韓国の与党「国民の力」のハン・ドンフン代表は8日、ハン・ドクス首相との共同対国民談話を発表し、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領を「職務から排除」し、外交や国防など国政全般を首相と協議して行う方針を示した。国会の弾劾による職務停止の代わりに「秩序ある退陣」を名目に掲げ、大統領の進退に関する決定を先送りしたうえで、国政の主導権を握り、政治的活路を見出す構えだ。法曹界と市民社会は一斉に「超憲法的発想」だと批判し、野党は「内乱幇助犯の2次クーデター宣言」だと反発した。
ハン・ドンフン代表は同日午前10時、ハン・ドクス首相を与党本部に呼んで発表した共同談話で、「大統領の退陣前まで首相が党と緊密に協議し、国民の暮らしの問題と国政を滞りなく処理していく」とし、「退陣前でも大統領は外交を含む国政に関与しない。それについては国民の皆様と国際社会に懸念を抱かせないよう進める」と述べた。さらに「ハン首相と週1回以上の定例会合、常時的な意思疎通を通じて経済や外交、国防など至急な国政懸案を議論し、対策を設けて一寸の国政空白も生まれないようにする」と付け加えた。前日、ハン代表は大統領弾劾訴追案の表決が同党議員のボイコットで不成立となった直後に「大統領が退陣するまで、大統領は事実上職務から排除されるだろう」と語った。
野党は直ちに「第2の親衛クーデター」であり「2次内乱」だと激しく反発した。最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表はこの日午後、緊急記者会見を開き「(ハン・ドンフン代表とハン・ドクス首相の談話は)尹錫悦が裏で糸を引いている中、(自分たちが)国政運営を引き受けるという意味であり、2次内乱行為だ。12月14日、国民の名のもとで尹錫悦を必ず弾劾する」と述べた。祖国革新党のチョ・グク代表も記者会見を開き、「(非常戒厳に続く)第2の親衛クーデターだ。任期短縮の議論は尹錫悦を逮捕した後でも遅くはない」とし、「先に拘束捜査」することを求めた。ウ・ウォンシク国会議長は午後3時、緊急記者会見を開き、「大統領権力の付与と移譲は国民の意思によるものであり、その手続きは憲法と国民主権の原則に従わなければならない」とし、「大統領の職務を直ちに中断させるための与野党会談」を提案した。
ハン・ドンフン代表とハン・ドクス首相の共同談話が批判を受けたのは、大統領の権限を何の法的根拠もなく譲り受けて行使するという「超法規的」発想が含まれているためだ。国民の直接投票で選出された大統領と違い、ハン代表は国民の力の党員が選出した特定の政党の代表にすぎず、大統領の権限を代行する法的資格がないというのが大方の見解だ。ハン首相もやはり「内乱共謀・幇助」容疑で捜査を受けなければならない立場にある。
与党内部の反発も激しかった。親尹(錫悦)派の主要関係者は、「これは権力を奪おうとするものだ。誰がハン代表に(大統領を代行する)権力を与えたのか」と非難した。また別の親尹派議員も「これまで(弾劾阻止線を確保するために)我慢してきたが、黙ってはいられなくなった。一人で大統領ごっこをしている」と声を荒げた。親尹派議員たちは近く開かれる議員総会で、組織的な反対意見を出すものとみられる。
民主党は弾劾と特検に対する圧迫を続けた。国会予算決算特別委員会の民主党所属議員らはこの日午後、声明を発表し「大統領弾劾案が可決しない限り、政府与党と予算案を協議しない」と述べた。同日、ハン首相とチェ・サンモク経済副首相が早急な予算案処理を求めたことに対する回答だ。民主党はまた、12・3内乱特検法案とキム・ゴンヒ特検法案を9日に発議し、12日の本会議で上程すると発表した。
12・3内乱を捜査する検察特別捜査本部は同日、尹大統領を内乱容疑被疑者として立件した。しかし、尹大統領は同日、イ・サンミン行政安全部長官の免職案を受理した。尹大統領は「職務から排除される」と言及したハン代表の言葉とは裏腹に、大統領として人事権を引き続き行使している。