本文に移動

原子力潜水艦、核燃料・小型原子炉も人ありき

登録:2025-11-14 10:01 修正:2025-11-15 07:02
10月22日、ハンファ・オーシャン巨済事業場で開かれた張保皐3バッチ(Batch)2の1番艦蒋英実の進水式でカン・ドンギル海軍参謀総長をはじめとする主要来賓が記念撮影を行っている=韓国海軍提供//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領は9月26日、保釈審問で「拘束されて、1.8坪の部屋の中でサバイブ(生存)すること自体が大変だった」とし、不拘束状態で裁判を受けられるようにしてほしいと要請した。尹前大統領に接見したシン・ピョン弁護士は7月、フェイスブックへの投稿で、尹前大統領の独房が「夜に横になれば身動きも取れない空間」だとし、「このような凄惨な住居環境は一言でいうと、生き地獄(Hell on the Earth)」だと主張した。この発言に多くの人が憤りを覚えただろうが、もし潜水艦の乗組員がこのような発言を聞いたなら、呆れて苦笑したかもしれない。

 軍内部では潜水艦乗組員の劣悪極まりない勤務環境を「この世に存在する刑務所の中で潜水艦より劣悪な刑務所はない」という言葉で表したりもする。潜水艦部隊には「100回潜航すれば100回浮上する」という安全信条がある。潜水艦は安全のために水漏れのない密閉構造で作られる。水圧に耐えるために円筒形を帯びており、窓もない。潜水艦乗組員たちは狭い筒の中に閉じ込められた自らを「同じ筒の仲間」と呼ぶ。

 潜水艦は陸軍の戦車や空軍の戦闘機のように、一つの兵器体系だが、乗組員にとっては生活空間だ。出港すれば、最大3週間ほど潜水艦で生活する海軍にとって、潜水艦は兵器であり、家であり、仕事場だ。潜水艦の乗組員たちは、日差しが入る窓もなく、外にも出られない、外部と断絶された狭く密閉された空間で過ごす。窓のない刑務所に閉じ込められているようなものだ。

 彼らの一日の勤務時間は当直8時間、訓練・整備4時間などで12時間程度。勤務時間が終わっても帰ることもできず、空間が狭いため、プライバシーも保障されない。最近、共に民主党のファン・ヒ議員が公開した資料によると、乗組員1人当たりの居住空間は「張保皐」級潜水艦(1200トン級)が1.1坪、「孫元一」級潜水艦(1800トン級)が1.2坪。刑務所の独房の最小設計基準(1.63坪・法務施設基準規則)より狭い。刑務所の独房よりも劣悪な潜水艦と言われる所以だ。

尹錫悦前大統領が2023年7月19日、釜山南区の海軍作戦司令部釜山作戦基地に入港した米国のオハイオ級弾道ミサイル搭載原潜「ケンタッキー」(SSBN-737)内部を視察し、潜望鏡を覗いている=米海軍提供//ハンギョレ新聞社 潜

 尹前大統領が韓国潜水艦に乗ったことがあるなら、「1.8坪の部屋の中でサバイブすること自体が大変だった」とは言えなかっただろう(尹前大統領は2023年7月、釜山海軍作戦司令部基地に入港した米海軍の弾道ミサイル搭載原潜「ケンタッキー」(SSBN-737)に乗船したことはあるが、この潜水艦は韓国が保有するディーゼル潜水艦の張保皐級や孫元一級より排水量が3~4倍ほど多い)。

 空間が非常に限られている潜水艦には個人のベッドなどない。乗組員3人が勤務時間に合わせて2つのベッドを順番に使う「ホットバンキング」(Hot Bunking)が一般的だ。衛生環境はさらに深刻で、15~25人が1台の便座を使わなければならず、多くの人が特定の時間にトイレに並ばぶことがないよう、自律的にトイレ使用時間を分散させることが求められる。尹前大統領の独房では、少なくともトイレは自由に使える。

 潜航すれば飲み水も足りないため、シャワーは事実上不可能だ。火を起こすことができないため、食事メニューも限られる。室内空気は二酸化炭素が大気の8.3倍、一酸化窒素は2.9倍に達し、慢性疲労と頭痛を訴える場合も多い。運動も思うようにできない。二酸化炭素を多く排出する有酸素運動は禁物で、ストレッチや簡単な体操ぐらいしかできない。1日の運動時間が保障されている尹前大統領とはかなり状況が違う。

 乗組員は潜航すればテレビ視聴、携帯電話の使用ができない。尹前大統領の場合、携帯電話が使えないが、テレビは見ることができる。プライバシーの保障不可、外部との完全な断絶などは、潜水艦乗組員の服務意欲を深刻に低下させる。彼らの勤務環境は体と心を蝕むほど劣悪だが、手当てなど処遇はそれに見合わないものだ。

水艦の乗組員が交代で使用するベッドに横たわっている。ベッドの大きさは長さ180センチ、幅75センチ、高さ50センチに過ぎず、背の高い乗組員は体を曲げて寝なければならない=韓国海軍提供//ハンギョレ新聞社

 この結果、潜水艦乗組員の流出が増え続けている。潜水艦勤務は海軍でも誰もが務まるものではなく、選抜過程を経て潜水艦乗組員の養成教育を受けなければならない。厳しい潜水艦勤務を志願する人が少ないうえ、苦労して採用し、1人当たり数千万ウォンを投入して潜水艦要員として育成しても、そのうち多くが潜水艦を離れる。

 ファン・ヒ議員室は最近3年間、潜水艦乗組員240人余りが転役(除隊)したが、毎年養成される人員(80~100人余り)を考慮すれば非常に深刻な水準」だとし、「劣悪な勤務環境とそれに見合わない処遇などにともなう『服務の敬遠』が主な原因と分析される」と述べた。さらに「人材の流出増加は高度の専門性が要求される潜水艦運用の戦備態勢の維持と国家安全保障を脅かす要因になっている」とし、「潜水艦の特殊性を考慮し、乗組員奨励手当てなど破格的な水準の処遇改善と根本的な服務環境の改善に向けた特段の対策を直ちに用意しなければならない」と強調した。

 米国の「承認」を受けて原潜の建造が可能になったことで、核燃料の供給、小型原子炉などに関心が集まっているが、原子力潜水艦を作ってもまともに運用する乗組員がいなければ無用の長物だ。

 「潜水艦全体の運命は、潜水艦乗組員1人によって決まる。他の人に分かってもらえず、時には潜水艦乗組員自身さえも自覚するのが難しいが、これは事実だ」。米ロサンゼルス級原潜「サイエン(SSN-773)」の案内文にはこう書かれている。

 原潜の性能がいくら良くても、人ありきという意味だ。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1226612.html韓国語原文入力:2025-10-31 10:29
訳H.J

関連記事