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トランプ巻き込んだネタニヤフの戦争論理…種は24年前に撒かれていた

登録:2026-03-26 10:03 修正:2026-03-28 07:20
チョン・ウィギルのグローバル・パパゴ
米国のトランプ大統領が昨年12月29日、フロリダ州パームビーチのマール・ア・ラゴ・クラブで行われた共同記者会見で、イスラエルのネタニヤフ首相と握手している/ロイター・聯合ニュース

チョン・ウィギルのグローバル・パパゴとは?

 「パパゴ」は国際公用語のエスペラント語でオウムを意味します。鋭い洞察と豊富な歴史的事例で武装したチョン・ウィギル先任記者がエスペラント語でさえずるみなさんのオウムとなり、国際ニュースの行間をわかりやすく解説します。

■何が起こっているのか?

 米国家テロ対策センターのジョセフ・ケント所長が今月17日(現地時間)、「イランは米国に対する差し迫った脅威ではなかった。良心に照らして現在行われているイラン戦争は支持できない」として、「今回の戦争はイスラエルと、その強力な米国内ロビーの圧力によって始まった」と語り、辞任した。彼の辞任が契機となり、イラン戦争勃発直後からささやかれていたイスラエルによる戦争誘導論が公然と語られるようになった。さらに、米国の中東政策や対外政策全般において、イスラエルの影響力が改めて注目されている。イスラエルのネタニヤフ首相についてはとりわけ、1996年に政権を握って以来、米国の中東紛争への介入と拡大を絶えず誘導、推進してきたと指摘されている。編集者

Q. 今回のイラン戦争は米国のトランプ大統領の支持層であるMAGA(米国を再び偉大に)陣営の中でも、イスラエルの戦争、ネタニヤフの戦争と評されている。なぜこのような評価になるのか。

A. ネタニヤフは1996年に首相となり、初めて政権を握った。パレスチナ独立国家建設のための中東和平交渉の頂点とされるオスロ合意の2合意が1995年に妥結したことが背景にある。ガザと西岸でのパレスチナ国家建設を約束したオスロ合意に、イスラエルの保守右派は反対した。合意を主導した当時のラビン首相は、1995年11月に極右に暗殺された。ラビンの死を受けて1996年に行われた選挙では、強硬右派のリクードを率いていたネタニヤフが首相となった。彼はパレスチナ国家との和平交渉に反対しており、リクード内でも超強硬派に分類されていた。パレスチナ独立国家、それを支持する中東のあらゆる勢力に対する反対は、彼にとって政治的前提だった。

 ネタニヤフが初めて政権を握った際、米国では対外政策の強硬派であるネオコンが姿を現した。ネオコンは転向した左派ユダヤ人がルーツ。米国内の強力なイスラエルロビー団体である米国・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)に後押しされていた。ネオコンは、イスラエルを前面に立てた米国中心の新たな中東秩序を夢見ていた。米国式の民主主義と資本主義を中東に移植しようという中東改造論だ。ネオコンはネタニヤフを現地の執行者とみなし、彼のために「クリーンブレイク:領土確保のための新戦略」という報告書を作成した。既存の中東和平交渉とは「きれいさっぱり断絶(クリーンブレイク)」し、中東の敵対的な政権を除去して民主主義を広めようという内容だ。これはそれ以降、米国が介入したすべての中東での戦争の出発点となった。イスラエルの戦争、イスラエルのための戦争のルーツだ。

Q. ネタニヤフと米国の中東戦争は具体的にどのように関係しているのか。

A. ネタニヤフの政権掌握でオスロ合意は事実上破綻した。米国では2000年の大統領選でジョージ・ブッシュが当選し、対外政策はネオコンが掌握した。2001年に9・11テロが発生すると、ネオコンは中東改造論を実現するため「イラクの大量破壊兵器(WMD)開発」をでっち上げ、イラク戦争を開始した。当時、元首相の身だったネタニヤフは、2002年9月12日に米国議会で「サダム・フセイン政権を除去すれば地域全体に巨大なプラスの波及効果があるだろう」、「フセインの核兵器開発は疑いの余地がない」、「核で武装した独裁政権を阻止する先制攻撃は正当」、「(イラクの政権転換は)歴史の分岐点になるだろう」などの発言でイラク戦争を支持し、推進した。今回のイラン戦争の論理は、すでに24年前に種が撒かれていたのだ。

 イラク戦争は米国にとって災厄に終わった。そのためシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授とハーバード大学のスティーブン・ウォルト教授は、2006年3月に「イスラエルロビーと米国の対外政策」という文章を発表した。米国の対外政策は米国の国益ではなくイスラエルのロビーに左右されていると批判したため、大きな波紋が広がった。「イスラエルロビー」は米国の対外政策において論争の的となりはじめた。

Q. ネタニヤフとイランの因縁はどのようなものか。

A. ネタニヤフは初当選議員だった1992年から「イランは核兵器を開発中であり、米国主導の国際連帯で根こそぎ除去すべきだ」と主張していた。彼は当時、イランは1999年までに核弾頭を保有するだろうと主張していた。それ以降の彼の対外・対米外交は、「米国をイランとの正面衝突の軌道に乗せる」ということで一貫しているとフィナンシャル・タイムズは評している。

