ソウル中央地検のイ・チャンス地検長とチョ・サンウォン第4次長が、突然辞意を表明した。辞表受理の手続きを経て、大統領選挙前日の来月2日に退職する予定だという。尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領夫妻を守るために検察を失墜させておいて、今になって政権が変わりそうだから急いで逃げ出そうとしているのか。
イ・チャンス地検長は20日、辞意を表明し、「後輩たちのことを考えて(自分に対する弾劾が棄却された後)ひとまず戻って仕事をしなければならないと思ったが、もうある程度は体系が整った」と語ったという。チョ・サンウォン第4次長は「ある程度安定し、もう(検察を離れる)時が来たと判断して決めたこと」だと話したという。恥知らずの発言だ。検察の公正性と中立性を回復できないレベルまで損ねたのに、一体どこが体系が整って安定化したというのか。「後輩たちのことを考えて」という言葉にうなずく後輩がただ一人でもいるだろうか。
イ地検長は城南(ソンナム)支庁長時代に、共に民主党のイ・ジェミョン大統領選候補が京畿道知事に在職していた当時、城南FC後援金事件を捜査しており、全州(チョンジュ)地検長時代は文在寅(ムン・ジェイン)元大統領の娘ダヘ氏に関する捜査をするなど、ひたすら尹前大統領のために政敵をつぶす政治的報復捜査に邁進してきた。その功績が認められ、ソウル中央地検長に栄転した。栄転した後は、尹前大統領夫人のキム・ゴンヒ氏のブランドバッグ受け取りと株価操作疑惑に対し、いずれも嫌疑なしの決定を下した。チョ・サンウォン第4次長が率いたキム氏のドイツモーターズ株価操作事件は、ソウル高等検察庁の再捜査の決定により、検察内でも嫌疑なし処分に対する判断が覆された。彼らは、当時イ・ウォンソク検察総長がキム・ゴンヒ氏に対する出頭要請を指示したにもかかわらずこれを無視し、検事が携帯電話を押収された状態でキム氏の元まで出向いて聴取を行う、いわゆる「皇帝取り調べ」で検察の威信を地に落とした張本人だ。
彼らが辞表を出した理由は、政権が変わった後に始まる監察から逃れるためとみられる。検事懲戒法によると、法務部長官は検事が退職を希望した場合、先に懲戒理由があるかを最高検察庁に確認しなければならず、ひとまず監察が始まれば退職できない。監察の結果、懲戒を受ければ弁護士法により解任の場合3年、免職は2年間、弁護士として開業ができない。特定の人に対する忠誠の見返りとして個人的栄達を享受し、組織をだめにしたうえ、今度は弁護士として開業ができないことを恐れて逃げるのではないか。
パク・ソンジェ法務部長官は先日、法務部監察官と最高検察庁監察部長に現職の検事を任命し、「先占人事」を完了した。次期政権の監察を無力化することが狙いだ。ならば、捜査で真実を明らかにし、公権力の私有化に対する責任を問わなければならない。