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「朴正煕政権のセマウル運動は米安全保障戦略の一環」

登録:2015-02-16 22:37 修正:2015-02-21 07:52
ホ・ウン高麗大教授の論文で明らかに
13日、ソウル大学アジア研究所ヨンウォンホールで開かれた韓国冷戦学会創立国際学術大会「韓国の冷戦研究」。韓国冷戦学会提供 //ハンギョレ新聞社

東アジア農村掌握が重大な問題に
戦略村「対共セマウル」全国に建設
最終的な結果は、地域住民による相互監視の構築

 1970年代の韓国のセマウル(新しい村)運動は、米国が安全保障上の利害から進めた東南アジア農村開発戦略と国を超えて影響し合う中で進められたという内容の論文が発表された。13日、ソウル大学アジア研究所ヨンウォンホールで開かれた韓国冷戦学会創立国際学術大会「韓国の冷戦研究」で、ホ・ウン高麗大学韓国史学科教授は、「冷戦と地域社会」という論文を通じてこのように主張した。この研究は、セマウル運動を冷戦史の中に位置させたことで、関連研究の新しい章を開いたという評価を受けた。

 論文の内容を総合すると、韓国のセマウル建設計画は、マレー半島、フィリピン、ベトナムで共産主義勢力の影響力を完全に遮断しようとする米国の安全保障上の利害との関わりの中で展開された。第二次世界大戦後、共産主義勢力が農村を中心にゲリラ戦を繰り広げており、東アジア農村の掌握は戦後世界秩序再編の重大な事案になったからだ。

 1950年代のアメリカの対外活動本部(FOA)と国際協調局(ICA、現国際開発庁(AID))は、東南アジアの農村開発の経験を交流するように支援した。 1958年、米国の国際協調局の支援の下、フィリピンと韓国が地域開発の参考のため相互訪問し、1962年に韓国の軍事視察団が南ベトナムの戦略村建設を視察したのも、このような背景からだ。

 しかし、地域の行政システムを既に備えていた韓国は、住民を移住させることで再定着させた東南アジア諸国とは異なり、部落自体を「対共セマウル」に転換した。 1960年代末から全国の安全保障脆弱地区に「戦略村」を建設し、反共思想が透徹した除隊将兵たちに国有地を配分して防御任務まで任せる方式だった。論文の「忠淸北道槐山(クェサン)郡対共戦略村設置の運営実績」によると、1969年9部落に過ぎなかった戦略村が1971年には58村に増えた。韓国式の戦略村である「対共セマウル」の建設は、1970年代に全国的に展開され、物的な支援や反共啓発教育、監視システムの基盤を構築した。セマウル指導者である里・洞長は「開発の中心」であり「安保の中心」だった。

 ホ教授は、特に共同体の内部における緻密な監視システムを重要視した。観察保護対象者の分類には、デモの主導者、送還された捕虜や拉致されてから帰還した者の家族も含まれており、要視察対象者として「精神病者」の近況を非常に詳細に把握し、報告することになっていた。ホ教授は「”外部の敵”を防ぐ監視システムだけでなく、国の統治システムや規律から逸脱する余地がある人まで潜在的な敵とみなし、監視する支配体制を作動させた」と指摘した。朴正煕(パク・チョンヒ)政権が安全保障のために推進したセマウル建設の最終的な結果は、地域住民による相互監視体制の構築だったというのだ。 「民主主義を排除したまま、国民を監視の対象として国家権力のための安全保障を追求することは、極端な狂気を生む可能性が高い」とホ教授は懸念した。冷戦時代の近代化に対する批判的な省察が伴わないと、国の安全保障という名分でいつでも地域社会と個人が犠牲になれる状況だというのだ。

 韓国冷戦学会は、1989〜90年、ヨーロッパを中心とし冷戦体制が解体された後、関連研究が各国で活発に行われた中で、韓国の特殊な状況と世界史的文脈をつなぎ合わせる研究の必要性に共感した歴史学者や社会学者たちが中心となって設立し、この日最初の会議を開催した。

 ブルース・カミングス米シカゴ大学客員教授はこの日、「冷戦における朝鮮半島の中心性」というタイトルの基調発表を通じて、冷戦時期全体にわたる米国の対外政策において韓国戦争の経験が持つ中心的な役割を強調した。米国が北朝鮮に進撃する「ロールバック」政策が失敗したことが、その後の米国の外交政策に影響を及ぼしたというのである。

 ベトナム戦争を取り上げた『虐殺、その以降』で人類学者のノーベル賞と呼ばれる「ギアツ賞」を受賞したクォン・ホニク英国ケンブリッジ大学教授は「関係」を中心とした韓国の冷戦研究が依然として重要だという意見を明らかにした。彼は1930〜40年代の社会人類学の親族システム研究が明らかにした「親族組織と政治組織は相互に規定する」という命題に言及した。 「朝鮮半島における冷戦の文化史は決して”関係の歴史”を避けては通れない。国と国の勢力争いがどのように兄弟、親子、友人の間の関係に具現されたのかを究明するのは、私たちに残されている課題だ」と指摘した。

 ホン・ソンニュル誠信女子大学史学科教授は、韓国は冷戦の諸現象が爆発的に現れる舞台であることから、韓国の分断史研究が洞察を提供しており、より深い学術的な分析が必要であると提案した。イ・ドンギ江陵原州大学史学科教授は、冷戦の世界史的含意と地域の文脈を一緒に検討する学際的な研究が必要であると主張しだ。

 韓国冷戦学会は、今回の創立学術会議の発起人総会を通じて、1年に2回定例学術大会を開き、毎月コロキウムまたはワークショップを行うことにした。学会運営委員長はチョン・グンシク ソウル大学社会学科教授が担当する。

イ・ユジン記者、写真韓国冷戦学会提供(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.02.16 19:26

https://www.hani.co.kr/arti/culture/religion/678697.html  訳H.J

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