THAAD(高高度ミサイル防衛)配備に対する中国の経済報復が続く中で、中国に進出した韓国企業が事業を売却したり構造調整に出るなど限界状況に追い込まれている。巨大な中国市場を攻略しようと進出した企業らが、THAAD報復と“反韓気流”により事業が根幹から揺らぎ、これまでの努力が水の泡になる危機に瀕した。専門家たちは、韓国政府が中国と対話チャンネルを作り問題解決の糸口を見つけなければならないと指摘する。
18日、関連業界の話を総合すれば、THAAD報復で最も大きな被害を被った所は、現地の消費者を直接相手にする流通・自動車・製菓業者らだ。なかでもTHAAD敷地を提供したロッテは直撃弾を受けた。営業停止などで損失が雪だるまのように膨らみ、ロッテマートは運営中の中国店舗112カ所を売りに出した。マート以外のロッテ系列会社も中国事業に対する構造調整を検討中だ。ロッテ関係者は「ロッテマート以外の撤収は考慮していない」としつつも「現地法人の人員縮小など構造調整は検討中」と明らかにした。 一部ではロッテ製菓、ロッテ七星の現地法人も売りに出される可能性があるとみている。
現代・起亜自動車は、中国での販売が“半減”し、“第2のロッテマート”になるのではないかとまで憂慮されている。1~8月の中国内累積販売量(57万6974台)は、昨年同期より44.7%も減った。中国共産党の機関紙「人民日報」の姉妹紙である「グローバル タイムズ」は6日、「現代自動車の中国側パートナーである北京自動車が、合資会社「北京現代」との合資関係を終わらせることまで考慮している」と報じた。北京現代は、現代自動車と北京自動車が半々で持分を投資した。現代自動車関係者は「韓国企業の圧迫をもくろむ中国官営メディアの意図が込められたものと考えられる」として「事業をたたむつもりは全くない」と明らかにした。
食品・化粧品業界も厳しいのは同じだ。オリオンは中国での売上が昨年第3四半期に3484億ウォンだったが、今年第2四半期には1415億ウォンに減った。これに伴い、現地職員1万3000人のうち約20%を減らした。アモーレパシフィックはTHAAD報復の余波などで第2四半期の営業利益が1304億ウォンとなり、昨年同期の半分にもならなかった。LG化学など電気自動車のバッテリーを生産する企業では、中国政府の補助金対象から除外され困難に陥っている。ある企業の関係者は「稼動率が半分水準」とし「巨大な中国市場を放棄できず踏みとどまっている」と話した。
専門家たちは事態解決のために政府の積極的な態度が必要だと語る。ハン・ジェジン現代経済研究院研究委員は「THAADリスクにともなう不安感が高まっているが、民間企業次元では解決する方法がない」として「事実上途切れてしまっている韓中通商・外交当局間の高位級対話チャンネルを急いで構築しなければならない」と話した。また「韓中自由貿易協定(FTA)締結など永く中国市場に精魂を込めてきたのに、ロッテマート撤収のように放棄する企業が相次ぐならば、将来中国市場での損失がさらに大きくなりかねない」と憂慮した。チョ・チョル産業研究院先任研究委員も「両国が高位通商チャンネルで協力する姿を見せるならば、中国の消費者にも『韓国産を再び購入しても別に問題はない』というシグナルを与えることができる」と話した。
だが、THAAD経済報復を世界貿易機構(WTO)に提訴するカードを一旦ひっこめた韓国政府は満足できる対策を出せずにいる。中国政府が来月18日に開かれる中国共産党全国代表大会に集中しているため、今は対話ムードを作るのが容易でないためだ。通商当局者は「中国の政治システムが韓国とは大きく異なるため、韓国のTHAADに関連する対話要求に答えがない状況」と話した。結局、党大会後に中国内の政治的ムードが変われば、両国のサービス市場開放交渉を本格化し、その対話の枠組を契機に事態解決の突破口を見つけようという構想だ。しかし、来年3月までは中国の重要政治日程が続いているため、対話の契機を見つけられずにさらに長期化する可能性もある。
特別な妙案がない状況で、韓国政府は現地進出企業の支援に注力している。生産基地を中国から第3国に移転すれば、海外事業金融保険料の割引などの支援をしている。また、中国に進出した自動車部品メーカーが北米やインドなど代替販路を切り開けるよう発掘・支援する「供給先多角化」政策も展開している。