イスラエル軍が12日夜(現地時間)、パレスチナのガザ地区の住民の半分に当たる人数に対し退避するよう通告した。ガザ地区内の地上軍進入が迫っていることを示唆したものだが、ガザ地区を統治する武装組織「ハマス」は「偽りの宣伝戦」だとして、住民たちの退避を阻止した。
イスラエル軍は、7日にハマスの奇襲攻撃で始まった武装衝突から6日目を迎えた同日、声明を発表し、「ガザシティ内のすべての民間人に自らの安全と保護のため24時間以内に南に退避することを勧める」と述べた。
イスラエルは「(ガザ地区の中心都市である)ガザシティはこれから軍事作戦が行われる区域」だとし、「地図から見て、ワディ・ガザ以南の地域に移動せよ」と通告した。さらに 「あなたたちを人間の盾に使うハマスのテロリストから離れるべき」としたうえで、「今後数日以内にガザシティで持続的に大規模な作戦が繰り広げられるだろう」と予告した。
イスラエルの今回の退避通告は、イスラエル地上軍のガザ地区への進入が迫っていることを示す措置とみられる。これに先立ち、イスラエル軍は地上軍のガザ地区への進撃について「まだ政治指導者たちの決定が下されていない」とし、ハマスを狙った地上作戦を準備していることを明らかにした。実際、イスラエルは36万人規模の予備軍を召集するなど、大規模な軍事作戦を予告してきた。
国連は、今回の退避通告の対象地域に住む住民は110万人だとし、これはガザ地区全体の人口220万人の半分に当たり「人道上の破滅的な結果を招くことなく、このような大規模な移動が実現可能だとは思えない」と批判した。世界保健機関(WHO)は重症患者にとって今回の退避通告は死刑宣告に他ならないと批判した。
ハマスはイスラエル軍の発表後、「おぞましい心理戦に立ち向かって断固として対処し、家にいてほしい」と住民たちに退避しないよう呼びかけた。「DPA通信」によると、ガザ地区の保安当局者は「北部地域から退避する道が閉ざされるだろう」と話したという。同通信は、ハマスが一部住民の退避を妨げて北部の方に戻るよう命令したと、目撃者の話として報じた。
住民が南に向かったとしても、ガザ地区を離れることはできない。南から外国に向かう唯一の道はエジプトとつながるラファフ検問所を通ることだが、エジプト政府はラファフ検問所からパレスチナ難民を受け入れることはできないという立場を示している。
イスラエル軍は前日夜にもガザ地区のあちこちに空襲と爆撃を続けた。イスラエル軍は7日のハマスの攻撃以来、これまで爆発物4000トン分の爆弾6千発をガザ地区に投下したと発表した。また、ガザ地区からは5000発以上のロケット砲がイスラエルに発射されたと伝えた。
死傷者も増えている。 イスラエルでは少なくとも1300人が死亡した。ガザ地区では1530人余りが死亡し、このうち3分の1が子どもだとパレスチナ保健省が明らかにした。双方を合わせると死亡者だけで2800人に達しており、死傷者は1万人をはるかに超えた。
ガザ地区ではイスラエル軍の封鎖が続き、住民たちが食べ物と水、そして電気と燃料不足に苦しんでいる。国連によると、住民42万3000人がイスラエルの空襲を避けて自宅を離れた。一部は国連が運営する学校などに避難しており、また一部は住民たちが退避したことで空襲から比較的逃れられる町を探し回っている。
ガザ地区唯一の発電所は11日に稼動を止めており、ガザ地区は夜になると完全な暗闇の世界へと変わる。病院は電力と医療品不足で事実上稼動が止まり、安置室では収容し切れない遺体があふれている。
イスラエル軍は空襲前に住民に通告し、退避する時間的余裕を与えていると主張している。しかし、イスラエル軍は、ハマス隊員が隠れていそうな建物だけを狙うよりは、疑わしい区域全体を爆撃する新しい戦術を駆使しており、民間人被害も増えている。AP通信が報じた。
イスラエル軍が2014年のガザ戦争以来初めてガザ地区に進入することになると、より大きな人命被害は避けられないものとみられる。イスラエルは地上軍が直接ガザ地区を捜索し、ハマス隊員を探し出し、人質を救出できると期待している。しかし、市街戦が展開される場合、すでにここに多くの非常陣地と通路を確保しているハマスとの交戦で、双方で少なからぬ人命被害が発生するものと予想される。