尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は15日、79周年光復節に際し、「今年を『自由平和繁栄の統一大韓民国』へと向かう新たな元年とする」と述べ、「自由統一」構想を発表した。
尹大統領はこの日、ソウルの世宗(セジョン)文化館で開催された光復節記念式典の祝辞で、「完全な光復は依然として未完の課題」だとし、「朝鮮半島全体に国民が主人である自由民主統一国家が作られるその日、初めて完全な光復が実現する」と述べた。尹大統領は昨年の光復節の祝辞と今年の三一節の記念演説で、1919年の3・1運動と上海臨時政府樹立、光復、1948年の大韓民国政府樹立を、「自由」へと向かう過程だと定義していたが、今回はそれを「統一」へと拡張したのだ。大統領室はこれを「8・15統一ドクトリン」と称した。
尹大統領は「自由統一」の実行に向けた3つの課題として、韓国国民が自由統一を推進しうる価値観と力量を確固として持つこと▽北朝鮮住民が自由統一を切に望むよう変化を作り出すこと▽国際社会との連帯を強調した。
最初に提示した「国民の価値観と力量」と関連して尹大統領は、「フェイクニュース、エセ知識人は反自由勢力、反統一勢力」だとしつつ、「自由の価値を守り抜くためにあらゆる努力を尽くす」と述べた。「エセ知識人たちはフェイクニュースを商品として包装して流通させ、既得権利益集団を形成している。扇動とねつ造で国民を分裂させ、その隙間で利益を得ることばかりに執着するのみ」だというのだ。
大統領は、「フェイクニュースにもとづいた虚偽扇動とエセ論理は、自由社会をかく乱する恐ろしい凶器」だとしたうえで、「デジタルサイバー産業の発展に伴ってそれを悪用する黒い扇動勢力に立ち向かい、自由の価値体系を守るためには、韓国国民が真実の力で武装して闘わなければならない」と述べた。これまでの尹大統領の発言や演説などから、これは野党と批判勢力を標的にしたものとみられる。
尹大統領は2番目の課題として、「自由の価値を北朝鮮へと拡張し、北朝鮮の実質的な変化を引き出すことに積極的に取り組まなければならない」とし、「北朝鮮住民を自由の価値に目覚めさせることが重要だ。北朝鮮住民が多様な経路で多様な外部情報に接することができるよう、『情報接近権』を拡大する」と述べた。
「自由統一が暮らしを改善する唯一の道であることにより多くの北朝鮮住民が気付き、統一大韓民国が自分たちを包容するという確信を持てば、彼らは自由統一の強力な味方になるだろう」とも述べた。北朝鮮へのビラ散布を引き続き認め、北朝鮮向け拡声器放送も積極的に行う方針を示したものとみられる。また、「北朝鮮の人権の惨状を韓国国民と国際社会にありのままに、正確に伝えなければならない」とし、「北朝鮮人権国際会議」を推進し、「北朝鮮自由人権ファンド」を設立することを表明した。
その一方で尹大統領は「対話と協力を通じて南北関係の実質的な進展が実現できるよう、北朝鮮当局の呼応を求める」とし、南北当局の実務レベルの「対話協議体」の設置を提案した。また「一昨年の光復節の『大胆な構想』ですでに明らかにしたように、非核化の第一歩を踏み出しただけでも政治的、経済的協力を開始するだろう」と付け加えた。しかし、北朝鮮がこれに応じる可能性は薄いとみられる。
尹大統領は3番目の課題として、「自由統一に対する国際社会の支持をけん引することに一層努力する」としつつ、「志を同じくする国々とともに『国際朝鮮半島フォーラム』を創設する」と述べた。また「同盟国および友好国との自由の連帯を強固にしつつ、我々の統一に対する共感を形成するために努力する」と付け加えた。
一方、この日の祝辞で尹大統領は、日帝強占期の問題や日本の過去に対する態度、日本の歴史的責任については一切言及しなかった。光復節記念演説では通常、日本の侵略とそれに立ち向かった抗日闘争の結果を指摘しつつ、未来指向的な韓日関係に向けて日本に過去に関する前向きな措置を求めるメッセージが主流をなしてきた。