朴槿恵(パク・クネ)大統領がセマウル運動を本格的な汎国民運動へと発展させると明らかにした。 朴大統領は20日 「第2の漢江(ハンガン)の奇跡のためにセマウル運動精神を生かして国民の力を一つに集める契機を用意する時」として「セマウル運動を時代に合わせて変化させ、未来指向的な市民意識改革運動へと発展させていくことを期待する」と話した。
朴大統領が父親 朴正熙元大統領時代の遺物であるセマウル運動を持ち出すのを見れば、複雑でやりきれないことこの上ない。 セマウル運動が農村近代化に寄与したことは事実だ。 だが、10月維新以後、朴正熙独裁体制を支える役割をしたこともやはり明らかだ。 維新時代の冷酷だった国家情報院が再び活発に動いているところに、セマウル運動まで復活するというのでは時計を逆に回すにしてもひどすぎる。
朴大統領はセマウル運動の新しい性格として、市民意識改革運動、共同体運動、創造運動、文化運動、グローバル運動などを提示した。 時代変化に合わせると言いもしたが、21世紀に官主導の市民運動という発想自体が時代錯誤的だ。 市民意識改革運動だけでもそうだ。 セマウル運動を通じて現場中心の創造経済を実現するということだが、いっそ何も言わない方がマシだ。
朴大統領の発言を20日夜、地上波放送3社がいっせいにトップ記事で報道したことも心配だ。 放送3社は国家情報院のツイッター世論操作の実状など国家を揺るがす問題は後によけて先を争っていわゆる‘ティンバクニュース("ティン"という正時の時報に続いて"パク大統領は"で始まるニュース)’を伝えた。 安全行政部が朴大統領の発言を契機にセマウル運動中央会などの主導で各種運動を行うとして出たのも不必要な大げささだ。 何の社会運動であれ官が乗り出せば権力を利用して利権を取り込もうとする灯火に群がる蝶が絡まり雑音が出るに違いない。
朴大統領がセマウル運動まで持ち出すのを見ながら、わが国社会を維新時期に戻そうとしているようで憂慮せざるを得ない。 朴大統領が父親の時代に閉じ込められていて、一歩たりとも前に進めないようで苦々しくなるだけだ。 朴大統領がセマウル運動を高く評価するならば、過去のこととして大切にしまっておく方が良い。 セマウル運動はその時代の使命をつくしたものであり、今は21世紀だ。 流れ去った水で水車を回すことはできない。