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【独自】韓国外相「ウラン濃縮・核燃料再処理容認、米国と基本的な方向性を合意」

登録:2025-09-23 08:55 修正:2025-09-23 11:09
チョ・ヒョン外交部長官インタビュー 
「関税、国益を最優先に交渉」
チョ・ヒョン外交部長官が19日午後、ソウル鍾路区の外交部庁舎の大接見室で、ハンギョレのインタビューに応じている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 チョ・ヒョン外交部長官は、8月の韓米首脳会談を準備する過程で、韓国のウラン濃縮と使用済み核燃料再処理に対する制限を緩和する方向で両国が暫定合意し、合意文まで作成していたと明かした。韓国の核利用に関するこの時の合意内容は、関税交渉の妥結後に作成される両国首脳の最終合意文に盛り込まれる予定だという。

 チョ長官は今月19日にソウル鍾路区(チョンノグ)の外交部庁舎で行われたハンギョレとのインタビューで、「(首脳会談の合意文を作る過程で)韓国も(ウラン)濃縮と(使用済み核燃料の)再処理ができるようにするという基本的な方向性に(両国が)合意したことは、意味ある進展」だと述べた。

 2015年に改正された韓米原子力協定は、20%未満のウラン濃縮は「米国の同意」を得ることとし、使用済み核燃料の再処理については「パイロプロセッシング(乾式再処理技術)」の共同研究を行うとしている。しかし、これについては高位級協議が行われておらず、共同研究も中断している。

 米国が韓国に無理な対米投資を要求しているため妥結が遅れている関税交渉については、10月末のAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議を機に行われる韓米首脳会談までにまとめるのが目標だと述べた。チョ長官は「日本が先に米国と合意した内容を見ると、後でかなり問題になりうる内容がある。そのため(日本と)似たようなかたちで米国に要求してこられると、(韓国にとって)合意は難しい。国益を最優先とし、時間が少しかかっても(より良い合意のために)努力する」と述べた。

 安保分野の交渉については、大筋まとまったと述べた。「国防費の増額も米国と大筋で合意に至りつつある。APEC首脳会議までには、ある程度めどが立つと予想している」というのだ。在韓米軍の戦略的柔軟性の拡大については、「一部で懸念しているのは、(在韓米軍が)台湾海峡有事に(介入する際に)韓国も巻きこまれる恐れがあるということだが、そのような懸念はない」と強調した。

 チョ長官は、李在明(イ・ジェミョン)大統領と中国の習近平国家主席の2国間会談が、APEC首脳会議を機に行われる可能性が非常に高いとの見通しを示した。以下はチョ長官との一問一答。

チョ・ヒョン外交部長官が19日午後、ソウル鍾路区の外交部庁舎の大接見室で、ハンギョレのインタビューに応じている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

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■「国防費については大筋合意…APECまでにめど」

-安保交渉は大筋合意とおっしゃった。国防費は国内総生産(GDP)の3.5%ほどで合意されつつあるのか。

 「北朝鮮が核とミサイルの能力を高度化し、ロシアと軍事同盟を結んでいる中、安保がいつにも増して重要になっている。国防力を養ったり国防費を増やしたりといったことは論理的帰結だ。しかし同時に、北朝鮮との軍事的緊張をほぐし、何としてでもテーブルに引っ張り出さなければならない。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に経験したのは、うまくいったこともあるが、最後に少し残念なこともあったということ。それに対する反省だ。つまり、韓国が運転席に固執すべきことではない。困難な状況にあってドナルド・トランプ大統領をうまく説得して、彼がイニシアチブを握って前に進めるように(しなければならない)。そうすることでようやく北朝鮮は応じる」

-最大の関心事は国防費の増額規模だ。

 「米国と大筋で合意はできつつある。(10月31日~11月1日に慶州(キョンジュ)で開催される)APECまでには、ある程度問題解決のめどが立つと思う」

-APECを機に行われる韓米首脳会談で発表される可能性が高いか。

 「私が断言することはできないが、それまでには安保問題で合意した内容を国民にお伝えし、そうできると私も期待している」

-戦略的柔軟性についても、あわせて合意できつつあるのか。

 「戦略的柔軟性は大きな変化はなく、戦作権の返還問題も現政権の終了までにやると発表されているではないか。それくらいだ。一部で懸念しているのは、台湾の非常事態に韓国が巻き込まれるのではないかというものだが、そのような懸念はない」

-在韓米軍の削減問題は。

 「削減については議論されていない」

-在韓米軍については、合意事項ではなく米軍が決める問題なのか。

 「そうだ。米国はある程度自律性をもってやろうとするだろうし、韓国はそれに対する確固たる立場がある。つまり、『朝鮮半島においては、在韓米軍が別の任務を遂行するにあたっては限界があるべきだ』という立場であるため、その程度で話がまとまった」

