ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ戦争の敗戦を自分の政権の「存立の脅威」とみなし、核兵器を使用する可能性があるという米情報機関の見通しが示された。
米情報機関を総括する国家情報局(DNI)のアブリル・ヘインズ長官は10日(現地時間)、「戦争で負けていると認識した場合」、プーチン大統領が「存立の脅威」に直面したと判断する可能性があると述べた。「存立の脅威」はウクライナに侵攻したロシアが核兵器の使用を検討しうる条件だと繰り返し表明してきた状況だ。
ヘインズ長官は同日、上院軍事委員会聴聞会でこのように明らかにし、「北大西洋条約機構(NATO)が介入したり、介入しようとする場合」にもプーチン大統領は敗戦を予想し、「存立の脅威」とみなすという見通しを示した。またプーチン大統領が核兵器に手を出す前に、状況を激化させる多くの行動を取るなど、これまでとは違うシグナルを送ると予想した。そして、大陸間弾道ミサイルや重爆撃機、戦略潜水艦の分散を伴う大規模な核兵器の使用訓練がこのような「シグナル」になりうると説明した。また、プーチン大統領は米国とその同盟国のウクライナに対する追加支援を牽制するため、引き続き核兵器の使用をちらつかせるだろうとも述べた。
ヘインズ長官は、戦争が長期化し、流血が深刻化するとも見通した。そして、ロシア軍が現在ウクライナ東部と南部に集中するのは、戦争目的の恒久的な縮小ではなく、「臨時の戦術」である可能性が非常に高いと述べた。プーチン大統領はドンバス地方と周辺の緩衝地帯の占領を狙っており、クリミア半島への水資源供給路ルートを確保するため、ヘルソンを掌握し続けるだろうと予想した。ウクライナの隣国モルドバの親ロ分離主義地域であるトランスニストリアまでつなぐために、ウクライナの黒海沿岸を東から西へと占領していこうとする兆しも現れていると指摘した。
同日の聴聞会に出席した米国防情報局(DIA)のスコット・ベリア長官も、戦況が膠着状態に陥り、双方が突破口を見いだせず、戦争が長期化する可能性があると見通した。また、ウクライナ戦争を「特別軍事作戦」と呼ぶプーチン大統領が正式に戦争を宣布し、ロシア軍に全面的な召集令を下した場合、軍事的バランスがロシア側に傾くと予想した。