10月31日に慶尚北道の慶州(キョンジュ)で開幕するアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議における李在明(イ・ジェミョン)大統領の最大の課題は、米国のドナルド・トランプ大統領と対面し、長いこう着状態に陥っている「3500億ドルの対米投資ファンド・関税交渉」の突破口を開くことだ。
トランプ政権は今も韓国に対する圧力を強め続けている。李在明大統領が国連総会への出席のための訪米を終えて帰国の途についた時点でも、米国メディアは、ハワード・ラトニック商務長官が韓国に3500億ドルを超える投資を要求したことを報道している。トランプ大統領は「韓国から3500億ドルを前払いで受け取る」と、これまでまったく言及したことのない「前払い」を言い出している。
政府は困惑している。ウィ・ソンラク国家安保室長は29日の記者懇談会でも、「韓国の立場からすると3500億ドルを現金で支払うのは不可能なので、代案を模索している」と述べつつ、「トランプ大統領の発言が、(韓国が3500億ドルを)支払うのは難しいと言ったことに対する反応なのか、従来の立場の繰り返しなのかは確信できない」と語った。
米国がますます無理な要求をしてきていることを受け、与党内でも、米国の交渉態度を非難しつつ、韓国政府に今より強い対処を求める声が強まっている。米国の「3500億ドルの現金投資」要求を受け入れるくらいなら、いっそのこと25%の関税を負担した方がましだとの主張も広がっている。
だが政府は、韓国の置かれた経済・政治的環境を考えると、交渉を投げ出して対米関係の負担を重くすることはできないと判断している。かといって、時間を引き延ばしてばかりもいられない。「3500億ドルの投資・関税交渉」が妥結しないと、高い関税を負担しなければならない企業に被害が及ぶのはもちろん、国防費の増額と「同盟の現代化」、戦時作戦統制権の返還などの安全保障懸案の解決も進展が難しい構造になっているからだ。政府が「交渉以外に道はない」と述べて米国との協議を続ける理由はここにある。
大統領室は、李在明大統領とトランプ大統領の2回目の首脳会談が行われる10月末の慶州APEC首脳会議が、関税交渉の重大なヤマ場になるとみている。残る1カ月間、交渉の緊張を緩めず、韓国の現実を説明、説得しつつ、できる限り韓国の立場が反映される妥協点を探るという。
韓米は韓国人労働者の大規模拘禁事件を受け、対米投資企業の労働者のビザ問題の解決策を探るための「ビザ作業部会(ワーキンググループ)」の第1回会議を、30日(現地時間)に米国ワシントンで開催する。