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文在寅前大統領インタビュー(4)「尹錫悦政権、中ロに背を向けたのは大きな過ち」

登録:2025-02-10 14:05 修正:2025-02-10 18:27
【単独インタビュー|韓日米軍事協力と北朝鮮】 
 
盧泰愚政権以来の韓国外交の伝統的な方向性が崩れた 
中ロとの関係悪化で国際的な「北朝鮮核抑止体制」が瓦解 
北朝鮮の「敵対的二国論」、金日成主席の遺訓も破って遺憾 
南北関係が悪化しても平和維持のための安全弁が必要
文在寅前大統領が7日、ハンギョレのインタビューで、パク・チャンス大記者の質問に何かを考えながら答える準備をしている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

―尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足から2年半の外交政策をどう評価しますか。特に韓米日軍事協力の強化が主軸でしたが、これに対する大統領の考えを聞かせてください。

 「尹錫悦政権が後退させた韓国外交は、他の国内政治のいかなる後退よりも(その影響が)はるかに長く続くかもしれません。まず朝鮮半島は世界で類を見ない、地政学的に米国、中国、ロシア、日本の4大強国に囲まれています。そのため、4大国いずれとも良い関係を維持してこそ、韓国の安全保障を守っていくことができます。4大国のうちどれか一方に味方し、どれか一方を敵に回した瞬間、韓国の安全保障は危うくなるのです。

 韓米日3カ国の軍事協力を強化するというのは、今や北朝鮮の核とミサイルの脅威がどんどん高まっているため、その対応として必要だというなら、一応理解できます。ところが、韓米日軍事協力を強化するにしても、他方では中国や北朝鮮との友好関係を維持していかなければならないのに、韓米日軍事協力を強化しながら、中国、ロシアに背を向け、逆に北朝鮮と中国、ロシアの三角協力体制を作ってしまったのです。そうやって互いに対立する関係になりました。韓米日の三角軍事協力が必要な理由は北朝鮮の核とミサイルを抑止するためなのに、それで抑止ができたでしょうか。むしろ、尹錫悦政権時代に北朝鮮の核とミサイルの能力はさらなる発展を遂げました。

 前政権では中国とロシアが韓国政府の朝鮮半島非核化政策を積極的に支持し、北朝鮮の核とミサイル挑発を抑止する役割を果たしていましたが、今や中ロと北朝鮮の三角協力が強化され、北朝鮮にとってはむしろ外交における風穴を開ける結果となりました。特に、ICBM発射のような挑発は前例のないものでしたが、以前なら国連安保理の制裁があってしかるべきでした。しかし、国連安保理の制裁は実際に追加されたでしょうか? 制裁に向けて一歩も踏み出せませんでした。なぜなら、ロシアと中国が拒否権を行使するからです。これまでは北朝鮮への追加制裁に対し、ロシアや中国が常に同意しており、制裁に加わっていました。このような国際抑止体制が完全に瓦解してしまいました。これは尹錫悦政権が自ら招いたことです。

 このような政治安全保障の側面だけでなく、経済的な面でも、米国と日本は中国と政治的に対立しているように見えても、政治面ではそうかもしれませんが、経済面ではむしろ過去よりはるかに交易が増え、非常に活発に協力しています。そうやって政治と経済を明確に区別しています。しかし、韓国は中国と経済的な面でも距離を置いて、経済的な面でもはるかに損をしました。ロシアとの関係でも同じことが言えます。私たちが伝統的に展開してきたバランス外交、このバランス外交というのは前政権で掲げたものではありません。盧泰愚(ノ・テウ)政権の北方外交以来、歴代のすべての政権、さらには保守政権でさえも、米国との同盟関係を重視しながらも、中ロとの関係を非常に重要に扱い、良好な関係を維持しようと多くの努力を傾けてきました。それが前政権にも受け継がれてきましたが、尹錫悦政権がバランス外交という韓国外交の伝統的な方向性そのものを崩してしまいました。

