韓国は国際労働機関(ILO)理事会の議長国の単独候補となり、15日の選出を経て「議長国」となる。イ・ジョンシク雇用労働部長官は「労働基本権の伸張に努めてきたことが国際的に認められたもの」だと自画自賛したが、政府は「結社の自由の保障」に関するILOの意見や勧告の意味をわい小化してきたため、「恩着せがましい」と批判されている。
イ長官は11日(現地時間)、ILO総会が行われたスイスのジュネーブで記者団とのインタビューに応じ、「韓国が21年ぶりに理事会議長国の単独候補として通知された」とし、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の発足後、労働基本権を伸張させるための政策を推進してきたこと、弱者保護、社会的対話、労働改革の推進が国際的に認められたもの」だと述べた。
イ長官はまた、いわゆる「労使法治主義の労働改革」の一環として推進した「労組の会計帳簿付け義務の点検」を「(政府は)法に規定されていることをこれまで(労働組合に対して)目をつぶってきたが、それを点検したもの」だとし、「それを労働者弾圧だというのは、現実を歪曲しているだけでなく、歴史の発展を遅らせるもの」だと述べた。2大労総は当時、政府による労組の会計帳簿の点検は労組活動に対する過度な介入だと反発したが、それについて語ったもの。
しかしイ長官の評価とは異なり、ILOの条約勧告適用専門家委員会(専門委)は韓国政府に対し、3月にこの事案について「直接要請」をおこなっている。イ長官が政府の労組会計帳簿点検の根拠とした労働組合および労働関係調整法の条項に対し、専門委が「改善」を要請したのだ。専門委は「法律が行政官庁に対して、いつでも組織の帳簿や文書を検討し、情報を要求する権限を与えているというのは、結社の自由条約に合致しない」とし、「法律の条項が労組の機能を妨害するようなやり方で適用されることのないよう、必要なあらゆる措置を取ること」を韓国政府に要請している。同様に、政府が「労使法治主義」を掲げて強硬対応した2022年の貨物連帯のストライキについても、ILO結社の自由委員会が、「貨物労働者ら自営労働者を含むすべての労働者が結社の自由および団体交渉の原則を完全に享有できるよう保障せよ」と3月に勧告している。
韓国政府の批准した「結社の自由条約」に合致しない法律条項と、法の執行に対する批判的意見をILOが示したにもかかわらず、イ長官は10日のILO総会での演説で「ILOの精神は結社の自由の原則を保障しつつも、各国の国内法を尊重している」と述べている。政府は結社の自由委員会の勧告についても「法的拘束力はない」として意味をわい小化したが、今度は「国内法の尊重」を強調したのだ。
イ長官の発言について、民主労総のリュ・ミギョン国際局長は13日のハンギョレの取材に対し「結社の自由条約の批准後、政府は国際労働基準の順守を何ら進めていない」とし、「(議長国単独候補への推薦は)これまでの努力が認められたのではなく、韓国の地位にふさわしい役割を果たせと鞭打たれていると考えられる」と述べた。韓国労総も論評で、「理事会議長国になったことを卑下することはないが、過度に意味を膨らませるのも見苦しい」とし、「議長国という地位と名誉に恥じない水準なのかを振り返るとともに、労組法第2条、3条の改正など、労働基本権をきちんと確立してほしい」と述べた。