-米国の新たな国防戦略(NDS)について、米国側から事前に話があるのか。

 「米国はまだ正確に決定してはいないようだ」

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■韓米原子力協定、合意文に盛り込まれた

-もう一つの関心事は韓米原子力協定に関する分野だが、意味ある進展があるとおっしゃった。米国とどのような方向で合意されつつあるのか。

 「基本的に韓国が望んでいることについて(米国に)理解してもらった。韓国も濃縮と再処理ができるようにするということについて、そのような基本的な方向性について合意したことに意味がある。(だから)進ちょくと言ったのだ」

-韓米の間でどのような合意があったのか。

 「(韓米首脳会談の)合意文に。合意文を作成する過程で合意がなされた」

-改めて合意文を作成する際に、その文言が消えたりする可能性はないのか。

 「そうはならない」

-既存の原子力協定方式を用いるか、改正するか、どのような方式でやるかは論議されたのか。

 「様々な方策があるため、そのようなことはさらに協議しなければならない。韓国は今、26基の原子炉から使用済み核燃料が出続けており、それを水槽に入れておいているが、今や飽和状態に至り、環境的に大きな問題になっている。それを取り出して再処理しなければならない。もう一つは、韓国は多くのロシア製燃料を使っているが、これは供給が不安定だ。そのため、韓国もウレンコのように核燃料を作る工場を作れば、米国にとってもよいのではないか、と主張してきたわけだ。韓国が主張し要請している濃縮と再処理は、核兵器開発とはまったく無関係だという立場の下にあるものだ。このような交渉に水を差す独自の核武装や潜在的な核能力の話が、政界や学界から出てこないよう願う」

チョ・ヒョン外交部長官が19日午後、ソウル鍾路区の外交部庁舎の大接見室で、ハンギョレのインタビューに応じている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

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■「通貨スワップ提案、いま米国が検討中」

-関税交渉は遅々として進まない。APEC前に進展はあると思うか。

 「今回、日本が(米国と)合意したのを見たと思うが、日本の合意内容をよく見ると、後にかなり問題になる可能性があるものがある。だから似たようなかたちで米国側から要求されると、それは合意できない。李在明大統領が就任100日記者会見で、小細工による裏合意はしない、国益を守る最善の協議をすると表明しただけに、時間がかかったとしてもそのように努力すると思う」

-通貨スワップ協定は論議に進展があるか。

 「韓国になぜ通貨スワップ協定が必要なのかは、先日、キム・ジョングァン産業通商資源部長官が(訪米してラトニック商務長官に)よく説明した。通貨スワップ協定があってはじめて韓国のウォンは安定する。(対米投資で)莫大な金額が流出すれば為替レートが不安定になるから通貨スワップ協定が必要だという話を(米国側に)よく伝えて、いま米国が検討していると認識している」

-まだ返事は来ていないのか。

 「まだだ」

-マジノ線はいつだと考えるか。

 「マジノ線はない。かといって無制限というわけにもいかない。なぜなら韓国は25%の関税がかけられるため、できるだけ早期に合理的な方策を立てなければならないと思う」

-APECを機に韓米首脳会談が推進されているが、その前を目標にしているのか。

 「そうだ。早ければ早いほどよいが、今、日本式の合意は韓国にとって負担が重すぎるということだ」

-一部からは、「いっそのこと関税は25%を払った方がましだ」とも主張されているが、政府は検討しているのか。

 「米国のディーン・ベイカー(米国のシンクタンク経済政策研究センターのシニアエコノミスト)という学者がそのように言っているが、そのようにも考えられるし、そのように主張することも可能だと思う。しかし、中国がこのかん急速に成長してきたため、韓国企業は多くの部分で追い越されるか、追い越される危険にさらされている。ここで韓国が新たな突破口を探っているのは、米国のテクノロジーと結びついての米国市場の活用だ。米国の立場からすれば、マニュファクチャリング(製造業)に足りないものは韓国と協力してこそ、いわゆる製造業ルネサンスがもたらせる。だから韓米にはそのような互いに必要な、ウィンウィンがあるのだ」

-関税交渉のさなかにジョージア州事件が起こった。米国の反移民感情も強い。

 「米国の反移民感情、投資交渉とは関係なしに(ジョージア州)事態は何しろ反響が大きかったため、米国でも確実にこのことを認識している。韓国はワーキンググループを作って迅速にこの問題を解決しようとしており、米国もこたえている。今回拘禁された方々、またはその会社から人材を改めて送るなどの具体的なことは、速やかに(米国と)協力していく。しかし、それとは別に新たなカテゴリーのビザを作ったり、韓国の投資の実情に合わせてB-1ビザの範囲を変えたりするのは、若干の時間がかかりうる。だが私は、米国が引きずることはないと思う」

-トランプ大統領は今月19日(現地時間)に、専門職ビザ(H-1B)の手数料を1000ドルから10万ドルに引き上げるとする大統領令に署名した。韓国のビザ論議に影響を及ぼすことが懸念される。

