韓国警察は、安楽死することを目的として出国しようとしていたことが疑われる60代の男性を、離陸15分前に飛行機を止めて家族に引き渡した。
仁川(インチョン)国際空港警察団は、9日に60代のAさんの乗った飛行機の離陸時間を遅らせてAさんを説得し、家族に引き渡したことを10日に明らかにした。
警察は9日午前9時30分ごろ、Aさんの家族から「父が安楽死を目的として出国しようとしている」という通報を受けた。肺線維症を患っているAさんは、9日午後12時5分発のパリ行きの飛行機に搭乗する予定だった。肺線維症は肺組織が硬くなり、深刻な呼吸障害を引き起こす呼吸器疾患で、完治は難しいとされる。
家族からの通報を受けてAさんの捜索を開始した警察は、午前10時ごろに仁川空港内でAさんを発見。しかし「私は病気だ。フランスへ最後の旅行に出かけようと思っている」とAさんに言われ、警察は出国を止められなかった。
しかし、飛行機の離陸15分前の午前11時50分ごろ、警察に2回目の通報が入った。家族がAさんの置いて行った「すまない」という内容の遺書形式の手紙を発見したのだ。
警察は急きょ、Aさんが搭乗しようとしていた午後12時5分発の飛行機の離陸時間を遅らせ、出国5分前の正午ごろに機内でAさんに会うことができた。
警察は、飛行機から降りたAさんの説得を開始。出動した4人の警官の中で最年長の、Aさんと年齢が近い50代の警官が、1時間ほど一対一で説得にあたった。
Aさんは説得の過程で、パリへ出国した後にスイスに渡る予定だったと明かした。スイスでは、医師が患者に直に薬剤を投与して死に至らしめる安楽死は、韓国と同様に違法となる。しかし、医師が薬を処方し、それを患者が服用して死に至らしめる、医師による自殺ほう助は合法で、外国人にも認められている。Aさんは警察との面談の中で「死ぬ権利も私にはあるのではないか」という趣旨のことを言ったという。
警察の説得の末、Aさんはその日の出国を断念し、家族の元へ戻った。