 米国政府は1979年のイランのイスラム革命以降、イランと対立してきたが、2015年にオバマ政権がイランとの国際核合意「包括的共同作業計画(JCPOA)」を締結し、政策転換を試みた。対決から関与へと転じようとしたのだ。ネタニヤフは米共和党の強硬派の後押しで上下両院合同会議で演説し、オバマ政権に挑戦した。

 クリントン元大統領と舌戦を繰り広げ、オバマと正面衝突して対立をいとわなかったネタニヤフは、2016年にトランプが政権を握ると転機を迎えた。フィナンシャル・タイムズは、ネタニヤフはトランプの娘婿であるユダヤ人のクシュナーら親イスラエルロビー勢力を利用し、トランプとの「特別な親交を誇示することで米国の力を操ってきた老練な操縦者」となったと指摘する。最終的にトランプは、2018年にイラン核合意を一方的に破棄。それが今回のイラン戦争の端緒となった。

 ネタニヤフの側近であるマイケル・オレン元駐米大使はフィナンシャル・タイムズで、「イランはネタニヤフの存在理由」だと述べつつ、ガザ、レバノン、イランとの一連の戦争を一種の「歴史的使命」として飾り立ててきたと評している。このような戦争は、実際に2023年にガザ戦争が勃発したことで現実のものとなった。2025年のトランプの政権返り咲きは、このようなネタニヤフの戦争への道を切り開いた。

Q. ガザ戦争でネタニヤフは翼を得たということか。

A. そうだ。イスラエルはパレスチナなどの周辺勢力に対する安全保障戦略として、周期的かつ局所的な攻撃によって敵の能力を削ぐ「芝刈り」戦略を駆使してきた。パレスチナのイスラム組織ハマスの全面的な攻撃で、この芝刈り戦略は廃棄され、「敵の完全な敗北」へと転換された。パレスチナ、ヒズボラ、フーシに対する全面戦争を順次拡大し、その後、究極の標的を「テヘラン」に設定した。イスラエルはガザ戦争以降、ガザのハマス、レバノンのヒズボラ、シリアのアサド政権に対して順次戦争を拡大し、無力化させてきた。バイデン政権もイスラエルの暴走を止められず、トランプはむしろ翼を与えた。

 ネタニヤフは昨年6月にイランに対する「12日戦争」を開始し、イランの防空網を予想より容易に制圧した。イスラエル国家安全保障会議のエヤル・フラタ元議長は「イスラエルがイランの防空網を破壊したことで、米軍の計画者たちはイランに対する『可能性とコスト』の計算を変更した」と指摘した。

 12日戦争以降、ネタニヤフがトランプに情報を要約した短い書面を随時渡し、それが米国の官僚組織内で回覧される様子を目撃したというイスラエル外交官の証言もある。米国の意思決定環境がネタニヤフによって設計されたことをうかがわせるものだ。昨年12月、2人はイラン戦争の準備に合意した。表向きはオマーンを仲介者とするイランとの交渉を続ける姿勢を示していたトランプは、2月初めにネタニヤフと開戦に合意。ネタニヤフは2月23日にトランプとの緊急電話で、イランの最高指導者ハメネイ師らイラン指導部の会合を伝え、28日に開戦した。

Q. 米国・イスラエルとイランとの戦争は、現在トランプにとって泥沼となりつつある。トランプとネタニヤフにとってどのような影響を及ぼすと予想されるか。

A. そもそも戦争の目的と出口が不明確だった。トランプ特有の脅しや恐喝は、イランにはまったく通用していない。トランプが48時間以内にホルムズ海峡を開放しなければイランの発電所を空爆するとの通告から後退したことも、代表的な例だ。ネタニヤフに引きずられた戦争の結果だ。ルビオ国務長官は今月2日、イスラエルがイランを攻撃すればイランが中東の米軍基地を攻撃するため、米国も先制的にイランを攻撃したと述べ、イラン戦争がイスラエルに引きずられた戦争であることを認めた。ネタニヤフはイラン戦争によって、ガザ戦争を触発した安全保障の失敗、収賄などの汚職疑惑、そしてガザ戦争で戦犯容疑がかけられていることによる国際刑事裁判所(ICC)の令状発行など、国内外での責任追及から逃れようとした。

 しかし、イラン戦争は米国内でネタニヤフとイスラエルの責任論を強めている。ガザ戦争の残虐な遂行は、米民主党と若い有権者の間でイスラエルに対する反感を非常に高めており、2025年末の世論調査では、45歳以下の共和党支持者の多数がイスラエルに対する軍事援助の縮小を支持していることが明らかになった。トランプはこの戦争でMAGA陣営の亀裂という代償を払っている。MAGA陣営もまた、イスラエルに責任を問うことで自らの正当性を確保しようとするだろうとエコノミストは指摘している。

チョン・ウィギル|国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/arabafrica/1250822.html韓国語原文入力:2026-03-24 14:29
訳D.K

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