韓国経済が「停滞」していることを韓国銀行が公式に認めた。企画財政部が韓国経済の成長の「鈍化」を公式に認めてから半年。「鈍化」にとどまらず「停滞」という単語が出てくるほど、最近の韓国経済は悪化している。もちろん心理的には、1997年の通貨危機以降の韓国経済はいつも悪い状態だったように思う。だから「停滞」というオオカミが現れたと言われても、羊飼いの少年の言葉のように特に感慨もなく聞こえるかもしれない。
ピンチをチャンスにした韓国経済
しかし通貨危機の克服後、韓国経済は目覚ましい成長を遂げた。経済指標だけを見れば「第2の漢江の奇跡」と言える。国内総生産(GDP)は、1998年には3800億ドルだったのが、2020年には1兆6000億ドルを超えた。実に330%増だ。同期間の経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均のGDP伸び率は104%に過ぎない。デジタル革命を主導し「一人成長」と言われる米国のGDP伸び率も130%だ。欧州の製造業大国ドイツは70%、英国は64%、日本は26%にとどまる。
量的成長だけではない。韓国の質的成長はさらに目覚ましい。2000年の韓国のGDPに対する研究開発(R&D)費支出率は、OECD平均に満たなかった。しかしこの20年間の研究開発費支出の比率は、米国と台湾を大差で引き離し、イスラエルとのツートップ体制を確固たるものにしている。2000年の韓国の社会福祉支出額はGDPの4.4%で圧倒的な最下位だったが、12%にまで増えている。
2000年代の目覚ましい成長の秘訣とはいかなるものだったのだろうか。幼少年人口は減っていた一方で、まだ高齢者人口は多くなかったため、生産年齢人口が黄金期を迎えていたことも、理由の一つだろう。さらに、2000年代にようやく韓国の財政が整備され、役割を果たしはじめたということを強調したい。
韓国財政の基礎は、2006年に国家財政法が制定されたことで整いはじめた。韓国の財政が資源配分の効率性、公平性、景気調整などの役割をきちんとはたしはじめたのは、この時からだ。実際のところ、1998年の韓国政府の総支出額(OECDによる)は100兆ウォンに過ぎなかった。2020年は660兆ウォンを超える。その増加率はGDPの伸び率をはるかに上回る。まだGDPに対する国の支出規模はOECD平均を大きく下回るが、それでも目覚ましい成長を遂げたのは事実だ。結局、韓国は1970年代には産業化、1980年代には民主化に成功し、2000年以降は国家財政の基礎づくりに成功したのだ。
このような「第2の漢江の奇跡」により、購買力平価の1人当たりのGDPは2018年にすでに日本を追い越している。実質1人当たりGDPも、2027年か2030年かは分からないが、近いうちに日本を追い抜くものと思われた。韓国経済は2008年の金融危機とコロナ禍にも直面したが、危機の時ほどむしろ他の先進国より早く克服した。それこそ「目覚めてみれば先進国」だった。
政府の「へそ曲がり財政政策」
しかし今年の状況は根本的に異なる。国際通貨基金(IMF)が10月に予測した今年の韓国の経済成長率は1.4%だ。米国は2.1%だ。21世紀に入って初めて日本の成長率(2%)を下回った。IMFの示した先進国の平均経済成長率(1.5%)にも満たない。「目覚めてみれば後進国」のような感覚だ。
今年の経済指標を詳しく分析してみよう。経済成長率(GDPの伸び率)とは「消費+投資+純輸出」だ。これらが増えればGDPも伸びる。今年の輸出は第3四半期(累積)までに7.2%増加した。輸入増加率2.9%を大きく上回っている。輸出は思ったより悪くない。問題は内需だ。今年第3四半期までの投資(総固定資本形成)は-0.38%とマイナス成長。消費(最終消費支出)はわずか0.16%増にとどまる。1.6%ではない。消費が3期で0.16%増にとどまるのは非常に異例だ。
結局のところ、最近の景気低迷の主犯は消費と投資に起因する内需の危機だ。第3四半期までの累積消費増加率が0.16%を下回ったことは、過去にあったのだろうか。まさに通貨危機、クレジットカード危機、金融危機、コロナ禍以外はなかったのだ。すなわち、内需は1997年以降、このような危機の時期を除いては着実に増加していた。では、2023年の危機を何と呼べばよいのだろうか。これは外国で始まったわけでもなく、震源地も明確ではない。私はこれを「政府財政危機」と名づけたい。
コロナ禍の場合、民間消費が減少(-6.4%)している時、政府は支出を増やして(2.3%)消費の減少を防いだ。金融危機の際にも民間消費の減少(-2.9%)を政府支出の増加(-5.6%)で緩和したし、クレジットカード危機も民間で発生した問題を政府が鎮火した。
しかし、2023年の経済危機の震源地は民間ではない。ある人は家計負債の増加による民間消費の減少を2023年危機の震源地と評しているが、民間消費は今年第3四半期までの累積で0.84%増となっている。だが政府消費は-1.56%とマイナスで、内需悪化の主犯となっている。今年の民間投資の増加率は0.62%、政府投資は実に-5.63%で、全体の投資増減率は-0.38%だ。結局のところ、2023年の経済危機の主犯は政府であり、このような経済危機は「政府財政危機」と呼ぶべきだ。国家財政の原則は、家計の原則とは真逆だ。家計は収入が増えれば支出を増やし、収入が減れば財布のひもを締めなければならないが、国家財政は内需が振るわなければ支出を拡大し、内需が好調なら支出を減らすというふうに、景気調節の役割を果たさなければならない。
さらに大きな問題は今後だ。2023年の政府支出はなぜ減ったのだろうか。税収が減ったからといって政府は直ちに支出を減らす。そんなことができるのだろうか。国の財政はどんぶり勘定ではない。今年の支出の使途と規模はいずれも2022年末の国会での予算審議ですでに確定していた。与野党はそれこそ極度の政治闘争を通じて、2023年に639兆ウォンを支出することを確定したのだ。任意に支出を減らす根拠はまったくない。税収不足で支出を減らしたいなら、国会に減額補正を要請しなければならない。しかし現政権は、減額補正予算などに対する国会の同意もなしに任意に支出を減らしている。その結果こそまさに2023年「政府財政危機」だ。
とりわけ企画財政部は、23兆ウォンの交付税などを今年は地方自治体に支給しないという。国会が確定した金額を予算の修正すらせずに自治体に支給しない。そんなことができる法的根拠はまったくない。こんなありさまだから、行政安全部は23兆ウォンの交付税の減額を公文書の1枚も出すことなく電話などの非公式な手続きで通知している。しかし、野党は何ら指摘も反応もしていない。景気が厳しいから、せめてすでに国会が確定した金額くらいは政府に忠実に支出してもらうことだけを願うが、それすらも夢のまた夢だ。「目覚めてみれば後進国」になってしまうという感覚が抜けないのはこのためだ。
イ・サンミン|国家財政研究所首席研究委員