2019年4月に憲法裁判所が堕胎罪に対して違憲判決を下してから丸5年がたとうとしているが、依然として妊娠中絶に関する医療情報が不足しているとの声が聞かれる。
「みんなの安全な妊娠中絶のための権利保障ネットワーク」(以下「ネット」)は、2021年以降に妊娠3週目~9週目での妊娠中絶の経験を持つ20~30代の6人の女性に対して、昨年12月の1カ月間に実施したインタビューの結果を分析し、1日に発表した。
回答者はインタビューで、妊娠中絶についての相談ができる病院を探すことすら容易ではなかったと答えた。回答者のAさんは「堕胎罪が廃止されたので、すべての産婦人科で妊娠中絶手術ができると思っていたが、できない病院がけっこうあって慌てた」と述べた。Bさんは「経口中絶薬が効かなかったので結局、掻爬(そうは。妊娠中絶手術の一つ)をしなければならなかった。すでに健康が悪化していたため緊急状況に対処できる信頼できる病院を探したが、病院を探すのにたいへん苦労した」と話した。
Cさんは、自宅の近くに妊娠中絶のできる病院がなく、妊娠中絶をする過程や回復過程で、遠くにある病院のそばで宿泊したと述べた。また、病院が妊娠中絶に関する情報をきちんと提供してくれなかったり、誤った情報を教えられたりしたという回答もあった。
インタビューでは、妊娠中絶手術や処方費用の負担が千差万別だという問題も提起された。回答を見ると、病院で妊娠中絶薬を処方された時には10万ウォンだったのに、オンラインで入手したら50万~80万ウォンほどが必要だったという。妊娠中絶手術の場合、妊娠何週目かに関係なく30万~100万ウォンと、病院によって大きな差があった。
ネットはインタビューを根拠として、「保健福祉部は安全な妊娠中絶の条件が整備されるよう、全国の産婦人科病院・医院の現状を把握し、各医療機関の妊娠中絶可能時期、妊娠中絶の方法、費用、連絡先などについての公式情報を提供するとともに、円滑な連携支援が行われるようにすべきだ」と述べた。現在、ニュージーランド、スウェーデン、カナダ、オーストラリアなどには妊娠中絶に関する公式情報システムがあり、中絶手術やカウンセリングを行っている医療機関に関する情報を提供している。
また、病院によって妊娠中絶に関する費用が千差万別であることについては「医療機関と韓国の医療システムに対する信頼を低下させ、(女性に)医療機関を転々とさせている」とし、「恣意的に策定されているため千差万別になっている保険適用外の費用は、医療費全体をふくらませ患者の負担を重くするだけでなく、正確な統計や疫学調査も難しいため、具体的な健康指標を確認して改善していくべき保健当局の責任が放棄される結果をもたらすだけ」だと指摘した。
ネットは、アンケート調査を分析して妊娠中絶の現状と主な問題点をまとめ、先月16日に国家人権委員会に提出した。