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[寄稿]新年、一時代の幕が下りようとしている

登録:2022-01-17 01:25 修正:2022-01-17 07:40
ソ・ジェジョン|国際基督教大学アーツ・サイエンス学科教授 
 
北朝鮮は極超音速ミサイルなどを相次いで発射しているのに、米国はすでに効果の低下した独自の制裁を繰り返している。国際世論も味方につけられていない。中国とロシアのみのせいにするのは難しい。11日の国連安全保障理事会の直前に発表された声明に名を連ねたのは、米国、英国、フランス、アルバニア、アイルランド、日本の6カ国だけだった。 
社会学者ウォールデン・ベローは今月初め「この20年はオサマ・ビン・ラディンに始まりドナルド・トランプに終わった」と述べた。米国のトランプ大統領(当時)が2017年5月17日(現地時間)、コネチカット州の沿岸警備隊士官学校の卒業式に出席している=ニューロンドン/AFP・聯合ニュース

 2022年の幕が上がるやいなや、一時代の幕が下りつつある。

 「この20年はオサマ・ビン・ラディンに始まりドナルド・トランプに終わった」。社会学者のウォールデン・ベローが新年早々にこう投げかけた。2001年の9・11は米国の軍事力をアフガニスタンと中東という泥沼に陥れ、2021年に米軍のアフガニスタンからの不名誉な撤退で幕を下ろした。冷戦終息後「世界最強」を誇った米国の力は「世界最弱」と言えるアフガニスタンでも通じなかった。米国は「毛の抜けたワシ」だということのみを世界に確認させてしまった。

 米国が中東という泥沼でもがいている間に中国が躍進した。米国の超国家資本による産業生産の中国への移転で大きな力を得たのだ。米国は代わりに金融市場に力を注ぎ、一時的にではあるが良い目を見てもいる。しかし中国は成長を続けた一方、米国の金融市場は暴落を経験した。その流れ弾は白人労働者に当たった。産業生産では職場を失い、金融市場では財産を失った。彼らの設置した不満の祭壇には移民と少数民族がスケープゴートとしてささげられ、ドナルド・トランプがシャーマンとなった。彼らが昨年1月に祈った「民衆革命」は成功しなかったものの、彼らのシャーマンは今日も在野で健在であり、彼らは依然として「救世主義の再臨」を切に願っている。

 ベローが指摘するように、この20年はトランプとビン・ラディンに代表される内憂外患の20年だった。内憂外患でよろめく米国にとって、コロナは文字通り致命的な打撃だった。すでに社会の分裂によって虚弱体質になっていたうえ、新自由主義によって公共保健の抵抗力と回復力がどん底だったからだ。加えて政治的分裂のせいでワクチンも効果を発揮できずにいる。多くの米国人が死に、病院に入院している間、経済再生も遅れている。

 問題は、米国が近年、中国を「主敵」と決めつけて勢力を結集しようとしている間に、世界各地に隙が生まれていることだ。その隙を突き、機先を制してロシアのプーチンが動いている。昨今のウクライナ危機は、北大西洋条約機構(NATO)の東進によって西欧の軍事力がロシアの目前にまで迫っているという切迫感の表れでもあるが、自信の表れでもある。ソ連崩壊後、延々と墜落していたロシアではもはやないということだ。天然ガスで西欧を揺さぶるほど経済的自信もつき、軍事的にも世界の注目を集めるほど威力を回復している。

 欧州も大きく成長した。中国に対して米国と歩調を合わせるかのように見えつつも、得られる利益は着実に得ている。ロシアに経済制裁を科しつつも、社会経済的つながりは拡大している。米国の強い反対にもかかわらず、ドイツがロシアと2本目の天然ガスパイプラインをつなげたことが象徴的だ。ロシアは過去のソ連のような排除の対象というよりは、死活的につながっているユーラシアの一部分ということだ。ウクライナ危機で全欧安全保障協力会議がロシアと会談したことは、欧州の明日を象徴する。

 ラテンアメリカも風雲急を告げている。最近チリで左派連合候補のガブリエル・ボリッチが大統領に選出されたことが象徴的だ。「新自由主義のゆりかごだったチリを新自由主義の墓場にする」。新自由主義との決別を宣言したボリッチは、右翼候補を12ポイントという圧倒的な差で制した。このボリッチにアルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は連帯の手を差し伸べている。「南米において不平等を終わらせるために共に闘おう」。南米の左派は今やコロンビアとブラジルも掌握する勢いだ。

 米国は、北朝鮮との対決でもかつての面影はない。北朝鮮は極超音速ミサイルなどを相次いで発射しているのに、米国はすでに効果の低下した独自の制裁を繰り返している。国際世論も味方につけられていない。中国とロシアのみのせいにするのは難しい。11日の国連安全保障理事会の直前に発表された声明に名を連ねたのは、米国、英国、フランス、アルバニア、アイルランド、日本の6カ国だけだった。10カ国の安保理非常任理事国では、Quad(クアッド)の一翼を担うインドも、保守右翼のジャイール・ボルソナーロ大統領が政権についているブラジルも参加していない。メキシコやノルウェーはもちろん、ガボン、ガーナ、ケニア、アラブ首長国連邦も同調していない。

 もちろん、米国の衰退がはっきりしているという左証を「米国の没落」と読むことはできない。また、米国が勢力を回復する可能性はないと速断することもできない。確かなのは歴史の流れだ。米国の一極時代の幕は下り、多極時代の幕が上がりつつある。この滔々とした流れの中でこそ、朝鮮半島と東アジアの座標を設定すべきなのではないか。時はまさに大統領選挙を控えている。

//ハンギョレ新聞社

ソ・ジェジョン|国際基督教大学アーツ・サイエンス学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1027487.html韓国語原文入力:2022-01-16 15:18
訳D.K

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