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尹前大統領を利敵罪で追起訴…「戒厳を目的に平壌無人機浸透作戦を計画」

登録:2025-11-11 02:19 修正:2025-11-11 08:12
特検、尹錫悦前大統領・前国防長官・前防諜司令官に一般利敵容疑 
「最終状態は低強度ドローン紛争の日常化」前防諜司令官のメモ
ヨ・インヒョン前防諜司令官が昨年10月18日に携帯電話で作成したメモの内容=チョ・ウンソク内乱特検提供//ハンギョレ新聞社

 内乱事件を捜査するチョ・ウンソク特別検察官(特検)チームは10日、平壌(ピョンヤン)無人機浸透作戦にかかわったとして、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領、キム・ヨンヒョン前国防部長官、ヨ・インヒョン前防諜司令官を一般利敵などの容疑で起訴した。一般利敵罪は刑法の外患罪の一種として規定された犯罪で、大韓民国の軍事上の利益を害したり、敵国に軍事上の利益を供与したりした際に適用される。12・3内乱にかかわったとして外患容疑が適用された初の事例となる。特検チームは、3人が非常戒厳宣布の大義名分を作ることを目的として、共謀して北朝鮮を軍事的に挑発するために、昨年10~11月に平壌への無人機浸透作戦をおこなったと結論付けた。

 パク・チヨン特検補はこの日のブリーフィングで、尹前大統領、キム前長官、ヨ前司令官の3人を一般利敵および職権乱用権利行使妨害の容疑で起訴、また、キム前長官とキム・ヨンデ前ドローン司令官を偽計公務執行妨害および虚偽公文書作成の容疑などで起訴したと明らかにした。パク特検補は「尹前大統領やキム前長官らは共謀し、非常戒厳宣布の条件を作り出すことを目的として、南北間の武力衝突の危険性を増大させるなど、大韓民国の軍事上の利益を阻害した」として、「軍の統帥権者である大統領と国防部長官が、非常戒厳の条件を作り出すことを目的に南北の軍事対峙(たいじ)状況を利用することを狙った行為は、国民の安全に危険を招きうる絶対に容認できない行為」だと説明した。

尹錫悦前大統領とキム・ヨンヒョン前国防部長官(左)が昨年10月1日、ソウルの光化門広場で行われた「建軍76周年国軍の日」の街頭軍事パレードで言葉を交わしている=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 特検チームはヨ前司令官の携帯電話のメモを根拠として、昨年10月から11月にかけて断行された無人機作戦は戒厳宣布の大義名分を確保するためのものだったと判断した。特検チームが公開したヨ前司令官の携帯電話のメモには、昨年10月18日午後2時6分「不安定な状況で短期間に効果の上がる千載一遇の機会を探して攻略しなければならない」、その方策として「面目がつぶれて絶対に対応せざるを得ないターゲティング」などとある。標的としては、平壌▽核施設2カ所▽三池淵(サムジヨン)などの偶像化の本拠地▽元山(ウォンサン)外国人観光地▽金正恩(キム・ジョンウン)の休養所などが記されており、メモの下段には「最終状態は低強度のドローン紛争の日常化」と記載されている。非常戒厳宣布に先立ち、平壌などを標的として無人機を侵入させ、北朝鮮の対応を引き出すべきだ、と読み取れる内容だ。

 とりわけ、ヨ前司令官のメモに昨年10月27日付で「布告令違反最優先検挙および家宅捜索」とあること、昨年11月9日には「李在明、チョ・グク、ハン・ドンフン、チョン・チョンネ、キム・ミンソク」など戒厳時に防諜司の逮捕対象となっていた人物の名を列挙していることなどを考慮すると、平壌無人機作戦は非常戒厳の条件づくりが目的だったことは明白だ、というのが特検チームの見方だ。

 特検チームは、無人機作戦に関与した人々には、非常戒厳の条件づくりという目的を認知していたかによって、異なる容疑を適用したと明かした。そのため、無人機作戦を実行したキム・ヨンデ前ドローン作戦司令官とイ・スンオ前合同参謀本部作戦本部長には、一般利敵容疑が適用されなかった。パク特検補は「一般軍事作戦だが、過剰におこなったとしても意図が重要だ。当時は北朝鮮の汚物風船に対する対応だとの認識はあり得る」とし、「国民の命の保護の面から(軍が)迅速な判断と対応を行うためには、作戦の遂行にあたって萎縮することがあってはならない、というのが捜査チームの一致した意見だった。(起訴は)目的意識を持った者に限定した」と説明した。特検チームは、すでに内乱容疑で拘束されて裁判中の尹前大統領、キム前司令官、ヨ前司令官らの拘束令状を改めて請求する予定だ。

 いっぽう特検チームは、ノ・サンウォン元情報司令官の手帳のメモを根拠として、尹前大統領が非常戒厳を議論および準備しはじめた時期は、軍の将官人事が断行された2023年10月ごろだったと結論付けたと明かした。ノ元司令官のメモには「ヨ・インヒョン、ソ・ヒョンギ、パク・アンス、キム・フンジュン、ソン・シク」らの将官の名が列挙されているが、これらの人物は全員が2023年10月前後の進級または人事の対象者だった。当初、検察の特別捜査本部は、尹前大統領も出席した昨年3月のソウル鍾路区三清洞(チョンノグ・サムチョンドン)の安全家屋(秘密活動に使われる一般住宅)での会合ですでに非常戒厳などが論議されていたと尹前大統領の起訴状に記載しているが、その5カ月前の時点で戒厳が論議されていたということだ。パク特検補は「ノ・サンウォン手帳は、漠然と荒唐無稽だったというより、事実として明らかになった部分もあり、計画段階があったと考えられる」として、「ある程度は実現された面があるため、確実に把握された部分は犯罪事実に含めた」と語った。

カン・ジェグ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1228357.html韓国語原文入力:2025-11-10 12:45
訳D.K

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