 「鋭意注視しており、すでに(それは新規ビザ申請者にのみ適用される予定であるなど)内容の変化もあるので、現実に合わせて韓米両国にとってよい方策を探っていく」

-今月10日に米国のルビオ国務長官に会った際、ジョージア州事態についての遺憾表明はあったか。あの日は、米国が突如チャーター機を出発させた翌日だった。

 「当然にも遺憾表明があった。その後、ランドー国務副長官も訪韓して公式に謝罪したから、米国政府からの公式謝罪はあったということ」

チョ・ヒョン外交部長官が19日午後、ソウル鍾路区の外交部庁舎の大接見室で、ハンギョレのインタビューに応じている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

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■「中国、非核化原則に変化があったわけではないと判断」

-中国の王毅外相と会談なさった。北朝鮮の非核化については、どのような対話をおこなったのか。

 「新政権の朝鮮半島政策についてはっきりと話した。軍事的緊張の緩和、次に平和を定着させるためのあらゆる措置、そして究極的には非核化を実現していくことが、韓国の外交政策だ。先日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が訪中したが、それについてどう思うかと尋ねたところ、(王外相は)『我々の政策はまったく同じだ』と答えた。中国の非核化についての原則が変化したわけではないと判断した」

-APECを機とした習近平主席の11年ぶりの2国間訪問の可能性も非常に大きいと考えるか。

 「そう思う」

-王毅外相はいつ訪韓するのか。

 「習近平主席の訪韓前に来ると思う。(10月1日の中国の国慶節の後に来るのか)そうだろう」

-前政権時代、韓中関係は良好ではなかった。困難があったが、韓中首脳会談で絶対に解決すべき問題は何だと考えるか。

 「中国側がどのような問題意識を持っているかというと、韓国は米国に近づきすぎなのではないか。それに対して私は、それは中国にはどうすることもできない問題だ。韓国が国際情勢の変化の中で韓米同盟を重視することに対して、チャレンジ(挑戦)しないでほしい(と伝えた)。中国側もその点は理解している。だが、韓国内に存在する嫌中感情とデモに対してはかなり不満を表明した。幸い、李大統領が必要な措置を取れと言ったことは高く評価した。私たちはこれからもそうしていくつもりだ。もう一つ、王外相は、(満潮時に孤立した70代の中国国籍の高齢者を救助中に死亡した)海洋警察の故イ・ジェソク警査の殉職が、中国国民の心を温かくしたと強調した。西海(ソヘ)海上の構造物の問題については、はっきりと立場を表明した。隣国同士の善隣関係をうまく維持していくためには、国際法に反しないように互いに行動しなければならない。中国側は分かった、今後の実務協議で意見の相違のあることについては解決していくという程度の答えだった」

-来週、国連総会に行く際に、北朝鮮のキム・ソンギョン外務次官と日程が重なる可能性もあると聞いた。会う計画もあるのか。

 「重なれば、私が行って握手はしようと思うが、日程を決めたりはない。なぜなら、対話するのはよいが、あちらに対話する意思がないのに、無理にそれをするために私たちが常軌以上の努力をするのは望ましくないと思う」

-トランプ大統領は、年内に北朝鮮の金正恩国務委員長に会いたいと述べた。李大統領はペースメーカー役を果たすと言ったが、そのような方向で可能性はあるのか。

 「金委員長が慶州に来るとは思えないし、ならば別の方法でどうするかを米国側と協議している」

-朝米首脳会談が稼動すれば、韓国が素通りされる懸念もある。

 「杞憂(きゆう)だと思う。韓国との協議なくしてそのようなことができるのか、私は外交の常識からして、それはちょっと想像しにくい。米国と北朝鮮がテーブルにつくことになれば、韓国と緊密に協議することになるだろう」

-日本では石破茂首相が退陣し、新たな首相が間もなく就任する。今後の韓日関係の見通しは。

 「あまり心配しなくてもよいだろう。日本政府は韓国政府のシャトル外交の復元だとか、そのようなイニシアチブに呼応してトーンがセッティングされた。だから大きくは変わらないだろう」

-韓ロ関係を懸念する声がある。今回、ロシアが北朝鮮に原子力潜水艦用の原子炉を提供したという情報もあるが、どう判断しているか。

 「私たちは今、様々な要素をもってロシア側と協議しようとしている」

-北朝鮮とロシアがあのように密着している中で、余地はあるのか。

 「北朝鮮とロシアの密着は、実は大きな問題ではない。むしろより大きな問題は、ロシアがウクライナ戦争をどのように終息させるかだ。それによって、韓国がロシアと協議を進めていく上での制約の要素がなくならなければならない」

-APECの準備は進んでいるか。

 「APECで合意される文案は、外交部が今、各加盟国とペーパーをやり取りしながら作っている」

ソ・ヨンジ記者、パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1219914.html韓国語原文入力:2025-09-22 06:00
訳D.K

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