「北朝鮮軍捕虜の人権問題を国家人権委員会(人権委)で議論したことは大きな意味があります。韓国外交部もただ時間を引き延ばすだけでは何も解決しません」
国際紛争専門プロデューサー(PD)のキム・ヨンミさん(ドキュアンドニュースコリア代表)が語った。キムさんは昨年10月、ウクライナ西部地域の戦争捕虜収容所でウクライナ軍に捕らえられた北朝鮮軍捕虜2人と面会し、インタビューを行った。これは今年1月に「文化放送(MBC)」の「PD手帳」で2回にわたり放送された。捕虜のLさん(26)とPさん(21)が韓国に行きたいという意思を切実に示したこのインタビューは、視聴者の胸に深く響いた。それから2カ月後の3月23日、この問題が人権委員会全員委員会に正式な議題としてあがった。キムさんにとっては嬉しく感極まる出来事だった。
しかし、人権委員たちはこの日「ウクライナにいる北朝鮮軍捕虜の韓国入国を促す人道措置の勧告」について結論を出せなかった。議案を提出した委員たちは「外交部、統一部、国防部長官と国家情報院長に対し、(北朝鮮軍捕虜の)早期釈放と迅速な大韓民国入国と保護に必要な人道的協議を進めるよう勧告する」という案を提示したが、捕虜の韓国入国の意思と政府との協議過程に関する確認手続きがさらに必要だという反対意見に直面した。被勧告機関の外交部が議題審議前に人権委に対して遺憾の意を示す非公開文書を送ったという事実も明らかになり、「人権委の独立性を侵害した」という論争も起きた。先月27日、ソウル永登浦区汝矣島洞(ヨンドゥンポグ・ヨイドドン)にあるドキュアンドニュースコリアの事務所で、キム・ヨンミPDに会い、人権委員会で議論となっている案件について意見を聞いた。
人権委員会が第三国に抑留された北朝鮮軍捕虜の人道的措置に関する勧告案を審議したのは、2001年の創設以来初めてのことだ。キムさんは人権委員会がこの問題を再び喚起したことに感謝したいと語った。ただし、一部の委員たちが「PD手帳だけを見て捕虜の意思が確認されたとは言い難い」と主張したことについては、もどかしさを滲ませ「非常に残念だ」と語った。様々な努力の末、北朝鮮軍捕虜の生々しい表情と共に「韓国に行きたい」という明確なメッセージを伝えたのに、さらに何が必要なのかという意味だった。外交部は「捕虜が韓国に行きたいと要請した場合は全員受け入れる」との姿勢を示す一方で、彼らの意思を直接確認したかどうかは公表していない。
北朝鮮軍捕虜へのインタビューは昨年10月に行われた。外交部は、キムさんが14日ずつ2回に分けてウクライナに滞在できるよう許可した。これを踏まえて、人権委全員委員会の場で、ある委員は「(PD手帳の)インタビューは外交部の協力なしでは不可能だった」とし、外交部が北朝鮮軍捕虜の韓国入国のため、誠意を尽くしているという趣旨で語った。だが、これは正確な表現ではないとキムさんは説明した。キムさんが北朝鮮軍捕虜にインタビューすることを事前に知らなかった外交部は、ウクライナ政府に抗議の意向を伝えたという。ウクライナ政府はその後、他の韓国メディアが北朝鮮軍捕虜の取材を試みた際に「韓国政府の許可が必要だ」と通知したという。
20年以上にわたり80カ国の海外紛争地域で取材活動を行ってきたキムさんは、「外交部が特別取材許可を出してくれたことには感謝しているが、戦争地域の取材を許可制にするのは憲法で保障された報道の自由を侵害する側面がある。申告制に変えるべきだ」と語った。ロシアとウクライナの戦争の開戦初期に韓国政府が報道関係者のウクライナ本土への入国を許可しなかったため、ロシア側に偏った立場が多数のメディアに伝わる結果となったことについて残念な思いも語った。
北朝鮮軍捕虜インタビューは「ロシアの捕虜は多いのに、北朝鮮軍の捕虜はなぜ少数なのか」という疑問から始まった。ウクライナで出会ったロシア軍捕虜は「戦うより降伏した方がましだ」と語った。この過程で「北朝鮮軍は捕まらないように自爆する」という事実を知った。キムさんが「なぜ自爆するのか」と尋ねると、捕虜のPさんは「朝鮮の兵士はロシアの兵士とは違う。そのような思想(考え)を持っている」と答えた。 捕虜のLさんは「自爆しなかったせいで3代が滅びる可能性がある」と言いながら、手を震わせた。彼らは北朝鮮への送還を「取り返しのつかない死への道」と受け止めていたという。
キムさんは「インタビューでは本質に集中した」と強調した。戦争を巡る論争や南北対立という枠組みを超えて、北朝鮮軍捕虜問題を韓国社会の普遍的な人権課題にしたいという意味だ。キムさんは「文化放送」の「PD手帳」を選んだ理由についても、「(北朝鮮捕虜問題は本来)保守系(報道機関)が好む企画だが、これを革新(進歩)系の番組で取り上げることで、左右のイデオロギー対立に巻き込まれないよう注意した結果だ」と説明した。
しかし、人権委全員委員会の議論の過程では、北朝鮮捕虜問題が陣営対立として映るような様相も見られた。保守的な委員たちはその場で勧告案を可決しようと提案した一方、反対側の委員たちは「確認が不十分だ」などと問題を指摘し、「保留」の立場を取った。幸いにも議題は投票に持ち込まれず、再提出されることが決まった。キムさんは「次回はぜひ人権委員の全会一致で決議されることを望む」とし、「強制力はないが、どの国家機関よりも人権委員会の勧告が重く受け止められる可能性がある。勧告を通じて外交部を突き動かしてほしい」と語った。海外の紛争地域を取材するたびに各国の人権委員会の主要メンバーとそのレベルをチェックしてきたため、普段から人権委員会に関心が高いとも話した。
「外交部がローキーで(密かに)北朝鮮軍捕虜問題について協議することは十分に理解しています。ですが、国民的関心が薄れたら手を引くのではないかと心配です」。キムさんが最終的に望んでいるのは北朝鮮の変化だ。北朝鮮軍捕虜が韓国行きを望んでいるという事実が国際社会に知られた以上、北朝鮮も自国の捕虜を現在のように扱うことはできないと考えている。「2月に発行された『労働新聞』を見ると、捕虜の自爆について言及し、『誰もそうさせた人はいなかった』と書かれていました。その瞬間、北朝鮮当局が私のインタビューを見たと直感しました。北朝鮮だからといって変わらないとは限りませんよね」