中東がまたも沸き立っている。中東を訪問した米国のドナルド・トランプ大統領が13日(現地時間)、サウジアラビアのリヤドで行った演説を聞いてみよう。
「この偉大な変化は、西洋の干渉主義者から来たのではなく、(…)リヤドやアブダビの光輝く大理石は、数兆ドルを費やしてもカブールやバグダッド、その他の多くの都市を開発することに失敗したいわゆる国の建設業者、ネオコン、自由主義の非営利団体によって作られたのではない。(…)国の建設業者は、彼らが建設したよりも多くの国を滅ぼし、干渉主義者は自分たちでさえ理解できない複雑な社会に干渉した。(…)平和、繁栄、進歩は、あなたたちの遺産に対する根本的な拒否ではなく、あなたたちが崇高に愛する国家的伝統と遺産を包容するところから生まれ、あなたたちだけが成し遂げることができる。(…)私は永遠の敵がいるとは決して信じない。私は多くの人の考えとは違う。私は永遠の敵というものは好きではない。(…)イランとの妥結を望む。(…)西洋は欧州でのもう一つの終わりのない戦争に自らを巻き込んではならない。(…)過去数年間、多くの米国大統領が外国指導者の魂を調査し、彼らの罪を裁くことに米国の政策を使うことが自分の仕事だという観念に苦しめられた。…裁きは神の仕事だと信じている」
進歩的社会主義者の演説を聞いているのかと思った。もちろん、演説の随所に、金にしか目のない特有の俗物根性と誇張、恐喝、脅迫があふれている。だからこそ、トランプ大統領の米国が取る対外政策の二重的哲学を赤裸々に示している。イラク戦争とアフガニスタン戦争を引き起こしたネオコンや、それらの戦争を支えた自由主義者のように、価値と理念を掲げて海外の問題に干渉することはやめるという。
もちろん、彼が平和の使徒であるからではない。金にならないとみているからだ。とにかくトランプ大統領は、もう金にならない戦争はしないと言う。そのため、トランプ大統領は今回の歴訪で、米国の最大の同盟国であるイスラエルを飛ばした。フーシ派と休戦した。アルカイダ出身のシリアのアフマド・シャラア臨時大統領と面会し、シリアに対する制裁を電撃的に解除した。そして、イランとの外交的妥結を強調した。
しかしながら、中東ではいまもなお戦争が、それも、民間人を閉じ込めて一方的に虐殺するガザ戦争が進行中だ。トランプ大統領が歴訪中におこなったことは、イスラエルが反対したことだ。そのためか、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ極右政権は、トランプ大統領の歴訪前にガザ地区の占領を公式目標に掲げた「ギデオンの戦車作戦」を発表し、トランプ大統領の歴訪中は連日ガザを猛烈に爆撃した。トランプ大統領の歴訪が終わると、ギデオンの戦車作戦を開始した。また、ガザ住民のパレスチナ越境の条件を緩和した。戦争初期からの計画である住民追放に続く、ユダヤ人入植地化が始まった。イランの核施設を独自に攻撃する準備に入っている状況が確認されたと、CNNが報じた。
イスラエルは「戦争を拡大すれば、米国は支援せざるをえない」という断固とした戦略を駆使してきたが、ネタニヤフ首相はこれを極端に押し進めている。ネタニヤフ首相にはガザ戦争を終わらせるつもりはない。ガザ戦争を終わらせれば、内閣の極右勢力が離脱して連立政権は崩壊し、汚職疑惑を持たれているネタニヤフ首相は監獄に行かなければならない。
これまでのネタニヤフ首相の暴走に懸念を示していた英国・フランス・カナダが、いよいよ行動に乗り出した。3カ国の首脳は20日、「われわれはネタニヤフ政権がおぞましい行動を継続する間、じっとしてはいない」と警告し、英国はイスラエルとの貿易交渉を中止した。
ガザ戦争はいま、岐路に立っている。イスラエルがガザを完全占領して民族浄化を行い、第2のホロコーストにするのか、さもなければ、ここで中断するのかだ。トランプ大統領もいまや本格的な試練の場に立たされている。米国にまで挑戦するネタニヤフ首相のイスラエルを制圧するのか、制圧が可能なのかの分かれ道にいる。トランプ大統領が、イスラエルを支持する米国内のキリスト教福音主義勢力や強大なユダヤ人コネクションを意識することなく、ネタニヤフ首相を排除してこそ、大統領が言う中東の平和が到来する。トランプ大統領にそれができるだろうか。
トランプ大統領がそれをできないのであれば、ガザは地獄になり、中東紛争は永久に悪化する。中東から手を引こうとしたバラク・オバマ元大統領からの米国の戦略も水の泡になる。トランプ大統領の米国に対する初めての挑戦は中東から、イスラエルから出てきた。トランプ大統領もネタニヤフ首相の言いなりになるのであれば、彼の対外政策における執行力は任期を通じて失墜するだろう。「平和のトランプ」になるのか「紛争のトランプ」になるのか、岐路に立たされている。
チョン・ウィギル|国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )