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「大学入試と就職、2度の試験で人生決定…韓国式能力主義のわな」

登録:2025-10-24 07:38 修正:2025-10-25 07:17
第16回アジア未来フォーラム円卓討論|「不平等の時代、民主主義を問い直す」
23日午後、ソウル中区の大韓商工会議所で開催された第16回アジア未来フォーラムで、円卓討論が行われている//ハンギョレ新聞社

 不平等の時代、能力主義は民主主義の危機とどのように連動しているのだろうか。とりわけ、学閥主義が根強く、鋭いジェンダー対立が存在する韓国社会において、不平等はどのように正当化され、民主主義の衰退へとつながるのか。

 23日にソウル中区(チュング)の大韓商工会議所国際会議場で開催された第16回アジア未来フォーラムで、「不平等の時代、民主主義を問い直す」とのテーマで行われた円卓議論。討論者たちは、能力主義が不平等を合理化することで民主主義を揺さぶっていると口をそろえて語った。討論は女性家族部長官を務めたチョン・ヒョンベク成均館大学名誉教授(史学科)が座長を務め、イ・チョルスン西江大学教授(社会学)、イ・ガングク立命館大学教授(経済学)、ダニエル・マコービッツ米エール大学ロースクール教授、ジョー・リトラー英ゴールドスミスカレッジ教授(文化、メディア、社会分析)がパネリストとして参加した。

 イ・チョルスン教授は、韓国民主主義を危うくする若者の右傾化の背景として、労働市場の競争構図の変化と良質な雇用の縮小をあげた。「韓国の所得上位の男性と女性との賃金格差は少しずつ縮まる一方、所得下位の男性と中間層の女性の差は開きつつある」と説明。そのため「労働市場で若い男性は(雇用競争で)女性に脅威を感じている」という。若い男性たちは競争構造の変化の中で、努力しても補償されないという恐怖が高まるにつれ、はっきりと保守に傾きつつある。これについてリトラー教授は「様々な視点から平等を指向する政策が必要だ」として、「スケープゴートにし合わない、誰に対しても良い暮らしを提供するやり方を考えなければならない」と述べた。

 良質な雇用の不足も不平等の要因だと指摘された。イ・チョルスン教授は、大学入試と就職に「すべてを賭ける」韓国式能力主義の構造的問題点を指摘した。「韓国の能力主義の問題は、大学入学と大企業への入社に向けた2回の試験のために10代、20代をすり減らすシステム」だとして、「逆説的に、20代で大企業の正社員の地位を確保した人はその後、もはや評価システムが作用しないので能力主義から落ちこぼれることを心配する必要がない」と述べた。そして「10代、20代に自分をすり減らしても親世代の地位には届かないという恐怖心が、韓国能力主義の悲劇」だと付け加えた。

 大企業と中小企業との深刻な格差が民主主義を脅かしているとする診断も示された。イ・ガングク教授は、韓国社会の不平等の最重要問題として大企業と中小企業との賃金格差をあげつつ、能力主義、所得の不平等、機会の不平等が連鎖反応を起こすことで民主主義の衰退へとつながると述べた。「所得の不平等を緩和するには企業間の公正取引を増やし、労働者に力を与え、所得税率を引き上げなければならない」とし、「連帯感を伴った同等な成長こそ、民主主義を支える基盤となるだろう」と述べた。

 マコービッツ教授は「韓国も米国のようにエリートの年俸水準が非常に高まっているが、(能力主義で武装した)高賃金労働者中心の不平等な構造へと向かうのか、注視しなければならない」と述べた。

シン・ソユン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1225128.html韓国語原文入力:2025-10-23 17:51
訳D.K

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