 これをかならず復元しなければなりません。米国との同盟を重視しながらも、中国との関係を修復する努力を傾けるべきですし、ロシアとの関係においても、ウクライナに対する軍事的支援協力などはもはやできなくなくなりました。ドナルド・トランプ大統領がウクライナ戦争の早期終息を公約したではありませんか。これからはウクライナ戦争の早期終息を進めるトランプ大統領の努力を支持し、歩調を合わせていく必要があります。ですから、おそらくウクライナ戦争が終息したら、その次に米国とロシアの関係、ロシアとヨーロッパとの関係も改善されるきっかけになると思いますが、韓国もそれを機にロシアとの関係を修復できるように準備し、努力していかなければなりません」

―南北関係は常に対立と緊張の関係でしたが、1991年の南北基本合意書の採択以降は南北ともに「統一を目指す特殊関係」という共通認識を持っていたと思います。ところが昨年、北朝鮮が「敵対的な二つの国家論」を打ち出したことで、南北関係に根本的な変化が訪れるのではないかとする見方もあります。北朝鮮の態度の変化についてどうお考えですか。

 「本当に残念なことです。韓国と北朝鮮が国連に同時加盟した当時、北朝鮮は非常に消極的でした。いわば、分断を固着化する恐れがあるという懸念を示したので、それを払拭するために南北間で『我々はたとえ国際法的には二つの国であっても、内部的には統一を目指すという特殊な関係にある』と誓い、それを国際社会に明言しました。だから、例えば南北間の商品交易で関税を課さないとか、開城(ケソン)工業団地で生産された製品に対してFTAを適用することなどに、国際社会の了承が得られたのです。このように韓国と北朝鮮が統一を目指す特殊関係というのは、北側では金日成(キム・イルソン)主席の時から受け継がれているほぼ遺訓のようなものです。

 ところが、金正恩(キム・ジョンウン)委員長が今になってその遺訓も破り、統一を至上課題として考えていた基調もすべて捨て、これからは韓国は相手にせず背を向けると宣言したのです。私たちにとっては本当に残念なことです。北朝鮮が再び同じ民族の精神を強調しながら平和と統一を目指す、そういう基調に戻ることを願っています。

 でも一方で考えてみると、統一を目指す特殊関係というのは南北双方が互いに平和統一を目指して努力していく時だけ成立するものです。尹錫悦政権のように互いに敵視して対決する、そのようなスタンスを取りながら統一を目指す特殊関係だと主張するのは、それこそ偽善であり、空言なのです。尹錫悦政権の非常に強硬な対北朝鮮敵対政策のためにそのようなことが起きた、それもやはり尹錫悦政権が自ら招いたことだ、そう言えると思います。

 韓国と北朝鮮は国際法においては厳然たる二つの国に違いありません。北朝鮮がそのように主張する以上、韓国が二つの国であるという事実を否定することはできません。国連にもそれぞれ加盟している主権国家ですから。しかし、同じ民族からなる国で、互いに隣り合っている国ではありませんか。敵対関係の中で背を向けてしまうと、韓国にとっても、北朝鮮にとってもそれは悲劇です。二つの国であっても、互いに平和で仲良く暮らす、そんな良い隣国になるべきです。そのためには、少なくとも今の板門店(パンムンジョム)の連絡チャンネルとか、軍事ホットラインのような最小限の南北間の窓口を早く復元しなければなりません。さらに、9・19軍事合意も早急に復元して、たとえ南北関係が少々悪化しても、少なくとも平和は維持できる最後の安全弁のようなものは確保しておく必要があると思います」

7日午後、慶尚南道梁山市平山村の平山本屋で働いている文在寅前大統領の姿=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

