国際原子力機関(IAEA)が福島第一原発汚染水の海洋放出の安全性と関連し、「国際安全基準に合致しており、人体や環境に対する影響は無視できるもの」だとして、海洋放出にお墨付きを与えた。日本政府はこれを根拠に今夏中に133万トンの放射性物質汚染水を30~40年間海に放出する作業を始めることになる。しかし、国際社会と日本国内の反対世論が依然として強く、放出が始まった後も反発は簡単には収まらないものとみられる。
IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は4日午後、東京の首相官邸を訪れ、日本の岸田文雄首相に汚染水の海洋放出の安全性などを検討した最終報告書「福島第一原発における多核種除去設備(ALPS)処理水の安全性レビューに関する包括的報告書」を提出した。IAEAは129ページに及ぶ報告書で、「ALPS処理水の海洋放出へのアプローチ、並びに東電、原子力規制委員会及び日本政府による関係する活動は関連する国際的な安全基準に整合的である」との判断を示した。また「東電が現在計画しているALPS処理水の海洋放出が人及び環境に与える放射線の影響は無視できるものと結論付けた」とした。岸田首相は「国際社会の責任あるリーダーとして、日本及び世界の人々の健康や環境への悪影響のある放出を認めることなく、引き続き科学的根拠を基づき高い透明性を持って国内外に丁寧に説明していく」と述べた。
日本政府は2021年4月、汚染水の海洋放出を閣議決定し、IAEAに安全性の検証を要請した。同報告書はこれを受けIAEAが昨年4月から今年5月まで発刊した6つの報告書をまとめたもの。IAEAは先の中間報告書でも海洋放出の安全性について「問題はない」という見解を示しており、最終報告書にも同じ結論が盛り込まれるとみられてきた。そのため、「放出を認める」という結論ありきで書いた報告書という批判もある。
グロッシ事務局長はこれを意識したかのように東京の日本記者クラブで開かれた記者会見で、「IAEAの安全性検討は放出段階でも続く。福島原発に(この作業を担当する)事務所を開設する予定」だと述べた。また、反対世論が強い韓国(7~9日)、ニュージーランド、クック諸島を訪問する目的を問う質問に対しては、「(汚染水の放出について)包括的・中立的・客観的・科学的評価が必要だ。多様な意見に対応することが私の責務」だと強調した。
IAEAの最終報告書でお墨付きをもらったことで、日本政府は岸田首相が決断すれば、いつでも海洋放出ができるようになった。岸田首相は同日午前、自民党役員会議で「政府を挙げて、安全性確保と風評対策の徹底、地元や国際社会に対する丁寧な説明・情報発信を行なっていく」と述べた。汚染水が海洋放出されれば、当初の計画通り浄化と排出が行われるのか▽これに対する透明な情報公開が行われるのか▽人体と生態系に及ぼす影響を調べるモニタリングが徹底的に行われるのかなどに対する監視が必要になるとみられる。
同日、汚染水の海洋放出に立ちはだかる「最後の障害物」が除去されたが、韓国政府はこれについて立場を表明していない。中国外交部は「この報告書では日本の正当性と合法性を証明できない」とし、反対の意思を明らかにした。