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米イラン戦争は2021年にアフガンで始まった…米中「グレートゲーム」

[パク・ミンヒのチャイナパズル] 
米国とイランの終戦と中国の戦略
昨年9月2日、中国の第2次世界大戦勝利記念式典と上海協力機構首脳会議に出席するため北京を訪れたイランのペゼシュキアン大統領と中国の習近平国家主席が、人民大会堂で会談している=中国外務省提供//ハンギョレ新聞社

 米国とイランの戦争の真の勝者は中国なのだろうか。

 米国とイランが締結した終戦覚書(MOU)には中国の署名はないが、中国の影響力は随所に見られる。戦中、中国の王毅外相とイランのアラグチ外相は電話や直接会談などで数十回にわたりコミュニケーションを取っており、中国は友好国パキスタンと緊密に協調しつつ、米国とイランの交渉に間接的に重要な役割を果たした。中国の習近平国家主席と米国のトランプ大統領の5月の首脳会談でも、イランとホルムズ海峡は主要議題だった。トランプ大統領は米国とイランの終戦覚書に署名後、主要7カ国首脳会議(G7サミット)の記者会見で「習近平主席は私を助けてくれた。解決に向けて努力してくれ、実際に助けになったと思う」と語った。

 米国のトランプ政権は2月28日にイランへの攻撃を開始し、その後、数百億ドルの予算と先端兵器を注ぎ込んだが、公言していた目標はほとんど達成できず、力の限界を露呈するばかりだった。その間に中国の外交的影響力ははるかに高まった。米国がイランの反撃とホルムズ海峡封鎖で苦戦している間に、中国は複数の国の首脳を北京に招き、「平和の守護者」米国よりもはるかに予測可能で信頼しうるパートナーだというイメージを宣伝した。

 トランプ大統領の失敗によってイランとの関係に力を注いできた中国が有利な立場に立ったことは明らかだが、すぐに中国が中東の覇権を掌握するわけではない。トランプ氏によるイラン攻撃は中東と中央アジアにおける中国の勢力拡大を阻止するとともに、米国の主導権を再確立することを狙った長い「グレートゲーム」の一部であり、その始まりは米国のバイデン政権がアフガニスタンから慌てて撤退した2021年8月に遡る。紹興大学中国・中東センターの范鴻達主任は18日、シンガポールのメディア「シンクチャイナ」への寄稿で、2021年8月の米国のアフガン撤退以降、中東での米国と中国の競争はジェットコースターのような動きを示してきており、最終的に米国によるイラン攻撃に至ったと分析している。

 バイデン政権は2021年末までにアフガニスタンから撤退し、中国との競争に資源を集中させようとした。しかし、予想以上にタリバンの進軍が速かったため、米国は同年8月に逃げるようにアフガニスタンを後にした。中国は米国の無残な撤退によって生じた力の空白を突き、存在感を高めた。中国はアフガン周辺国の外相会議などを開催し、アフガンの安定的な転換を支援する姿勢を示した。2022年12月には習近平主席がサウジアラビアを訪問しており、2023年3月には中国によるサウジとイランの歴史的和解の仲裁に成功した。とりわけトランプ氏が2018年にイランとの核合意(JCPOA)を一方的に破棄して以降、イランと中国がさらに密着していったことで、イランは中国が中東で影響力を急速に拡大するうえでの重要な橋頭堡(きょうとうほ)となった。

昨年5月、中国の王毅外相が、中国を訪問したアフガニスタンのムタキ外相代行と会談している=中国外務省のウェブサイトより//ハンギョレ新聞社

 しかし、2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃で、中国は激しい逆風にさらされはじめた。イスラエルはハマスやヒズボラなどの親イラン勢力を弱体化させた。シリアでも親イランのアサド政権が崩壊し、親米政権が発足した。続いて2025年6月には、イスラエルがイランの核施設を一方的に破壊した「12日間戦争」が勃発。この激動期に中国は、イランと親イラン勢力に軍事的支援を行わず傍観し、中国の消極的な態度に対する失望が広がった。米国とイスラエルは中東での中国の影響力の抑制に成功したかにみえた。

 今年2月28日、トランプ氏がそこからさらに一歩踏み込んでイスラエルと共にイラン政権の転換を試みたことで、状況は再び変化した。中国の主要なエネルギー供給国であり中東の橋頭堡となってきたイランを屈服させ、習近平主席との首脳会談で圧倒的な優位に立ち、米中の「グレートゲーム」で勝機をつかもうとしたのだ。

 しかし、最高指導部が米国とイスラエルの空爆で全員死亡したわずか数時間後にイランが反撃し、ホルムズ海峡を封鎖したことで、トランプ氏の思惑はすべて外れてしまった。その後、中国は「中立」を掲げつつも、ドローンやミサイルの生産に使用できる部品や原料をイランに提供するとともに、イラン産の石油を購入し続けてイランを支援した。イランが中東内の米軍の施設を正確に攻撃できるよう、衛星情報も提供したといわれる。

 3月31日、中国はパキスタンと共に「中東の平和と安定の回復に向けた5項目の共同構想」を発表。1週間後にパキスタンは米国とイランの暫定停戦を仲介することに成功した。米国とイランの終戦交渉が最終段階にさしかかっていた5月末には、パキスタン陸軍のアシム・ムニール参謀総長がテヘランを訪問してイランと集中協議し、その後、すぐに北京へ移動して王毅外相と会談するなど、中国と緊密に協調した。

