本文に移動

官職売買、公認や捜査への介入…女王になりたかった尹前大統領の妻キム・ゴンヒ

登録:2025-12-05 00:12 修正:2025-12-05 08:40
[内乱365日] 
キム・ゴンヒ国政壟断…その後はブランド物愛
景福宮勤政殿の玉座、キム・ゴンヒ女史/聯合ニュース、大統領室提供
内乱365日//ハンギョレ新聞社

 国政壟断。国の運営で利益や権利を独占することを指す言葉だ。2016年の大韓民国における国政壟断の共同主体は、朴槿恵(パク・クネ)大統領と陰の実力者チェ・スンシル(後にチェ・ソウォンと改名)氏だった。10年もたたないうちに国政壟断の歴史は繰り返された。今度は大統領の妻が国政壟断の主人公だ。キム・ゴンヒ女史は大統領室の内外で「V0(ブイゼロ)」と呼ばれていた。国民が直接選出した大統領よりも高い地位にあるという意味だ。そのうえ付属室はもちろん、大統領夫人を管理する別の公式の組織もなかったため、彼女は自由に、公然と権力を謳歌した。休業日の景福宮(キョンボックン)を訪れて勤政殿(クンジョンジョン)内部に入り、王の座である御座に座り、宗廟(チョンミョ)の望廟楼(マンミョル)では知人たちと茶を飲んだ。彼女の行動は単なる「女王ごっこ」にとどまらなかった。実際に国政に影響力を行使した。節制しない権力は官職売買へとつながった。キム女史の国政壟断は遠慮なく行われたため、護衛の武士のようだった大統領尹錫悦(ユン・ソクヨル)が倒れると、特検の捜査で真実が明らかになるのは一瞬だった。

■国民の目をブランド物に向けた官職売買

 ミン・ジュンギ特別検察官(特検)チームの捜査開始から42日後の8月12日。尹錫悦前大統領に続いてキム女史までもが法廷拘束され、憲政史上初めて前大統領夫妻が同時に収監された。拘束令状に示された容疑は、ドイツモーターズ株価操作▽選挙における公認介入▽コンジン法師と旧統一教会による請託だったが、キム女史の拘束の決定的証拠は「ヴァンクリーフ・アンド・アーペルのネックレス」だった。

 6200万ウォン台のこのネックレスは、特検チームが今年7月にキム女史の兄のキム・ジヌ氏の義母の自宅を家宅捜索する過程で発見された。特検チームは令状実質審査(拘束前被疑者尋問)で、瑞熙建設のイ・ボングァン会長が述べた「キム女史に6200万ウォン台のヴァンクリーフ・アンド・アーペルのネックレスと2200万ウォン台のグラフのイヤリング、2600万ウォン台のティファニーのブローチを贈り、自分の長女の夫であるパク・ソングン弁護士の公職任命を依頼した」との内容が記された自首書と、実物のネックレスを提示した。無実を訴えるキム女史に対し、判事は令状審査の最後に「(ヴァンクリーフ・アンド・アーペルの)ネックレスを受け取ったことはないのか」と問うと、キム女史は「誰にですか?」と問い返した。受け取ったネックレスは1つではないかもしれないということを強く暗示するものだった。判事は「誰であろうとです」と再び問い、キム女史は「受け取っていません」と否認した。結局、証拠隠滅の恐れがあるとの理由でキム女史は拘束された。

 官職売買疑惑はこれだけではない。特検チームは「楊平郡公興(ヤンピョングン・コンフン)地区開発特恵」疑惑でキム女史の母親のチェ・ウンスン氏の療養院を家宅捜索し、純金で作られた亀の像(金の亀)と共に、イ・ベヨン前国家教育委員長が尹前大統領夫妻に宛てた手紙を発見した。特検チームは、尹前大統領の当選後の2022年4月12日にソウル恩平区(ウンピョング)の津寛寺(チングァンサ)でキム女史とイ前委員長が会い、その場でイ前委員長が国教委員長の資格、役割、意味などをまとめた資料と適格性検討文書をキム女史に直に渡したとみている。特検チームは、キム女史はこの資料を受け取った後、イ前委員長から金の亀などの金品を受け取ったとみて、実際にキム女史が国教委員長の任命に介入した経緯などの究明に力を注いでいる。

 キム・サンミン元部長検事が2023年に総選挙での公認を依頼すると共にキム女史サイドに渡したイ・ウファン画伯の絵「点からNo.800298」も、7月に特検チームがキム女史一家を家宅捜索する過程で発見された。特検チームは、キム女史がこの絵を受け取った見返りとして、キム元検事の2024年の総選挙での公認を支援し、公認脱落後は国家情報院に法律特別補佐官のポストを設けたと疑っている。

