尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の大統領室付属室長が、12・3非常戒厳の後に新たに戒厳宣布文を作成し、ハン・ドクス前首相とキム・ヨンヒョン前国防部長官の署名を受けた事実が明らかになった。尹前大統領側が非常戒厳宣布の違法性を認識し、これを事後に矯正しようと試みたということだ。内乱事件を捜査するチョ・ウンソク特別検察官(特検)チームは30日、カン・ウィグ前付属室長を参考人として呼び出し、戒厳宣布文を事後に作成した経緯について取り調べを行った。
■2つの戒厳令宣布文
30日のハンギョレの取材の結果、検察非常戒厳特別捜査本部はカン前室長が昨年12月5日にハン前首相と電話で話した事実を確認し、2月にカン前室長を呼び出して取り調べを行った。カン前室長はハン前首相との通話前、キム・ジュヒョン前民情首席から「大統領の国法上の行為は文書をもとにしなければならないが、非常戒厳の関連文書はあるか」と聞かれたという。
憲法第82条では「大統領の国法上の行為は文書に作成し、首相と関係国務委員が副署(署名)しなければならない」と定めているが、尹前大統領は非常戒厳宣布と国会通知の内容を文書として作成していなかった。
憲法条項を確認したカン前室長は、首相と関連国務委員(国防部長官)の署名入りの非常戒厳宣布文書を事後に作成するため、ハン前首相に電話した。カン前室長自ら作成したという文書には「非常戒厳宣布」という題のもと「2024年12月3日22:00付で非常戒厳を宣布する」と書かれており、首相と国防部長官の署名欄が設けられている。
一方、12・3非常戒厳宣布当日に国務委員らに配布された「非常戒厳宣布文」には、首相と国防部長官の署名欄がなかった。首相と国防部長官の署名欄を設けた非常戒厳宣布文を新たに作成し、事後に署名を受けようとしたのだ。
■ハン前首相の「抜け穴」作りか
ハン前首相はカン前室長が作成した新しい文書に署名したが、数日後「事後文書を作ったということが知られたらまた別の論争を生む恐れがあるため、なかったことにしよう」と要請した。カン前室長がこのような内容を報告すると、尹前大統領は「事後にするのに何の問題があるのか」と言いながらも、ハン前首相の意見に従うよう指示し、結局文書は廃棄されたという。
特検チームは、非常戒厳計画に失敗した尹前大統領側が戒厳宣布の違法性を認識し、法律的な責任追及から逃れるために、事後になって後始末を試みたものと疑っている。尹前大統領も弾劾裁判の過程で「保安を要する国法上の行為に対し、事前に(決裁を)要するならば文書起案者である実務者にも内容が知られるため、このような場合には事後に電子決裁することも可能だ」、「必ず事前に(副署を)しなければならないわけではないと思う」とし、違法な非常戒厳宣布ではないと主張した。
これに対して検察出身のある弁護士は「戒厳そのものが正当だったとすれば、事後の副署は些細な手続き上の欠陥とされるかもしれないが、今回の事案は不当な目的の非常戒厳が失敗した後、手続き的な欠陥を埋めるためのものと判断される可能性が高い」と指摘した。
これに先立ち、特検チームは先月28日、尹前大統領に対し国務委員らに違法な戒厳準備と後続措置を強要した職権乱用容疑について集中的に取り調べた。特検チームは尹前大統領を再度出頭させ、戒厳に関する国務会議の過程についてさらに取り調べを行う計画だ。