日帝強占期(日本による植民地時代)に朝鮮人の強制動員が大規模に行われた日本の新潟県佐渡鉱山(「佐渡島の金山」)の世界遺産登録と関連し、これまで反対していた韓国政府の態度に変化が現れたという日本メディアの報道が出た。強制動員賠償や福島原発汚染水、LINE問題など日本との懸案に対して特に消極的な対応を取ってきた尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が、露骨な「歴史歪曲」を含む佐渡鉱山の世界遺産登録についても譲歩するのではないかという懸念が高まっている。
産経新聞は11日付で、「世界遺産委員会の審議は、通例では全会一致で決まる。焦点となるのは、委員国を務める韓国」だとし、「一昨年5月に日韓関係改善に前向きな尹錫悦政権が誕生したのを機に、韓国側の態度に変化の兆しが生まれた」と報道した。そして、ユン・ドクミン駐日韓国大使の最近の発言を取り上げた。
12日、駐日韓国大使館と日本メディアの報道によると、ユン大使は先月4日、新潟県で花角英世県知事と面会し、佐渡鉱山で朝鮮人の強制動員が行われたという事実に触れ、「マイナス(否定的)の歴史もある。全体の歴史をそのまま表示する必要がある」と述べた。その一方でユン大使は現地の日本の記者団に、佐渡鉱山の世界遺産登録について「絶対反対ではない。ウィンウィンとなれる解決策に知恵を出す必要がある」とし、「(佐渡鉱山は)世界遺産に登録しても良いくらい非常に立派なところ」だと強調する場面もあった。
産経新聞は、自民党の関係者が「今回(佐渡鉱山の登録に)失敗するわけにはいかない。登録は今をおいてほかない」と強調したとし、「今後の改選で中国が委員国入りすれば、登録に反対する可能性も指摘されている」と報じた。日本では、佐渡鉱山の世界遺産登録に韓国は大きな影響を及ぼさないと認識されているということだ。
日本で「韓国の態度変化」が取り沙汰されているのは、尹政権が前任の文在寅(ムン・ジェイン)政権だけではなく、2015年の朴槿恵(パク・クネ)政権に比べても世界遺産登録問題をめぐる対応が消極的であるからだ。
文政権時代は政府レベルで「日本の世界遺産における歴史歪曲」に問題を提起し、強硬な対応を取ることでかなりの成果をあげた。ユネスコ世界遺産委員会は、日本が2015年7月「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」を世界遺産に登録した当時、端島(軍艦島)など23カ所のうち7カ所で朝鮮人の強制動員があったが、このような歴史をきちんと知らせていないとして「強い遺憾」を表明した決定文を2021年7月に採択し、誠実な履行を求めた。文政権は2022年2月、日本の佐渡鉱山の世界遺産登録推進についても歴史歪曲を明確に指摘し、「直ちに撤回すべき」、「ユネスコなど国際社会と共に断固として対応していく」と強硬姿勢を示した。保守政権である朴槿恵政権も、軍艦島など世界遺産登録問題に死活をかけて対応した結果、2015年7月に日本政府が初めて「韓国人等の強制労役」を認め、「犠牲者を記憶にとどめるための適切な措置を取る」という約束まで取り付けた。
ところが、尹政権が発足してから雰囲気が変わった。日本政府がユネスコで公におこなった約束を9年間守らず、むしろ「歴史歪曲」を強めたにもかかわらず、尹政権の消極的な対応で、昨年9月の世界遺産委員会の勧告文からは日本に対する批判がほとんど削除された。
佐渡鉱山が世界遺産に登録されるかどうかは、7月21日から31日までインドのニューデリーで開かれるユネスコ世界遺産委員会で決まる。日本の与党自民党は、佐渡鉱山のユネスコ登録に向け、各国に対するロビー活動を強化している。自民党は「佐渡島の金山世界遺産登録実現プロジェクトチーム」を設置し、すでに16カ国の駐日大使館に協力を要請した。各国の大使は「しっかり本国に伝達する」と返答したという。新潟県の花角知事は昨年11月に続き先月、ユネスコ本部があるパリで広報に乗り出した。
尹政権はユネスコの規定が韓国に有利に変わったにもかかわらず、積極的に活用できずにいる。2021年7月に新しく導入された世界遺産条約履行のための作業指針には、他の国との潜在的対立を避けるため、十分な対話を求めている。韓国が日本の歴史歪曲を問題視して最後まで反対すれば、対話が十分になされなかったとみなされ、登録が見送られる可能性がある。特に韓国は昨年、世界遺産委員会の委員国に選出され、登録過程で積極的に発言できるチャンスも得た。日本も2021年に選出され、来年まで活動する予定だ。
日本政府は昨年1月、佐渡鉱山の世界遺産登録を申請する際、日帝強占期の朝鮮人強制動員問題を避けるため、対象期間を戦国時代(1467~1590)末から江戸時代(1603~1867)に限定する姑息な手を使った。だが、佐渡鉱山では1939年2月から約1500人余りに達する朝鮮人が強制動員され、過酷な労働に苦しめられたという事実が具体的な資料と証言で立証されている。
韓国外交部は12日「日本の佐渡鉱山の世界遺産登録推進と関連して、韓国政府は強制動員された韓国人労働者に対する事実を反映せよという一貫した要求を伝えてきた」という立場を示した。
外交部当局者は「日本が佐渡鉱山を世界遺産に登録するためには、強制動員を含め全体の歴史をきちんと表示しなければならないというのが(韓国の)一貫した立場であり、それは全く変わっていない。日本が佐渡鉱山全体の歴史の中で一部だけ切り離して登録しようとすることには同意できず、強制動員の歴史を含めてきちんと明らかにすれば反対しないという立場にも変わりがない」と述べた。
日本が2015年に端島(軍艦島)を世界産業遺産に登録し、強制動員の歴史をきちんと明らかにすると国際的に約束したことを守っていない状況で、佐渡鉱山の登録を推進することも問題だ。これに対して外交部当局者は「その部分は引き続き解決していくために、韓日間で協議を行っている」と述べた。韓国政府が韓日関係を優先して、佐渡鉱山の登録を支持する方向に立場を変える可能性については、「韓日関係の改善と関係なく、歴史問題や独島(トクト)、教科書などの懸案に対する韓国の原則を変えたり譲歩したりするつもりはない」と強調した。