―今後、韓国が北朝鮮に対して南北和解政策を展開すれば、今のような北朝鮮の敵対的な対南政策が変わる可能性があると予想されますか。

 「当然そうだと思います。なぜなら、北朝鮮も国内の経済成長を最優先課題にしなければならないため、特に金正恩委員長はそれを最優先課題にしてきたのに、国際社会に背を向けて自分たちだけで自力競争の形で経済を成長させるというのは限界があるわけです。北朝鮮も国際社会における普通の国として国際社会と開放的な関係を持ち、また米国との関係や日本との関係を正常化していくというのは、経済成長のためにも欠かせないことです。金正恩委員長流に表現すると、北朝鮮人民の生活の向上のためにも必要なことです。北朝鮮が前政権のときに非核化への対応に乗り出した理由もそのためです。

 非核化する代わりに、国際社会の制裁の解除とともに経済成長に対する支援を受けられるなら核も放棄できる、そうして非核化対話に乗り出したわけですから、北朝鮮としては環境が整えば、またそういう保証さえあれば、いつでも韓国と再び対話する関係に戻ってくると思います。

 先ほど韓米日軍事協力の話をしましたが、実に虚しい結果であるのが、韓米同盟を最高に重視して他のすべてを犠牲にする態度をとったのに、トランプ大統領が米国の国益のために様々な圧力をかける政策を展開している今、韓国には例外を認めていますか? 全くそうではありません。それはそれで、また韓国は韓国として、また厳しい現実に直面しなければなりません。日本と関係が良くなったということをを大々的に掲げていますが、実際に日本から得たものは何でしょうか。実際、関係に何か変化がありましたか。本当に虚しい外交と言わざるを得ません。北朝鮮との関係も北朝鮮を打倒すべき対象であるかのように主張し、強硬な主張を並べて、向こうが挑発してきたら、それより百倍千倍で報復する、そうすれば、気持ちの面では国民もすっきりするかもしれませんが、それが国の安全保障を損ねる道であるのは言うまでもありません。それは国際的に韓国外交の地位を落とすことでもあります。

 覚えている方もいらっしゃると思いますが、前政権の時、トランプ大統領がG7体制の拡大を目指し、最初の拡大の対象に掲げた国が韓国でした。私たちにそれを打診してきました。他の加盟国が同意しなかったため、実現しませんでしたが、なぜ韓国が最初の対象国になったのかというと、日本はアジアで最も米国と近い国でもあり、大国ではありますが、アジア太平洋地域諸国の利益を十分に代弁する位置にいないと考えられていたからです。アジア太平洋地域でまた別の国を探しており、それが韓国だったのです。ところが、今のように私たちが自ら米国と日本の下位パートナーになってしまえば、国際社会で韓国外交の独自性を認め、尊重してもてなす理由は何もなくなるのではないでしょうか。

―大統領は在任中に3回にわたって北朝鮮の金正恩委員長と首脳会談を行い、史上初の朝米首脳会談への道も開きました。ところが、ハノイでの2回目の朝米首脳会談の失敗後は、朝米間、南北間の関係も非常に悪化し、今ではその時の成果はほとんど痕跡すら見当たらなくなりました。在任中の対北朝鮮政策を振り返るとしたら、どんな点が不十分で不足だった、残念だったと思いますか。

 「結果的に残念です。もっと進めることができていればと思います。ですが、先ほどもちらっと話しましたが、2017年の就任当時に高かった戦争危機を考えると、このように南北対話、そして朝米対話を通じて戦争危機を解消し、北朝鮮を平昌(ピョンチャン)冬季五輪に参加させ、また南北間で3回首脳会談をし、朝米間でも2回も史上初めての首脳会談を行い、そして5年間を通して朝鮮半島の平和を維持していったことは非常に大きな成果だと思います。

 特に今私たちが直面している朝鮮半島の安全保障の不安に比べると。当時の平和がどれほど大切だったかがよく分かると思います。今の状況では、当時のことがすべて水の泡のように感じられるかもしれませんが、しかしそうではないのが、先ほどのトランプ大統領と金正恩委員長の間の首脳会談をもし行うことになれば、それは先に2回の首脳会談があったからこそ可能なことです。その時立ち止まった線から一歩進むことができるのです。それはすでに大きな一つのマイルストーンとして残っていると思います。

