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「水深の浅い朝鮮半島水域に適切か」…慎重論の中でも急速に進められる韓国の原潜

登録:2025-11-03 06:40 修正:2025-11-03 07:30
専門家ら「この際、公に議論を始めるべき」
先月22日、ハンファオーシャン巨済事業場で、潜水艦「張保皐-IIIBatch-II」1番艦「蒋英実」の進水式が行われている=韓国海軍提供//ハンギョレ新聞社

 韓米首脳会談後、原子力潜水艦の建造に向けた論議が急ピッチで進められている。韓国政府は北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など核の脅威に対応するため、原潜が必要だと主張しているが、軍内部でも水深が浅く作戦半径が狭い朝鮮半島の水域には適していないという「慎重論」が提起されている。原潜の導入に先立ち、果たしてこの潜水艦が韓国の安全保障に欠かせないのか、緻密な議論と共感形成が必要だという声があがっている。

 李在明(イ・ジェミョン)大統領が先月29日、韓米首脳会談で「原子力潜水艦の燃料供給を受けられるようトランプ大統領が決断してほしい」と公式に要請したことを受け、ドナルド・トランプ米大統領は翌日、トゥルース・ソーシャルへの投稿で「彼ら(韓国)が現在保有している古くて機動性がはるかに劣るディーゼル潜水艦の代わりに、原子力潜水艦を建造することを承認した」と書いた。韓国大統領室側はトランプ大統領のこの発言をめぐり、両首脳の会談で「核燃料の供給を受けられるよう承認された」とし、今後、原潜を保有できるようになったとして、非常に前向きに捉えているムードだ。

 一方、原潜が果たして韓国に今必要なのかという慎重論も提起されている。原潜は、米海軍のように太平洋や大西洋など広い海で長期間作戦するには適しているが、朝鮮半島の水域は水深が浅く、作戦半径が狭いためだ。正義党のキム・ジョンデ前議員も1日、フェイスブックへの投稿で、「韓国にとって現実的に脅威となるのは深海ではなく沿岸」だとしたうえで、「北朝鮮の小型潜水艦、SLBM発射プラットフォーム、機雷戦の脅威に対応するために必要なのは、巨大な原子力潜水艦ではなく、機敏な無人システム」だと強調した。キム前議員は原潜を「強大国の幻想に酔いしれた国家的虚栄」だと批判した。

 原潜は海軍の宿願だが、陸軍と空軍の反応には温度差がある。今年の国防予算61兆ウォン(約6兆5600億円)のうち、兵器導入のための防衛力改善費は18兆ウォン程度だ。米バージニア級(7925トン)の原潜の建造費用は1隻当たり3兆374億ウォンだが、国防部が明らかにした通り、原潜を少なくとも4隻導入するためには16兆ウォン以上の費用がかかり、陸軍と空軍の兵器導入予算が減る可能性があるためだ。

 政府が掲げる原潜導入の名目は、北朝鮮のSLBMなど核の脅威への対応だが、陸軍は長射程砲や戦車などの地上の脅威への対応が急がれるとみている。空軍はミサイルおよび精密打撃能力の拡張が急がれると主張している。「コストパフォーマンス」を考えると、原潜1隻より最新のディーゼル潜水艦を数隻作った方が良いという主張も軍内外にはある。

 李大統領の「公式要請」で原潜の導入が急流に乗ることになり、このような慎重論について緻密な議論と共感の形成が省略されるのではないかという懸念の声もあがっている。韓国が直面した脅威の性格と内容を分析した後、国防戦略を立て、陸海空軍別に特化した戦力を確保する方向で兵器システムの導入(軍事力建設)が行われなければならないのに、「馬車」(原潜の導入)を「馬」(国防戦略)の前に据えるようなものという指摘だ。

 専門家たちはひとまず軍内部で「原潜が北朝鮮の核の脅威に対応するのに最優先」という共感が必要だと指摘した。元安保当局者は「原潜事業が(国家安保上の理由で)予算編成、推進現況などすべての関連内容が秘密の秘匿事業であり、これまで公論化することが難しかった」とし、「この際に公に議論を始めなければならない」と語った。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1226961.html韓国語原文入力:2025-11-02 20:50
訳H.J

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