尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾訴追案が、与党「国民の力」の集団ボイコットで廃棄された。国民の力は12・3非常戒厳事態という明白な違憲・違法を犯した「内乱首謀者」である尹大統領を延命させる道を選び、歴史と国民を裏切った。真冬の寒さのなか燃え上がった市民たちのろうそくは、松明となって尹大統領と与党に向かうだろう。
国会は7日夕方、本会議を開き、野党6党が発議した尹大統領弾劾案を上程したが、与党議員たちはこの直前に行われた(大統領夫人)キム・ゴンヒ特検法案の採決を終えた後、退場した。与党議員108人のうち、アン・チョルス議員、キム・イェジ議員、キム・サンウク議員の3人だけが投票に参加した。弾劾案通過のためには国会在籍議員の3分の2である200票が必要だが、全野党議員192人と与党議員3人の計195人だけが投票した。結局、採決の参加人数が議決定足数(200人)に及ばず、弾劾案は開票もできないまま投票不成立で自動廃棄された。これに先立ち、尹大統領が拒否権を行使したキム・ゴンヒ特検法も再議決に200票が必要だったが、賛成198票、反対102票で2票差で否決された。特検法反対の党方針を決めた与党から6人が党方針を離脱して賛成票を投じたものと推定されるが、可決には至らなかった。
尹大統領弾劾案を否決させた与党は、巨大な市民の抵抗を覚悟しなければならない。尹大統領を弾劾すべき理由はあまりにも明確だ。「戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態」という憲法第77条第1項の要件に合わない非常戒厳を宣布した点だけでも明確な憲法違反だ。憲法上、非常戒厳解除を要求できる機関である国会に武装軍人を投入して統制しようとしたことも、違憲であり刑法上の内乱に当たる。尹大統領は戒厳を宣布した日の夜、国家情報院のホン・ジャンウォン第1次長に電話し、「この機会にみんな捕まえて整理しろ」と指示した。尹大統領は特殊戦司令官などに直接電話して状況を確認したという証言も出てきている。中央選挙管理委にも兵力を投入した。極右ユーチューバーが挙げた不正選挙陰謀論に傾倒していたと言われている。正常な判断力を失った尹大統領が職を維持することは、国民の最大の不安要因であり、国家的にも最大の危険要因だ。尹大統領は直ちに職を辞め、内乱容疑の捜査を受けなければならない対象だ。
ところが、国民の力のハン・ドンフン代表は一体何度意思を翻したことか。最初は12・3非常戒厳が「違憲・違法的」だとし「国民と共に止める」と言ったかと思えば、弾劾に対してはまた反対党論に賛成し、自分が逮捕の対象だったという事実が明らかになると再び「弾劾賛成」の意向を示した。ところが、尹大統領が7日の国民向け談話で「党に一任する」と言うと、再び「尹錫悦守護」に転じた。最初から最後までひたすら自分の政治的利害の得失のみを考える姿を見せた。国民を欺瞞したのだ。これでどうやって国民の指導者になるというのか。国会を封鎖し市民を阻止した戒厳軍とハン代表は、何の違いがあるのか。それでも命令に従った若い軍人たちは、何度も「申し訳ない」と言った。ハン代表は国民の前で恥ずかしくもないのか。
与党は尹大統領のこの日の談話を弾劾反対の理由としたが、尹大統領の談話は、弾劾危機に追い込まれ窮地で発した与党向けの「票取り締まり」メッセージに過ぎない。尹大統領は「任期問題を含め、今後の政局の安定策を党に一任する」とし、今後の国政運営を与党と政府が行うと述べた。しかし、権威と信頼を失い統治力を完全に失った尹大統領は、もはや大統領としての職を遂行できない。尹大統領は談話で、国政運営において「野党」や「国会」に協力を求める言及もなく、ひたすら「弾劾」を防ぐことにすがり「わが党」だけに訴えた。「国民に向けた談話」ではなく「与党『国民の力』に向けた談話」だった。
尹大統領の談話にハン代表は「早期退陣は避けられない」とし、自分とハン・ドクス首相が民生を守るという意志を示した。いわゆる「秩序ある退陣」を自分が主導するということだ。大きな勘違いだ。国民たちが望むのは尹大統領の即時退陣であって、「ハン・ドンフン全権体制」ではない。ハン代表は今回の状況を、尹大統領に抑え込まれていた与党内での地位を高める機会として、次期大統領選まで時間を稼ごうとしているのではないかと疑わしくなる。
国民の力は、弾劾は保守壊滅であり、国家混乱であり、早期大統領選でイ・ジェミョン民主党代表に政権を委譲することだしてと反対している。だが、非常戒厳の暴挙を起こした尹大統領を憲法・法律に沿って直ちに責任を問うことこそ、保守を蘇らせ混乱を終わらせる道だ。
立法機関としての存在理由を自ら否定した与党議員たちの行動も、明確に記憶されなければならない。大統領が武装軍人を動員して国会を封鎖し、政治家・議員を逮捕しようとしたにもかかわらず、彼らは当然の責任を問うことを放棄した。離脱票を源泉封鎖するため投票を集団ボイコットし、「投票不成立」を作ったのも無責任で稚拙だ。
この日、ソウルの国会前と世宗路(セジョンロ)などには、氷点下の寒さにもかかわらず数十万人が集まり、夜遅くまで弾劾案通過を要求した。5日に公開されたリアルメーターの世論調査では、弾劾賛成世論が73.6%だった。与党はこのような民意に背を向けた。民主主義と法治を壊し、国民たちの自尊心と韓国の威信を壊した尹大統領とともに、与党も共倒れの道に足を踏み入れた。野党は尹大統領の弾劾が成功するまで引き続き推進するという。市民のろうそくも燃え続けるだろう。12月7日、与党「国民の力」が犯した行動の後ろで歴史と国民の厳しい審判が待っている。