中国の「THAAD(高高度防衛ミサイル)報復」に耐えられず、ショッピングセンター「ロッテマート」が中国から事実上撤収することを決めた。ロッテマートは最近、売却主管社にゴールドマンサックスを選び、中国内の売り場112カ所の売却作業に着手した。中国の進出企業は全体的に打撃を受けているが、事業撤収の決定はロッテマートが初めてだ。
昨年9月のTHAAD配備地として韓国南東部の星州郡のロッテゴルフ場が指定され、中国はロッテに集中的な報復を始めた。昨年11月からロッテのすべての事業場に対して税務調査をし、消防・衛生点検に乗り出して罰金を課した。3月からはロッテマートの売り場に営業停止処分を下し始め、現在112カ所中87カ所が門を閉め、残りも売り上げが80%以上減少した。また売り場の前で中国人の抗議デモが続き、重装車両でロッテ製品を踏みにじるパフォーマンスの動画までアップされた。ロッテマートは売り上げがすっかりなくなり、人件費などの費用は支出しなければならない状況が続くと年末までの被害額が1兆ウォンに達すると推算している。ロッテマートの撤収決定は、正常な営業が不可能な状態から出た苦肉の策であるわけだ。
ロッテだけではない。韓国企業の被害は雪だるま式に増えている。現代自動車は売り上げが半分になり、アモーレパシフィックやオリオンなどの化粧品・食品企業も営業利益が急減している。中国がTHAAD配備を理由に韓国企業に報復を加えるのは理に適わない幼稚なものだ。THAADは米国が運営の当事者なので、韓国政府の決定だけでは解決が不可能だ。特に北朝鮮の度重なる挑発で韓国政府の動きの幅はますます狭くなっている。このような事情を知っている中国が、韓国企業に無差別報復をするのは行き過ぎた処置に間違いない。国内世論も悪くなっている。中国を世界貿易機構に提訴するなど強力に対応しなければならないという声もあがっている。韓中関係の悪化は両国経済に損失となるだけだ。
韓国政府は世界貿易機構の提訴が状況をさらに混乱させるだけでなく、実効性も落ちると判断している。ややもすると本格的な貿易紛争に広がりかねず、よしんば勝訴しても韓国側が得られるものはあまりないということだ。政府は代わりに「戦略的疎通と協力強化」を通じて問題を解決していく方針だ。韓国企業の鬱憤に充ちた被害を減らせるよう、政府が最善の努力をつくすべき時だ。
登録:2017/09/15 19:07