ホン・ジャンウォン前国家情報院第1次長が、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の内乱首謀容疑裁判に証人として出席し、12・3非常戒厳宣布当日に逮捕者リストに関する指示を受けたかどうかをめぐり、尹前大統領と攻防を繰り広げた。ホン前次長は、「みんな捕まえろ」と発言した対象が「反国家団体であるスパイ」だったという尹前大統領の発言に対し、「李在明(当時野党代表)、ウ・ウォンシク(国会議長)などが反国家団体ではないだろう」と反論した。
ホン前次長は20日、ソウル中央地裁刑事25部(チ・グィヨン裁判長)の審理で開かれた尹前大統領の内乱首謀容疑の裁判に証人として出席した。この日の裁判でホン前次長は尹前大統領弁護団の反対尋問を受けた。ホン前次長は、戒厳当日の昨年12月3日午後10時53分頃、尹前大統領に電話で「この機にみんな捕まえろ。みんな片付けろ」、「国情院にも対共捜査権を与えるから、まず防諜司令部を助けて支援しろ」という指示を受けたと、国会や憲法裁判所などで証言してきた。また、ヨ・インヒョン前防諜司令官との通話で、ウ・ウォンシク国会議長と「共に民主党」の李在明代表(当時)、「国民の力」のハン・ドンフン代表(当時)などが含まれた逮捕者リストを聞いてメモをしておいたと主張してきた。
尹前大統領は戒厳当日の通話内容と関連し、自らホン前次長を尋問した。尹前大統領は「防諜司令部は警察よりもスパイ捜査が専門だから、防諜司令部にも情報を提供してくれという話を聞いていなかったのか」と、自身の発言趣旨を説明した。するとホン前次長は、「大統領から電話がかかってきたのも、指示されたのも(あの時が)初めてだった。多くの指揮官と電話で話した大統領より、一通の電話を受けた私の記憶の方がより正確だろう」とし、尹前大統領の釈明が事実と異なると主張した。
また、ホン前次長は尹前大統領の「みんな逮捕しろ」という発言の対象を「反国家団体として記憶している」と証言した。これに対し尹前大統領が「反国家団体は対共捜査の対象になるスパイではないか」と言うと、ホン前次長は「李在明、ウ・ウォンシクなどが反国家団体ではないだろう」と反論した。
証人尋問が終わる頃、尹前大統領は、戒厳宣布当日にヨ・インヒョン前防諜司令官が民主党の李在明代表などの政治家の位置を追跡してほしいと要請したというホン前次長の証言の信憑性を崩すため、ホン前次長に問い詰めた。尹前大統領は「ヨ・インヒョン(前防諜司令官)が通信会社に位置追跡をしてほしい(と言った)とのことだが、防諜司令官ともあろうものが捜査の基本も知らないとは思わなかったのか」とし、「大統領は検察総長まで務めた人なのに、こんなことをヨ・インヒョンにさせて、ヨ・インヒョンが大統領の指示を受けて証人(ホン前次長)に頼むというのは、ちょっと辻褄が合わないのではないか」と尋ねた。位置追跡をするには裁判所の令状が必要なのに、自分とヨ前司令官がそのような指示をしたはずがないということだ。
しかし、ホン前次長は、「それでは、ヨ・インヒョンが独自の判断で(政治家を)逮捕しようとしたのか」、「部下に責任転嫁しようとしているのではないですよね? ヨ・インヒョンがなぜそのような要請(位置追跡)をするんですか」と繰り返し反論した。これに対し尹前大統領は「すでにその話はしたではないか」、「難しい立場なら、答えなくても良い」と話題を変えた。