本文に移動

【ニュース分析】行きづまった南北関係に「END」…突破口探すための苦肉の策

登録:2025-09-25 06:38 修正:2025-09-25 08:06
交流・関係正常化・非核化の3原則 
「優先順位のない包括的アプローチ」 
核「凍結」より敷居が低い「中断」 
「現実的アプローチ」、「バラ色」評価分かれる
李在明大統領が23日(現地時間)、米ニューヨークの国連本部総会長で基調演説を行っている/聯合ニュース

 李在明(イ・ジェミョン)大統領が朝鮮半島の平和構築の先決課題として「非核化」(Denuclearization)を掲げず、「交流」(Exchange)と「関係正常化」(Normalization)を強調した「ENDイニシアチブ」を提示したことで、長期膠着に陥った南北関係に突破口が開かれるか注目される。李大統領が23日(現地時間)、国連総会の基調演説で提示したENDイニシアチブは、「非核化は絶対にない」と宣言した北朝鮮に向け、韓国政府の対話の意志を示すため苦心した結果といえる。ただし、具体的なロードマップがなく、課題別の優先順位も付けられていないことから「バラ色の未来の青写真」だという懸念の声と共に、朝鮮半島情勢の転換点になる新たな「平和宣言」と評価する声もあがっている。

■なぜ「ENDイニシアチブ」なのか

 李大統領が提案したENDイニシアチブは、南北間交流・協力と関係正常化、非核化から段階的アプローチを排除したのが特徴だ。「先に非核化」を固守してきた米国と保守政権の方式や「段階的、同時行動」を望んだ北朝鮮の従来の立場から、いずれも一歩後退したアプローチだ。李大統領の演説直後、「交流→関係正常化→非核化」に至る段階論と解釈されたりもしたが、大統領室は直ちに「各課題の間に(段階的な)順位があるわけではない」と説明した。

 ウィ・ソンラク国家安保室長は同日、現地で開いた記者懇談会で、「ENDイニシアチブの個別原則は、過去の南北間の合意と2018年の朝米シンガポール共同声明でも強調されたもの」だとし、「これらの原則を中心に(非核化と平和定着を共に追求する)包括的アプローチを通じて、朝鮮半島問題の解決と世界平和・繁栄に貢献するという意思を国際社会の前で明らかにしたもの」だと述べた。そして、「3つの要素の間には優先順位と相互(因果)関係があるわけではない。南北対話と朝米対話を通じて交流、関係正常化、非核化の過程が互いを刺激し、後押しする構造で推進していく方針だ」と語った。3つのうちいずれも他の過程の条件や原因になる構造ではないという意味だ。

 李大統領が段階的アプローチを排除した平和構想を打ち出したのは、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が「非核化論議を排除した朝米対話」を主張し、南北関係改善には関心がないことを明確にした状況で、韓国政府が「ペースメーカー」として機能する空間を探そうとする苦肉の策とみられる。東国大学北朝鮮学科のキム・ヨンヒョン教授は、「朝米関係はそのまま進むとして、南北関係も国家間の協力ではなく、宗教・体育・文化交流など、韓国が直ちに実行に移すことができる分野から始めようという意味だ」とし、「北朝鮮側に韓国政府の積極的な意志を示そうとするシグナルとみられる」と語った。

■核凍結の代わりに「核中断」掲げた理由とは

 ENDイニシアチブは、李大統領が先に示した「3段階非核化論」(凍結→縮小→廃棄)とも密接に関わっている。李大統領は23日の国連演説でも「核・ミサイル能力の高度化の『中断』から始まり、『縮小』の過程を経て、『廃棄』に到達する実用的・段階的解決法に向けて国際社会が知恵を集めなければならない」と強調した。注目すべきなのは、李大統領が非核化の1段階措置としてこれまで言及してきた「凍結」の代わりに「中断」という言葉を使った点だ。これには北朝鮮の反発を意識した面が大きい。

 ひとまず「凍結」には「申告」と「検証」の過程が伴う。問題は1994年のジュネーブ合意など「凍結」段階を含むこれまでの北朝鮮非核化プロジェクトが、「検証」過程でいつも座礁したという点だ。一方、「中断」は核実験などを止めるだけでも成立し得る。「凍結」とは異なり、別途の検証手続きが伴わないという意味だ。ウィ・ソンラク室長は「中断に対する検証問題は今後の課題であり、北朝鮮とも協議をしなければならない問題」だと説明した。

 このような問題のため、ENDイニシアチブを現実化する過程自体が、事実上、北朝鮮の核を容認するものと解釈される余地がある。安全保障分野の元高官は「申告と検証過程がない『中断』ならば、今の状況では政治的宣言以上の意味がない」と語った。

 用語をめぐる解釈上の議論もある。一部では外交的関係を想定した「関係正常化」について、金正恩委員長が明らかにした「二つの国家論」を受け入れたのではないかと疑うのが代表的な事例だ。これに対してウィ室長は「政府の立場は『南北関係は統一されるまでの暫定的な特殊関係』という1991年の南北基本合意書の立場と同じだ」と説明した。

■バラ色のレトリックなのか、それとも質的転換点なのか

 韓国政府も議論をある程度予想していたようだ。李大統領も演説で、「夢のようなバラ色の展望に聞こえるかもしれない」という前置きをしており、ウィ室長も「一つひとつがすぐに実現できることではない。交流も長い過程であり、関係正常化も長い過程であり、非核化も同じだ」と述べた。

 にもかかわらず、このような構想が提示されたのは、2019年「ハノイ・ノーディール」以降始まった南北関係の長期膠着を解消する他の方法が見つからないためだ。こうした側面から、北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は李大統領の構想を「ニューヨーク宣言」と言える新しい平和構想と評価した。ヤン教授は「南北、朝米間に不信感が広がっている状況で、先に非核化を要求すれば、平和構築のための交流は一歩も進めない。そのため、非核化は『中断』から、南北関係は『交流』から始まるものとみられる」と分析した。

オム・ジウォン、ソ・ヨンジ記者、パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/1220573.html韓国語原文入力: 2025-09-25 00:18
訳H.J

関連記事