ロシアが31日(現地時間)、西側諸国に対してガス代金を自国通貨のルーブルで決済するようにする措置を強行した。今回の措置は、西側諸国に対する制裁というより、ルーブル価値の下落を防ぎ、自国の主要銀行を西側の追加制裁から保護するための措置に近いとみられている。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は同日、非友好国の場合、4月1日からロシアのガス代金をルーブルで支払うように求める大統領令に署名したと、ロイター通信などが報じた。プーチン大統領は「非友好国の購入者が新しい決済条件を履行しなければ、ガス供給契約を中止する」と警告した。そして、すでに合意したガス供給規模と価格は維持されると付け加えた。
今後、欧州などのガス購入者は、ロシア国営エネルギー企業「ガスプロム」の金融子会社「ガスプロムバンク」に特別外貨口座やルーブル口座を開設しなければならない。ガス購入者たちが決済代金をドルやユーロなどで同行の外貨口座に送金すると、銀行はルーブルに両替して購入者のルーブル口座に振り込むことになる。スプートニク通信の報道によると、このような決済方法はガス管を通じて供給されるガスにのみ適用されるという。
英オックスフォードのエネルギー学研究所のジャック・シャッフルズ研究員は、ロイター通信に対し、「大げさに聞こえる措置だが、コップの中の嵐となった。ガスプロムバンクを取引代金の換金機関に指定することで、同行が追加制裁を受けないよう保護するため」だと分析した。西側諸国が支払った代金を為替市場でルーブルに換金させることで、ルーブルの価値下落を防ぐ効果も予想される。ルーブルの為替相場は、ロシアのウクライナ侵攻前までは1ドル=75ルーブル程度を維持していたが、侵攻後、西側の制裁が続き、3月初頭、一時143ルーブルまで高騰した。ロシア政府がガス代金のルーブル決済方針を明らかにしたことを受け、ルーブルの価値は早いテンポで上昇し、現在は82ルーブルの水準を保っている。
ドイツやフランス、イタリアなどの欧州諸国は、ルーブル建て支払いの要求は、「契約違反であり脅迫だ」と反発した。ドイツのオラフ・ショルツ首相は「今後もユーロやドルで支払い続ける」と述べた。ロベルト・ハーベック経済相も「プーチン大統領に脅迫されないというシグナルを送ることが重要だ」と述べた。フランスのブルーノ・ルメール経済相は「ドイツと共にロシアがガス供給を中止する時に備えている」と明らかにした。イタリアのマリオ・ドラギ首相は、ロシアのガス供給は中止されないと思うとし、「私の判断が間違っているかもしれないが、少なくとも私が理解する限り、決済方法の変更はロシア内部の問題」だと述べた。
欧州諸国はロシアのガス供給中止に備え、代替輸入先の確保に乗り出しているが、国際ガス供給がギリギリの状況であるため難航しているとロイター通信は指摘した。
一方、欧州復興開発銀行(EBRD)はロシアの今年の国内総生産(GDP)が昨年より10%減少するとの見通しを示した。同行は、ロシアのウクライナ侵攻前は、ロシアの今年の成長率を3%と見込んだ。同行はまた、ウクライナの今年の成長率がマイナス20%まで下がると予想した。