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「京釜線も幹線道路も地下化するという韓国…さらに洪水にぜい弱に」

登録:2025-07-22 02:20 修正:2025-07-22 08:07
「乙丑年大洪水100年」討論会でWMO元諮問官のキム・スンさん 
「千年に一度の洪水に耐えられるよう基準強化…低地は『浸水に備え』迅速な復旧システムを」
21日、断水2日目の蔚山市蔚州郡彦陽邑のマンションの住民たちが、水を受け取るために給水車の前に並んでいる/聯合ニュース

 堤防やダム、浚渫(しゅんせつ)によって豪雨と洪水の被害を完璧に防ぐというのは、「気候危機時代」には合わない考え方だ。このように指摘する声があがっている。気候危機時代にはこのような災害をある程度受け入れつつ、被害からの回復に注目して「回復弾力性」を整備することが望ましいという意見だ。

 18日にソウル汝矣島(ヨイド)の国会議員会館で行われた「乙丑年大洪水100年、今私たちは安全なのか?」と題する討論会で、発表者として登壇したキム・スンさん(元世界気象機関(WMO)アジア地区協議会水文諮問官)は、「100年、200年に一度の洪水が今や数年ごとに起きており、設計基準を超える災害は避けられない。これまでの堤防とダムを中心とした防災システムは限界に達している」と指摘したうえで、「これからは『完璧な防災』から『迅速な回復』へと目標を修正すべきだ」と述べた。16~20日の集中豪雨では全国12地域で200年に一度の雨が降ったが、「200年に一度」は現在、河川施設の規模を決める際の最高基準だ。

 キムさんは、韓国社会には他国と異なる二つの危険があると指摘した。一つは地下空間の乱開発と乱用だ。代表的な例はソウルの過度な地下鉄建設、東西幹線道路の地下化、京釜(キョンブ)線鉄道の地下化、電気・通信施設の地下化、住宅・商業施設の地下化、駐車場の地下化などだ。地下施設は豪雨や洪水に極めてぜい弱だ。韓京国立大学のペク・キョンオ教授も「新しい建物を建てる際に地下空間を商業施設や住宅施設として乱用できないようにし、代わりに地下に貯水空間を確保していくべきだ」と述べた。

 もう一つは、国家インフラの過度なソウル集中だ。キムさんは「国の重要施設がソウルに集中しているため、ソウルで豪雨と洪水の災害が起きれば国そのものがまひする恐れがある。ソウルの機能を釜山(プサン)や大邱(テグ)、光州(クァンジュ)、大田(テジョン)などの他の大都市に分散させるべきだ」と述べた。

28日午後、ソウル永登浦区汝矣島の国会議員会館で開かれた「乙丑年大洪水100年」をテーマとする討論会で発表する元WMOアジア水文諮問官のキム・スンさん=韓国河川協会//ハンギョレ新聞社

 現在、河川の設計基準(河川の幅、堤防のような洪水防止施設の規模を決める基準)は、200年に一度おこるような洪水に耐えられるというのが最高のものだが、キムさんはこれをさらに強化するとともに、3段階に分けるべきだと提案した。第1段階の公共機関、データセンター、発電所・変電所などは1000年に一度、第2段階の住居密集地、産業団地、広域交通網は200年に一度の洪水に耐えられるように、第3段階の農耕地、公園、低地帯、常習浸水地はそれ未満にすべきだというのだ。第1~2段階には強固な備えをしておく一方、第3段階は予想される浸水を容認すべきだとの主張だ。キムさんは「洪水は完全には防げないので、被害を緩和しうる公園や貯留地を確保しなければならない。その代わり、低地帯は浸水に備えた建築や迅速な復旧システムを整えるべきだ」と述べた。

 キムさんは「気候危機時代には、長期的に災害の危険性を高める地下化、舗装、覆蓋などを減らすとともに、低地帯や常習浸水地域に対する無分別な開発を中止しなければならない」と強調した。

20日、京畿道加平郡馬日里のキャンプ場に来た市民が、集中豪雨で道が流されたため、ロープを伝って川を渡って脱出している/聯合ニュース

 環境団体も以前から「ルーム・フォー・ザ・リバー」(川のための空間)のような運動を繰り広げてきた。都市開発の過程で狭められた河川空間の外に遊水地や氾濫源を確保しよう、という主張だ。社会的協同組合漢江(ハンガン)のヨム・ヒョンチョル代表はハンギョレに、「豪雨の際に水を溜める空間を都市の中に作っておくべき。都市の低地帯は開発せず、公園や遊水地のような空間として空けておくべきだ」と語った。ヨム代表は「江南(カンナム)駅のような低地帯の常習浸水地をむやみに開発できないように制限することも必要であり、そのような場所に浸水が発生した際に、その開発者や所有者に直接責任を取らせることも公平性の観点から妥当だ」と述べた。

 環境運動連合のアン・スクヒ政策変化チーム長は、地域や施設の事情に合わせた豪雨・洪水対策を注文した。同氏は「洪水危険地図を積極的に公開して各地域の災害リスクを住民が自ら知るようにすべきであり、各地域、道路、建物に合わせた対策を立てるべき。特に建物については、所有者に災害の責任を問う態度も必要だ」と強調した。

キム・ギュウォン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/1209198.html韓国語原文入力:2025-07-21 18:54
訳D.K

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