 ただ、残念なのは、あまりにも期間が短かったことです。70年間戦争まで繰り広げた敵対関係を平和体制に切り替えるのは1〜2年、2〜3年でできることではありません。首脳同士で1、2回会ったからといって、それが実現するわけではありません。実際、南北間、朝米間の首脳会談があったのは2018年、2019年の2年でした。その後はすぐに米国が大統領選挙の局面に入り、対話を持続することが難しくなり、またコロナ禍が重なり、北朝鮮が非常に徹底した封鎖体制ですべての国境を封鎖する体制になったため、北朝鮮とのいかなる接触も難しい状況になりました。

 そのようにしばらく息を整える過程があっても、対話を再び続けなければならなかったのに、米国も政権が変わり、韓国も政権が変わり、その変わった政権がこれまでの北朝鮮政策を完全に覆すような政策を掲げてしまいました。これが一番残念なことです。南北関係、対話の持続のためにも、民主党が政権を維持しなければならなかったのに、それができなかったのが最も残念です。未練が残るのは、その中でも何とか開城工業団地や金剛山(クムガンサン)観光だけはよみがえらせることができていればと思っています。

 当時としてはハノイ会談の見通しは明るいと考えていたため、それが成功すれば制裁問題が部分的にでも解決され、これで開城工業団地や減価償却問題は自動的に解決できるため、その流れに任せてしまい、開城工業団地や金剛山観光については特に力を入れていませんでした。しかし結果からすると、国連安保理制裁に対する例外の承認を強く主張し、何とかしてそれを引き出して実現していれば、南北関係が完全に破綻するのを防ぐ最後の砦の役割を果たせたのではないかという未練は残ります」

7日、慶尚南道梁山市平山村の文在寅前大統領が運営する平山書店で、市民たちが本を買って記念写真を撮るために並んでいる=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

―それと関連し、大統領在任期間の2020年に北朝鮮が開城の南北共同連絡事務所を爆破しました。韓国国民にとってはショックでしたが、その時はどうでしたか。

 「あの時は言葉では言い表せないほど、衝撃を受けました。裏切られたと思いました。北朝鮮も板門店会談後に世界に、いわば金正恩委員長が世界の舞台にデビューしたと言われるほど、正常国家の姿を見せるために努力してきたわけですが、その一度の爆破で再び三流国家、ならず者国家のような姿に戻ったと思います。北朝鮮にとっても深刻な自傷行為だったわけです。今後、南北が再び対話を続けるなら、それはきちんと指摘して、北朝鮮から謝罪を受けるべき問題だと思います」

―最後の質問です。フェイスブックにて、大統領府で演説秘書官として大統領を補佐していた詩人のシン・ドンホ氏の著書『大統領の読書』を勧める投稿をしましたね。「政治をする人たちは本をたくさん読まなければならない」とおっしゃいましたが、在任中にかなり多忙だったと思いますが、本はどれくらい読みましたか。

 「もともと本好きで、大統領在任中もコツコツと読んで、本を勧めたりもしました。ただし、読書の方向性が変わりはしました。それまでは自分の好きな歴史分野とか、文学、そういったものをたくさん読んできましたが、大統領になってからは国政運営に何か役に立つような、いわば国家が進むべき未来を洞察できる体系とか、また当時新型コロナウイルスが広がっており、気候危機が深刻だったため、それに関連する本を主にたくさん読みました。大統領だけでなく、政治をする人々は本をたくさん読まなければなりません。本をたくさん読んだからといって、必ずしも良い政治をして良い大統領になるわけではないでしょう。ですが、本を読まないと洞察力や分別力を養うことができません。世の中があまりにも早く変わるので、学生時代に読んだ読書がすべてなら、その後変化する世の中を理解し、追っていくのは難しいでしょう」

パク・チャンス大記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1181557.html韓国語原文入力:2025-02-10 10:36
訳H.J

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