■憲法精神を忘却した政教癒着

 キム女史をめぐる疑惑の中でも、宗教団体である旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との「政教癒着」は、政権初期から行われてきた代表的な国政壟断の例だ。事件は、ソウル南部地検がクインビーコインの代表の携帯電話から「コンジン法師」ことチョン・ソンベ氏による政界へのロビー活動を偶然発見したことで露見。旧統一教会側がチョン氏を通じて、大統領選挙直後の2022年4月から8月にかけて、6200万ウォン台のグラフのダイヤモンドのネックレスとシャネルのバッグを渡していたことが発覚し、波紋は急速に広がった。

 特検チームは、旧統一教会の首脳部の一員だったユン・ヨンホ前世界本部長がキム女史に「大統領の配偶者として大統領の職務に当たる各種の国政運営に直接的、間接的に関与していたため」接近したと判断している。大統領選挙の過程で多くの物を受け取ったキム女史は、旧統一教会に感謝の意を表しつつ、政府レベルの支援も約束。旧統一教会の政治的支持は大統領選挙で終わらず、キム女史は旧統一教会を政界に引き入れ続けた。キム女史は尹前大統領と自身の支持する人物を「国民の力」(当時与党)の代表に据えるため、2022年11月に旧統一教会の信者の与党への加入を要求した。ユン前本部長はキム女史からの要請を受け、その見返りとして比例代表枠を約束されたことを韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁らに報告している。キム女史らは2023年3月の党大会で尹前大統領の最重要側近であるクォン・ソンドン議員を代表に据えようとしていたが、同氏が不出馬を宣言すると、「作業対象」をキム・ギヒョン議員に変更。こうして党代表となったキム議員の妻は、党大会9日後の2023年3月17日にキム女史に、「党代表当選を後押ししてくれて感謝する」という内容の手紙を添えて、260万ウォン台のロジェ・ヴィヴィエのハンドバッグを贈っていたことも明らかになっている。

 旧統一教会とキム女史のかけ橋役を果たしたチョン氏は最近、法廷で「(キム女史に)宗教団体の贈り物は受け取っても事故が起きないから大丈夫だと言った」と陳述した。しかし「宗教と政治は分離されなければならない」(憲法20条2項)という憲法精神に背く重犯罪だ、というのが特検チームの見解だ。

■大統領の妻が「秘話フォン」を持ち歩いたわけ

 キム女史には盗聴・傍受防止機能付き電話(秘話フォン)が支給されていた。そのうえ大統領室、国家安保室、大統領警護処の高位関係者、長官など、すべての秘話フォンの所持者と通話できる「Aグループ」として管理されていた。「V0」としてのキム女史の地位を示すものだ。尹錫悦大統領の当選後もブランドバッグ受け取りやドイツモーターズ株価操作などで検察の捜査対象だったキム女史は、秘話フォンはもとより個人の携帯電話でも、パク・ソンジェ法務部長官や大統領室のキム・ジュヒョン民情首席と頻繁に連絡を取り合っていた。

 チョ・ウンソク特検チームは、昨年5月5日にキム女史がパク前長官にテレグラムで「私の捜査はどうなっているか」、「(李在明大統領の妻)キム・ヘギョン女史、(文在寅元大統領の妻)キム・ジョンスク女史の捜査はなぜ進まないのか」という内容のメッセージを送っていたことを確認している。イ・ウォンソク検察総長がソウル中央地検に、キム女史のブランドバッグ受け取り疑惑捜査の専門チームを設置するよう指示した日の3日後だ。それから9日後、法務部は突如として検察の高位職人事を断行し、ソウル中央地検の捜査指揮系の人員をすべて交代させた。キム女史がパク前法務部長官を通じて「検察人事」に関与した可能性が取り沙汰される理由はここにある。特検チームは、キム女史がパク前長官を通じて、自らが関与している公認介入疑惑の検察による捜査について報告を受けるとともに、もみ消そうとしたという疑惑についても調べている。特検チームは、昌原(チャンウォン)地検が公認介入事件の捜査に本格的に着手した時点においても、キム女史はパク前長官と頻繁に連絡を取っていたとみて、捜査内容について報告を受けていた可能性を調べている。

 検察が大統領警護処の付属施設に出向いてキム女史を取り調べた日の10日あまり前の昨年7月3日には、キム女史がキム元民情首席と秘話フォンで通話していたことも明らかになっている。ソウル中央地検がキム女史のドイツモーターズ株価操作事件を嫌疑なしとした10月17日の1週間前の昨年10月10~11日には、キム元首席とシム・ウジョン検察総長(当時)が24分間も通話していた。大統領の妻キム・ゴンヒ女史のAグループ用の秘話フォンは、自身の救命の道具だった可能性が高い。

 ミン・ジュンギ特検チームは今月28日に捜査を終える。150日間の「キム・ゴンヒ特検」による捜査の終了後も、警察が残された疑惑を捜査しなければならないかもしれない。女王になりたかったキム・ゴンヒの国政壟断疑惑は、あまりにも膨大だからだ。

ペ・ジヒョン、キム・ガユン、パク・チヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1232296.html韓国語原文入力:2025-12-02 06:00
訳D.K

関連記事