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イラン侵攻が切り開いた各自生存の時代【朴露子の韓国、内と外】

登録:2026-03-26 09:05 修正:2026-03-28 07:26
イラストレーション、キム・デジュン//ハンギョレ新聞社

 筆者にとってカタールやドバイは馴染みのある地名だ。職業柄、一年に数回はヨーロッパと東アジアを往来しなければならないが、これまでカタールのドーハ空港やドバイ空港を経由して韓国・中国・日本を行き来するケースが多かったからだ。後発国の利点と言えるかもしれないが、これら二つの空港のデザインや施設、そして時間を厳守するフライトなどはヨーロッパよりはるかに優れていた。世界資本主義の新興資本が蓄積される中心地であることを実感させられた。ところが、現在これらの湾岸地域の空港については、ドローンやミサイル攻撃の被害、フライトのキャンセル、空港に足止めされた乗客の悲惨な情報だけがニュースで取り上げられている。それを見ながら、一つの時代が2026年2月28日をもって幕を閉じたことを直感した。

 このような話をすると、米国の他国への侵略がそこまで珍しい出来事なのかと反論する人もいるだろう。もちろん「米国の侵攻」自体は、米国中心の国際秩序の有機的な一部とみなすことができる。1991年以降、米国が自国領土外で行ったすべての軍事介入事例は、なんと251件に達しており、こうした介入は毎年継続的に起きている。大規模な軍事介入だけでも、1945年以降少なくとも30件に上る。米国の覇権は、定期的な武力行使を前提として成り立っている。にもかかわらず、今回のイラン侵攻は、世界史的な分水嶺といえるほど特別なものだ。1945年以降、同様の事例がほとんど見当たらないからだ。

 本来、米国が侵攻の対象としたのは、防衛能力が不十分か、低下している国々だった。それだけ米国は資金の無駄遣いと自国兵士の犠牲を最小限に抑えようとしてきた。1991年以降に米国が侵攻した国々を見ると、内戦中のソマリアやセルビア、イエメン、シリア、リビアなどの小国が大半を占めている。反撃能力を備えたイラクのような国を侵攻する際も、米国は下位パートナーを参戦させ、自国の負担を最小限にとどめた。イラク侵攻の際、米国は大韓民国を含む48の「侯国」を従え、アフガニスタンを侵攻した際は北大西洋条約機構(NATO)の指揮下で51カ国が動員された。これらの侵略は対象国を荒廃させ、時には米国自体にも大きな犠牲をもたらした。代表的な事例であるベトナム戦争の際も、米国の主要な侯国である韓国と日本が巨額の戦争利益を手に入れるなど、米国覇権の主要な手段である米国中心の「同盟」体制はむしろ強化された。

 このように、力のない相手を選び、世界経済の資本・物流の流れを妨げない範囲内で作戦を展開し、大規模な侵攻時には多数の下位パートナーを動員して、世界の主要地域を網羅する同盟体制を強固にすることが、覇権国家米国の典型的な「侵略手法」だった。ところが、今回のイラン侵攻はそれとは全く異なるパターンを示している。まず、イランは決して弱い相手ではない。総人口は韓国の1.8倍、総面積は韓国の16倍に達し、軍事力の順位は世界で16位に当たる。米国には比べものにならないし、イスラエルより弱いとしても、イラクとは異なり、容易く地上部隊の投入に踏み切れる国ではない。軍事力も決して侮れないが、イランは地理的にも世界的なエネルギー供給網を容易に撹乱できる位置にある。これにより湾岸諸国は直接的な被害を受け、ヨーロッパと東アジアの韓国・日本は原油価格の急騰により深刻な間接的被害を被ることになる。すなわち、過去の侵略とは異なり、今回の事態は世界資本主義体制の利益創出を脅かし、米国という主導国と地域的な侯国との格差をさらに広げている。戦争の主な挑発国のイスラエルを除けば、米国の侯国たちがこの戦争に消極的な態度を示すのもこのためだ。

 実はドナルド・トランプ政権以降、米国と侯国の関係はすでに深刻に歪んでいた。東西を問わず、米帝国の侯国たちは一方的な高関税に苦しみ、特に米国の欧州の下位パートナーたちは、グリーンランドに対するトランプの領土的野望に青ざめ、NATOの解体まで覚悟しなければならなかった。そのうえ、今回の侵攻はこれまでとは次元が異なる。高油価により欧州と韓国・日本は成長の鈍化を余儀なくされ、ほとんどの湾岸諸国はかつてのように「安全な投資先」として外資を呼び込むことがはるかに困難になるだろう。下位パートナーの利益を低下させ、危険に陥れるトランプ大統領の米国は、まさに自ら覇権国家の地位を放棄するのと同じだ。覇権国家の本質は、世界の資本主義体制全体を体系的に管理することにあるが、トランプ政権は「体系的管理」に関心もなく、そうした能力も持ち合わせていない。彼らは「管理」ではなく、破壊と混乱だけを増幅させている。

 トランプ政権が何のためにこの無謀な侵略で世界を混乱に陥れたのかは、実はまだはっきりしていない。高油価は米国の石油大手にとっては有利かもしれないが、ガソリン価格の急騰は政治家のトランプ大統領にとっては極めて不利だ。結局、グローバリゼーションの被害者を欺くような論理で扇動し登場した米国の極右政権が、イランに対して極めて好戦的なイスラエル政権などの「圧力」に耐え切れず、米国の長期的な国益に反する開戦決定を下したとみる余地も十分ある。そうなると、米国政府は世界体制はもちろん、自国の外交・軍事さえも適切に管理する能力がないということになる。このような状況で覇権を維持することは果たして可能だろうか。

 1914年の第一次世界大戦の開戦は、1871〜1914年の「ベル・エポック」、すなわちグローバルな貿易と投資が繁栄した第一次資本主義的グローバリゼーションの「美しき時代」を終わらせた。トランプ大統領のイラン侵略は、たとえ名実ともに世界大戦に至らなくても、最終的には世界史的に同等の分水嶺となるだろう。過去と同様に、世界体制の中心国だった米国はもはや存在せず、戻ってくる可能性もほとんどない。世界秩序とは、いまや各々が活路を図る大小の国民国家の組み合わせに過ぎない。米国以降の世界で、韓国が米国に左右されない経済・外交・安全保障をどのように構築していくのか、米国との垂直的な関係ではなく、どのような水平的パートナーシップを築いていくのか、本格的に考えなければならない時期になった。米国との同盟や米軍駐留がすなわち「安全保障」を意味する時代はすでに過ぎ去り、我々が今迎えた新しい世界では、米国との安全保障関係はむしろ「リスク要因」となり得る。

//ハンギョレ新聞社
朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov)|ノルウェー・オスロ大学 教授(韓国学)(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1250921.html韓国語原文入力:2026-03-25 07:06
訳H.J

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