 韓国外国語大学イランペルシャ語学科のユ・ダルスン教授は「中国は非公式にイランに物資と情報を支援してきた。パキスタンが仲裁役を務める裏でも重要な役割を果たした」とし、「イランは米国との合意で核兵器は保有しないと宣言したが、イスラム世界の唯一の核保有国であるパキスタンとの連帯を強化しつつ、イラン・パキスタン・中国の協力の枠組みを作ろうという動きが見られる」と分析した。

 米国がイラン戦争で失敗したことにより、第2次世界大戦以降、米国が中東の安全保障、エネルギー、経済をすべて左右するという秩序は揺らいでいる。しかし、中東の主要国による安全保障の米国依存は、今回の戦争にもかかわらず根本的な変更は困難だ。中東に位置する米国の同盟国の間で「米国は信じられない」という不信感と不満は高まっているが、中国がこれらの国に安全を保障することはできないからだ。中国は2023年のハマスによる攻撃以降のイスラエルによるガザ地区焦土化、昨年のイランの核施設に対する攻撃、今年のイラン政権の転換を狙った米国とイスラエルによる開戦の際にも、軍事や安全保障の面では主要な責任をまったく負おうとしなかった。当面、サウジ、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンなどの中東の主な王政国家は、安全保障を米国に依存しつつ、長期的に代案を探っていかざるを得ないということだ。

 北京大学中東研究センターの呉冰冰主任は25日、済州フォーラムで「米国は弱体化したものの、中東から簡単に手を引くことはないだろうし、中東における米国のヘゲモニーが短期間で消えることもないだろう」として、「(イランの報復攻撃を受けた)湾岸地域の米国の同盟諸国は今回の戦争の最大の敗者となった。イランをけん制するために米国への依存度はむしろ高まるだろう」と語った。同氏は「中国は中東問題の解決策を提示しようとはしない。すべての当事国が受け入れられる解決策はないと考えているからだ」とも語った。

 第1に中国は、米国との競争において要となるのは台湾海峡をはじめとする東アジアと太平洋地域であると判断しているため、中東で直ちに米国に挑戦したり、過度に力を消耗しようとしたりはしない。第2に、中国国内で先端技術の大躍進と内需の低迷という極端な「K字型成長」が深刻化している中にあっては、中東の安全保障を担う余裕はない。第3に、過剰生産されている中国の先端製造業の製品の輸出市場を維持するためには、イラン、サウジ、UAEなどをはじめとする中東市場全体をうまく管理していく必要がある。中国はイラン再建市場で大きなシェアを占めることを狙っているだろうが、イランとの密接な姿勢を示すことでイラン以外の中東市場で逆風にさらされないようにするため、微妙なバランスを保っていくはずだ。したがって中国は、短期間に中東で米国と対立して中東の覇権を握ろうとはしないだろう。その代わり、米国の漸進的な衰退を利用して漁夫の利を得ながら影響力を拡大していこうとするだろう。つまり、中東の安全保障を担うためのコストは負担せず、経済的影響力は拡大しようという「最小コスト、最大効果」戦略だ。

 もう1つの変数は、トランプ大統領がイランとの「ビッグディール」を通じて「第2のニクソン」になろうとする可能性だ。バイデン政権のイラン特使だったロバート・マレー氏と外交専門家のスティーヴン・ワートハイム氏は23日のニューヨーク・タイムズへの寄稿で、「イランでトランプが犯した大きな失敗は、米国にとって贈り物となりうる」として、「トランプが望むなら、イランとの合意での裁量権はどの米国大統領よりも大きい」と述べている。イランに最も強硬だったトランプが和解に乗り出せば、共和党内の反発も抑えられるということだ。ユ・ダルスン教授も「イランの政権転換に失敗したトランプがそれを挽回しうる方法は、イランとの国交正常化の枠組みを整えること」だとして、「イラン指導部も、米国と再び戦争をしないようにするための保険かつ安全装置として、国交正常化と米国企業の投資の誘致を望む可能性がある。米国とイランの和解が実現すれば、国際秩序は根本的に変わるだろう」と述べた。

 米国とイランの終戦覚書には、対イラン制裁の解除の具体的保障、両国関係の正常化、イラン再建基金をはじめ、イランによるホルムズ海峡の通行料徴収の余地までもが盛り込まれている。ある元高位外交官は「北朝鮮が米国に求めていた内容がすべて入っている」とし、「北朝鮮も米国とイランの交渉に注目しているだろう」と語った。米国とイランの戦争をめぐる米中の複雑な計算は、朝鮮半島と世界への巨大なバタフライ効果を予告している。

//ハンギョレ新聞社

パク・ミンヒ|統一外交チーム先任記者。大学と大学院で中国と中央アジアの歴史を学ぶ。2007~2008年に中国人民大学で国際関係を学び、2009年から2013年までハンギョレの北京特派員として中国各地を取材。統一外交チーム長、国際部長、論説委員を歴任。世界と外交について取材、執筆している。著書に『中国ジレンマ』、『中国をインタビューする』(共著)、訳書に『見えない中国』、『ロングゲーム』などがある。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1266108.html韓国語原文入力:2026-06-30 18:57
訳D.K

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