期間借りて使っているのか、国民が知りたがっている内容に対する答えは抜けている。本人に聞ける雰囲気ではないため、誰も正確な経緯を知らない可能性が高い。金大中大統領が政権後半に3人の息子の不正疑惑で大変苦労したことは、世の誰もが知っている。このようなやり方でキム女史の問題を覆い隠していては、政権の視野が一面「キム・ゴンヒの暗雲」に覆われる日は遠くないように思える。

//ハンギョレ新聞社

パク・チャンス|大記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1057911.html韓国語原文入力:2022-09-07 15:53
訳D.K

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